テラーノベル
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伊織と気恵(キエ)がお昼ご飯を食べているとき、お昼にようやく起きた累愛(るあ)。前日の話。
〜
仕事を終え、家に帰り、速攻で推しているアイドル「愛嬌ファーストクラス」のライブDVDを
仄かな明かりだけを灯して、あとは暗くした部屋で見ながら夜ご飯食べる累愛。
「あぁ〜…。愛ファス(愛嬌ファーストクラスの略称)いいわぁ〜…。この頑張ってる姿。
たぶんメジャーに昇格して、ドームライブとかした日には
愛ライダー(愛嬌ファーストクラスのファンの愛称)は天に召されるな、うん」
と呟きながらご飯を食べ終える累愛。すると仄暗い部屋にスマホの画面がパッっと光る。
スマホを手に取り、確認すると明観からのLIMEの通知だった。
明観「今日何時まで起きてる?」
「はあ?」
と言いながら返信する。
累愛「いや、眠くなったら寝るけど」
またライブDVDを見ているとスマホの画面が光る。明観からのLIMEの通知。
明観「じゃあ、2時頃LIMEする」
「はあ?」
またそう言いながら返信した。
累愛「起きたてらな」
というメッセージを確認して、指を慣らし、首を回し
ブルーライトカットのメガネをかけ、コントローラーを握る明観。
「さあぁ〜て。ウォームアップだー」
と呟くと
「うーす。お疲れー」
とヘッドセットから声が聞こえてくる。
「お疲れ夕彩(ゆあ)」
「明観もおつー。さ、ランク回すぞー」
「おけー」
「キャリーおねしゃす」
「自分でもやりやー?ま、私もウォームアップとしてガチでやるけど」
「また夜遅くまでやんの?」
「そー。明日休みじゃし」
「そっかぁ!一週間っ、お疲れ様です」
「ありがとうございます」
「じゃ、私は11時頃に抜けるわ。明日もあるし」
「ん」
「その後は?どうすんの?いつもの知り合ったメンツとフルパで回すん?」
「そ。本アカで今回こそプレデター行くんだ」
「頑張ってくだせぇ。私はプラチナ行けるか否かってレベルだから」
「プラチナは行ける。私がいるから」
「おぉ〜。おねしゃす」
「さ。やりまさら」
と高校の同級生で、今も親友の夕彩とウォームアップがてらにサブアカウントでランクマッチをぶん回し
「んじゃ、おつー。ゆっくり休んでケロ」
「んー。さんくすー。またなー」
「んー。またー」
と夕彩が抜け、ポツッターのDMでいつものメンバーに召集をかける。
集まった精鋭部隊。まずは言葉に感情がまったく感じられないが、正確無比な報告と
正確無比なエイムで中距離を得意とする、アカウント名「Acegame-TGMB97」呼び名は「エース」
と爽やかな声で、爽やかに、冷酷無比にキルを量産する
サポート担当の、アカウント名「Gratia-yoohaanaan1218」呼び名は「ヨハン」
そこに戦況を把握しつつも、特攻するのが好きな明観が加わり、フルパーティーが完成する。
「お疲れ様です」
ヨハンの爽やかボイスがする。
「お疲れーヨハンちゃん」
「アミさん、お疲れ様です」
ちなみに明観の呼び名は「アミさん」。明観もエースもヨハンもゲーム用のSNSアカウントを持っており
エースは「A(エース)」、ヨハンは「Johannes(ヨハネ)」、明観は「最強の桂馬(AR3(アーミー))」
「エースくんもいるー?」
「いるっすよー」
「じゃ、薙(な)ぎ倒していきますか」
「しゃー。やりましょー!」
と言うヨハン。エースは静か。マッチするまでしばし話す。
「ヨハンくんは20歳(はたち)になったばっかの大学生なんだよね?」
「はい」
「じゃ、お酒も最近覚えた感じ?」
「いえ。お酒は。たぶん弱いですし」
「へえぇ〜。私もあんま強くないんだよね」
「そうなんですね。エースさんはお酒飲まれます?」
「あんま飲まない。オレも酒弱いし、単純に美味しくない」
そんな軽い話をしていたら試合が開始された。明観は両手を擦り合わせて
「さあぁ〜。宴の始まりよ」
とスイッチを入れた。
「うんうん。わかってる。努力してるのはわかってる。伝わってる。
オレたち愛ライダーには伝わってる。大丈夫」
と小学生の授業参観の父親みたいにライブ映像を見ていた累愛。
するとスマホが光る。明観からのLIMEだった。
累愛はライブ映像を夢中で見ていて気づかなかったが、すでに夜中2時を回っていた。
明観「起きてるかー」
「起きたてわ」
と呟きながら返信する。
累愛「気づいたら起きてた」
と送るとすぐ既読がつき
明観「今招待送ったから、ボイス繋いでパーティー入って」
と送られてきたのでパスタイム スポット4を起動する。
マイク付きのイヤホンを繋いで来ていた招待からパーティーに入る。
「おいーす」
明観の声がする。
「うい」
「やんぞー」
「トレ(Top of Legendsの略称)?」
「そ。招待送るわ」
「ん。…今日は?なんのゲームをガチでやってたん?」
「ん?トレだけど」
「トレやってまたトレやんの?」
「今までガチでやってたからさ?今日ダイヤ2に上がったわ、あぁ〜…疲れた…。
ま、今からは軽く、楽しく1、2試合だけ」
「なるほどな。で?その後は?」
「まー、いつも通り、ファンタジア フィナーレXIV(14)でボス狩りでも行く?
それかGOD LEADERで無双する?」
「まかせるわ。とりま“楽しんで”1、2試合やろうや」
「おけー」
と結局5時まで明観とゲームをした。
〜
「はあぁ〜は」
あくびをしながらベッドから起き上がり、スマホを手に洗面所へ向かう。
眠い目を擦りながら歯ブラシに歯磨き粉をつけて歯を磨く。そして左手でスマホをいじる。ポツッターを開いて
累愛の推しているアイドル「愛嬌ファーストクラス」のメンバーの投稿すべてに「いいね」を押していく。
それが毎朝の日課に一つ。仕事に行く日の朝も休みの日も同じ。そして深夜番組やお昼の番組、ネット番組など
「愛嬌ファーストクラス」のメンバーが少しでも出たものを録画しており、それを見ながらお昼ご飯を食べる。
ちなみに仕事がある日の朝も録画を見ながら朝ご飯を食べ
着替えている間はニュースに切り替え、ニュースで時間を確認しながら
「愛嬌ファーストクラス」の曲を聴きながらスーツに着替えている。
カップ麺にお湯を入れて、お箸を蓋止めの代わりに置いて、録画した番組を見ながら
スマホでその番組に出たメンバーの、その番組が放送された当時のポツッターを見る。
「…そういえば昨日景馬(けいま)と」
〜
それは明観とGOD LEADERをプレイしていたときのこと。
ロビーで強化しようか新しい武器を作ろうか悩んでいた累愛。
「あーそうだ」
と言う明観。しかしいつものようにゲームのことだろうと思って
新しい武器を作るための素材はなんのミッションで出るのかスマホで調べる累愛。
「汐田さー」
「伊織?」
「そー。明日デートだってよ。…あ、もう今日か」
と言われて思わずスマホをいじる手が止まる累愛。
「は?誰と?」
「気恵に決まってんじゃん。ああぁ〜。なるほど。頭の結合破壊で確率か…。
ま、頭の結合破壊は楽だし、あとは数こなすだけだな」
「え。ちょっと待て」
「ん?マヤガミ(GOD LEADERの敵モンスターの総称)違うのがいい?
ま、たしかに複数体のほうが効率はいいか」
「いやいや待て待て。尾内(おうち)と伊織がデート!?」
「そー」
「詳しく」
「kwsk(ケーダブリューエスケー)。詳しく?」
「んな、どーでもいいわ!どゆことなん?」
「さあ?詳しくって言われても私も詳しくは知らんのよ」
「どこ行くって?」
「さあ?旧礼拝堂とかどお?」
「GOD LEADERのマップの話すんな」
「だって知らんもん」
「なにするとかは?」
「あー。それは聞いた。ご飯食べるんだってさ」
「はー…。意味わからん。尾内が伊織を誘うのはわかるけど、誘われて伊織がオーケーする意味がわからん」
「あー、汐田から誘われたって言ってた」
スマホをいじっていた手が止まるどころか、スマホをポロッっと落とす累愛。
「伊織から?」
「そ。それはさすがの私もビックリしたわ」
「はあぁ〜…。わからん。次のミッション死んだらすまん」
「え。許さんよ」
〜
「って話してたな…」
と呟き、スマホを眺め
「いやっ」
っとスマホから目を逸らし
「でもっ」
っとまたスマホに視線を戻し、ローテーブルに両肘をつき
スマホを両手で持って、前腕で頭を抱えるようにして
「気になるぅ〜」
と呟いた。
お昼ご飯を食べ終え、店を出た伊織と気恵は雑貨を見に行った。
しかし恵位寿(えいす)という土地柄、ちょっとした小物もいい値段がした。今まで
「見てこれ、可愛い」
とかはしゃいでいた気恵が値札を見て青ざめる様子を見て
おもろ
と思う伊織。しかし表情は変わらない。洋服なんかも見に行った。
しかしやはりプチプライスなアパレルショップはなく、「Dressing the heart」「Bad thing thief」
「2 fash1onable」「X&O」「Life in frames」などのハイブランドばかり。
しがない不動産業の2人には、買えないというか、買おうと思わない値段の服ばかり。お店に入っては
「高級な匂い」
と呟く気恵に
まあわかる
と思う伊織。そして2人でざーっと眺めて店を出て
「ただのジャケットが7万円だった」
とか
「ただのTシャツが4万円だった」
とか言う気恵に
そう思うとオレが買ったコート、安かったのか
と思う伊織。ハイブランドのアパレルショップの中には「Period」という
フォーマルな、主にスーツなどを扱う店も含まれており、そこにも一応入ってみた。
店内はソファーが売ってるのか?とかリビングかな?と思うほど
ソファーとそのソファーの前のガラス製のローテーブルの主張が強く
売られているスーツの展示の仕方も、まるで現代アートの美術館のような感じ。
かといって、現代アートそのもののような、意味がわからない展示の仕方ではなく
さらにいやらしさも感じさせない、スマートさの中に
ユニークさがスパイスとして効いているような店内だった。
高級スーツを扱っているお店、さらに平日の昼間。店内にいる人は片手で数えられるほどだった。
「あ、これとか汐田にいいんじゃない?うち(職場)に着てくのに」
とスーツを指指す気恵。
「えぇ。今着てんのに似てね?」
「だから違和感なくていいんじゃん」
「…」
値札を見る伊織。
0(いち)、00(じゅう)、000(ひゃく)、0000(せん)…
とゼロを数えていって
「…いや。同じようなスーツなら赤山とかAKAGIとかで何着か買うわ」
と言う伊織。気恵も値札を見て
「…あ。そうね。ちょっと高すぎるか」
という話をしてお店を出た。そんな恵位寿の街を物珍しそうに見て歩いた2人。
気づけば夕陽とまではいかないが、空の太陽は沈む準備をしていた。スマホの時刻を確認した伊織。
「どーする?」
「ん?なにが?」
「もうそろ夕方だけど、夜もどっかで食べてく?それとも帰」
「る?」と伊織が言い切る前に
「食べてく!」
と言う気恵。
「じゃ、ま、いい店探すか」
「あ、場所変えよ?」
「ん?別にいいけど」
「居酒屋でゆっくりしよ」
「あー。いいね」
ということで2人は恵位寿から真新宿へと移動した。
昼過ぎ、いや、もはや夕方近くに起きた明観。起きてすぐスマホゲームを起動する。
ブルーライトカットのメガネをかけ、スマホゲームをしながらトイレ、歯磨き、洗顔を済ます。
冷蔵庫に飲み物を取りに行くときも、カップうどんにお湯を入れるときも、待つときもスマホゲームと一緒。
パスタイム スポット5を起動して、神殿堂(しんでんどう)のサティスフィーも起動する。
カップうどんができるまでの5分間、サティスフィーでゲーム内の日課をする。
するとどうしても7分くらい過ぎてしまい、慌ててカップうどんを食べる。ちょっと柔らかい。でも
「この柔らかさを狙ってたわけで」
と呟き、食べ進める。
「ご馳走様です」
と手を合わせて、片付けもせずに先程のサティスフィーの日記の続きをする。
サティスフィーのゲームの日課を終えて、もう完全に夕方になってから
ようやくカップうどんの容器をキッチンのシンクに置きに行く。
そして冷蔵庫からエナジードリンクの「Warning」を取り出した瞬間にプルタブを開け、歩きながら飲む。
「さて。パススポ5の時間だ」
と言いながらパスタイム スポット5のゲームをプレイする明観。
真新宿に移動し、大衆居酒屋に入った伊織と気恵。
そのお店はカウンター席やテーブル席はなく、すべて個室の居酒屋。
「とりあえずビールでいいよね?」
と言う気恵。
「ん」
ということでビールとちょっとしたつまみを数品頼んだ。
「今日はありがとう。お昼あんな高級なお店で奢ってもらって」
「いや?別に高級ってほどでもなかったでしょ」
「いや、高かったよ」
「恵位寿にしちゃ安いでしょ」
「ま、恵位寿にしてはね?」
「しかも…。ま、いっか。オレが払ったし。味ビミョーじゃなかった?」
と言う伊織に
いや、汐田が払ってくれたのにビミョーなんて言えんて。それに
と思いながら
「え。ふつーに美味しくなかった?」
と言う気恵。
「そこなんだよ」
と言っているとまずはビールが届いたのでとりあえず
「乾杯」
「乾杯」
乾杯をしてビール飲んだ。
「はあぁ〜…うっま。そう。ビールで思い出した。ビールはうまかったんよな」
「うん」
「そう。料理さ、尾内が言ったようにふつーに美味しかったのよ」
「うん。いいじゃん」
「いや、あの値段ならとびきり美味しくあってほしくね?」
「あ、あぁ〜…」
「たぶんここの料理のほうがうまいぞ」
「それはー…どうだろうね」
そう。恵位寿のレストランで料理を食べて微妙な反応だった伊織の訳はそれだったのだ。
「たまに行くー…なんだっけ?あのぉ〜」
「命頂幸(しょく)?」
「それ。その命頂幸のほうが美味かったと思うわ。…オレが単に貧乏舌なのか?」
と自分に問うように言う伊織に、なにも言わずにビールを飲む気恵。注文した料理が届いて食べる。
「うん。…この揚げ出し豆腐のほうが全然好き」
と言う伊織に、クスッっと笑いながら
「それ、汐田が単におろしポン酢が好きなだけじゃないの?」
と言う気恵。
「あぁ〜。それはあるな。おろしポン酢に刻み青ネギの揚げ出し豆腐とか激ウマでしょ。
恵位寿のパスタが2000円以上するなら、これ(揚げ出し豆腐)5000円してもいいだろマジで」
「高すぎるって」
と笑う気恵。
「でも、私もこういう居酒屋さんとかのほうが合ってるかも」
と言う気恵を揚げ出し豆腐を食べながら見る伊織。
「あっ!いや、今日のお昼もめちゃくちゃ美味しかったよ?新鮮だったし」
と焦って否定する気恵に
別に気にしないけどな
と思う伊織。
「でもなんか、高いとこって緊張しちゃってさ?こーゆー居酒屋さんだと、なんかゆっくりできるというか…」
と言いつつも
ま、今日は居酒屋さんでも緊張するけど…
とチラッっと伊織を見て思う気恵。
「わかる」
と死んだ表情で同意する伊織。
「オレもこーゆー居酒屋のほうが全然好き。同じだな」
と言う伊織に
「はっ、はいっ!」
と言う気恵。
「なぜに敬語」
と呟き、その後も他愛ない話で盛り上がった?お会計をしてお店を出ることに。
「あ、ここは私が出すよ」
と言う気恵に
「いや、今日はこないだのお返しって言ったじゃん」
と返す伊織。
「お昼にこないだの分より遥かに多く払ってもらっちゃったじゃん」
「そおか?」
「そお。それに貸し借りなしの、平等な立場でいたいから。あ、対等か」
「別に対等だろ」
「とにかく。ここは私が出すから」
とスマホで決済した気恵に
「ほい」
とお金を渡す伊織。
「いや、だからいいって」
「割り勘。“平等に”」
「…」
納得いかないが受け取る気恵。
「んじゃ帰るか」
と言う伊織に
「え。もう帰るの?」
と思わず思ったことがフィルターを通さずに口を吐いて出てしまった気恵。
言ってからハッっとなって視線が泳ぐ。
「ま、終電まで全然時間あるし、飲みたいならもう1軒行く?」
とスマホで時間を見てから言う伊織に「うんうん」と頷く気恵。
「じゃ、ま、そこら辺歩いて探すか」
と歩く伊織の少し後ろ横で歩きながらも
終電では帰るのね
と思う気恵。歩いているとマジックバー&バーというお店を見つけ
おもしろそうだということで2人で入ることに。そしてマジックとお酒を楽しみ、お店を出た。
「んじゃ帰るか」
と言う伊織に、さすがに
「うん」
としか言えなかった気恵。2人で電車に乗って帰ることに。伊織は気恵を家まで送っていく。
「ありがとね。送ってもらっちゃって」
「いや?こっちこそありがとな。今日付き合ってもらって」
「いやいやいや。私こそだよ。奢ってもらっちゃって、いろいろとつ、付き合っ、てもらって」
「いや?楽しかったし」
「そ、そっか。よかった」
「ま、高いのばっかだったけどな」
「そうだね」
「じゃ、また明後日な」
「うん」
「おやすみー」
と感情のない言い方で、感情のない顔で言いながら手を振って振り返って歩き出す伊織。
「あ、うん。お、おやすみ」
と呟いて手を振る気恵。ただ「おやすみ」と言うだけなのに、ドキドキする。
家に帰って着替えもせずベッドに仰向けに倒れる気恵。そして
「あぁ〜!楽しかったぁ〜!けど…。もっと水族館とか行きたかった!デートっぽいことしたかった!」
と天井に向かって駄々をこねる。
「…ん?待って?付き合ってないんだし、デートではないか。じゃあ、水族館とかも行かないか。
…告白しないといけない感じ?…でもフられたら?…もうあの職場いれないよね?
…転職先候補を決めてから告白…。あぁ〜!なんで同じ職場の人好きになっちゃったんだろぉ〜!」
と嘆きながらも、付き合えたらのことを想像して楽しくなったり、照れたり、1人で百面相をしていた。
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