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紫道
#コメディ
「おっ、おはよう!」
伊織と会ってぎこちない挨拶をする気恵(きえ)。
「おう。おはよ」
いつもながらに眠そうで、貧血気味で死んだ表情の伊織。
そのまま一緒に職場「オーライ おおらか不動産」へと向かう。出入り口から入ってオフィスに入る。
「おぉ。おはよう。伊織くんに尾内(おうち)くん」
社長が挨拶してきたので
「おはようございます」
「おはよーございます」
返す伊織と気恵。伊織は荷物を置いてすぐ、休憩室というほどの休憩室ではないが
自動販売機などがあるちょっとしたスペースに移動して
バーなどに置いてある小高いイスに座り、小高い小さなテーブルに突っ伏した。
「いつも思うけど、伊織くん、自分のデスクで寝てればいいのに。あんな寝づらそうな場所じゃなくて」
と言う社長に
寝るのは社長公認なのね
と思う気恵。社長の言葉を無視して
「昨夜はお楽しみでしたなぁ〜」
とRPGの金字塔の往年の名セリフを言う明観(あみ)。
「なっ、なに言ってんの?それにそれ言うなら昨日じゃなくて一昨日でしょ」
「まんまとホールドトラップにかかりおったな。このマヤガミめ」
「人をモンスター扱いしないで」
「一昨日の夜はなにかあったというわけですな?」
「…」
ジト目で明観を見る気恵。そして
「…はあぁ…」
と一つため息を吐き出し
「なんもなかったよ。終電ギリで帰りました」
と言う気恵。
「あら。そうなの」
「そうなの。続きはお昼ね」
と言っていると
「おはようございます!」
ルビアがオフィスに入ってきた。
「おはようルビアくん」
社長が挨拶し
「おはようございます!」
社長に返すルビア。明観も気恵もルビアに挨拶に、ルビアはそれに返す。
「じゃ、全員揃ったということで」
と社長が言う。
「あ。また小角決(おかけ)はあれですか」
と明観が社長に言う。
「そう」
「あれ。ってなんですか?」
ルビアが気恵に聞く。
「あれっていうのはね」
と気恵が説明しようとしたら
「そうか。ルビアくんはまだ知らないか」
と社長が入ってきた。
「説明しよう!」
社長が人差し指を立てる。
「なんかマンガとかだったら3頭身くらいのちびキャラになって説明してる感じだよね。絵が浮かぶわ」
「…ちびキャラ?」
「あの、目がおっきくて頭も大きい、可愛い感じに描(えが)かれる感じ」
「あぁ〜。…社長が?」
「…。ま、社長は可愛い感じにはならんか」
と明観と気恵が話す中、社長はルビアに向かって説明を始める。
「ルビアくんも不動産業に就いて、そこそこ経ったと思う」
「はい。伊織先輩の元でお客様が契約するまでを何回か見させてもらいました」
「うん。だから説明しなくてもいいと思うんだけど、お客様にうち(オーライ おおらか不動産)に来ていただいて
あ、電話やネットでも受付はしてるから、電話やネットの場合は
事前に間取りや家賃、立地なんかの条件とか、妥協できない点なんかを聞いてからご来店いただく。
私たちは事前聞いてるから、ご来店いただいたときにはすぐに資料をお見せできる。
飛び込みの方にはアンケート用紙にそれらを書いてもらって
それを元にタブレットやパソコンで検索して、条件に合う物件情報を見ていただくって感じなのね?」
「はい」
「で、当たり前だけど、お客様の住む部屋ってのはすぐには決まらないことが多いし
ま、運命の出会いってのもあるけど、それがなければなるべく時間をかけて吟味してほしいんだけど
そのお手伝いのために我々はいるわけでしょ?」
「ですね」
「だから我々はお客様を実際にお部屋に案内してさしあげて
「ここより○○な感じ」とか意見をいただいて、またそれに近い部屋を探す。
そして次回そのお部屋に案内してさしあげて、ってのの繰り返し。
だから基本的にお客様と実際にお会いして意見交換をするパート
実際にお部屋に足を運ぶパート、っておおまかに2つのパートにわかれるのね?」
「はい」
「で、累愛(るあ)くんはお客様と実際にお会いして意見交換をするパートで
その人が好きな雰囲気ってのを理解する天才なのね?
ま、天才っていっても今までの経験の積み重ねだと思うから、一概に天才と軽く言えないんだけど。
だから普通は何日もかけて何件も見て、悩んで悩んで決める感じなんだけど
累愛くんの担当のお客様は1日、長くても3日のうちにバッチリな物件に出会って決めるっていう。
…あ!それでね?累愛くんが朝いない訳なんだけどね?
僕たちは営業時間から終業時間まででお客様とやり取りをして、実際お部屋に伺ってってのをするんだけど
累愛くんは働くときは朝から晩まで働くタイプだから
営業開始時間より前にお客様とお部屋巡りをしてるから、朝いないときもあるって訳」
社長の説明が終わった。
「なるほどですね。スゴいんですね、累愛先輩」
ルビアが呟く。
「そうなのよねぇ〜。あぁ見えてスゴいんよ。やつは」
「ドルヲタ(アイドルヲタク)な変態だけどね」
「月の半分くらいいないし」
「なのに稼ぐし。若干腹立つよね」
「わかる。でも給料のほとんどをアイドルに突っ込むんでしょ?バカでしょ」
「私に付き合わせてゲームとか買わせてるけどね」
「小角決もよく明観に付き合うよね」
「ふふふ。やつにはゲーマーの素質もあるからね。今からこっそり育てておくのだよ」
なんていないところで好き放題言われていた累愛。そんなこんなで朝礼が終わる。
ルビアが社内の冷蔵庫から約1日分の鉄分 飲むヨーグルトを取り出して伊織の元へ持っていく。
そして静かに頭の付近に置く。
「…あぁ〜…。…さんきゅ。ルビア」
「あ、起きてたんですね」
「バリ眠いけどな」
と言いながら約1日分の鉄分 飲むヨーグルトに手を伸ばす。ストローを刺して飲む。
「それ効くんですか?」
と聞くルビアに、半分ほど飲んでからテーブルに置く伊織。
「…ま。気休めだよね。夜寝る前に飲んで朝飲んでる。高校んときから」
「あ、高校生のときからそうなんですか」
「そ。ふつーに朝ホームとかでぶっ倒れたことあるからね」
「マジっすか!?」
「ま、ぶっ倒れたって言っても、クラッっとしたから膝ついて
しばらくその場から動けなかったってだけだけどね」
「それでもそんなことになるんですね」
「…ま。周りにいる人には心配と迷惑かけたね。「救急車呼ぶ?」なんて聞かれたこともあったけど
「すいません。ただの貧血なんです」って言って、ベンチまで連れてってもらったこともあったわ。
ま、悪魔はそんなことないだろうからな」
と話していると
「悪魔?」
と気恵の声がしてビクッっとなる伊織とルビア。気恵は紅茶を淹れにきたのだった。
「悪魔ってなんの話?」
「え。いや…」
と「どうしよう」と思うルビアに
「悪魔的に眠いって話」
と突っ伏しながら言う伊織。
「あぁ。睡魔ってこと?」
「そーゆーこと」
「そんなこと言ったら汐田はいつも睡魔という悪魔に襲われてんじゃん」
「失礼な。お客様の前では睡魔なんて振り払ってるわ」
「ま、その分の反動が普段にきてるってわけね」
「そーゆーこと」
と話して気恵はオフィスに戻っていった。
「…あっぶな」
「どうしようかと思いましたよ」
「…めっちゃいまさらなんだけどさ?バレちゃダメなん?ルビアが悪魔なこと」
「…ダメってことはないですけど、なるべくなら知る人は少ないほうがいいですね。
悪魔や天使の存在が周知の事実となると、いろいろダメなんですって」
「いろいろ」
「いろいろ。ま、そこは説明すると長くなるんで」
「へぇ〜。ま、そこら辺はまた時間あるときに聞くわ」
なんて話をして仕事に入った。引き続きルビアは伊織と一緒にお客様の対応をして
気恵も飛び込みに来たお客様に対応して
明観は自分の担当のお客様の物件を探しながらもパソコンでゲームをしながらお昼まで過ごした。
「気恵ー。お昼行こ」
明観がオフィスで気恵に言う。
「うん。行こっか。社長、お昼行ってきます」
「いってきまーす」
と社長に告げてから
「いってらっしゃい」
お昼へ向かった。お店に入り注文を終え、料理が届いて食べながら会話をする2人。
「で?」
「ん?」
「朝の話の続きよ」
「あぁ〜。汐田との話?」
「それ以外ない」
「でって言われても」
「何事もなかった1日を語っておくれ」
「語るもなにも。お昼に待ち合わせてランチ食べて、散歩がてらウィンドウショッピングして」
と気恵が言うと「うえぇ〜…」みたいな表情をする明観。
「…なにその表情」
「え。なんか気取ったOLの日曜日みたいで…」
「そっちか。なんか苦手な食材でも入ってたんかと思った。え、でもどこが気取ったOLの日曜日なのさ」
「え。全体的に?ウィンドウショッピングとかまさに」
「あぁ…。いや、しょうがなくない?恵位寿(えいす)だよ?
恵位寿とか己参道(おのれさんどう)とか赤山とか普段行かんじゃん?やることわからんて」
「ん?」と言う顔をする明観。現在明観と気恵がいるお店は己参道のお店であった。
「いや、ランチとかは別じゃん?」
「そうなんだ」
「そうでしょ。行きたいお店がたまたまここ(己参道)だったってだけで。
目的があるのとないのでは違うじゃん」
「なるほど?それで?」
「ま、ウィンドウショッピングして、ま、集合が遅かったから
ちょっとウィンドウショッピングしてたら夕方になって、んで居酒屋行って」
「え、マジで見るだけだったの?買わなかったん?」
と明観が言うと「信じられない」みたいな表情をする気恵。
「え。恵位寿だよ?信じられんくらいのハイブランドまみれだったよ」
「Tシャツとかでもプレゼントしたらよかったのに」
「Tシャツでも数万するのよ?」
「マジか」
「マジマジ。あ、「Period.」ってブランド知ってる?」
「知らん」
即答の明観。ちなみに明観はブランドについてはほぼなにも知らないに等しい。
「ま、知らないよね」
「知らないね。なんかゲームの技?」
「ブランドだって言ってんでしょ」
「そっか」
「スーツのブランドなんだけどさ?」
「お。いいじゃん。プレゼントしてプレゼントしてもらえば」
「…」
ジト目で明観を見た後、値段を教えた気恵。
「…」
手が止まる明観。
「…ハイスペのPC買えんじゃん」
「…ま、値段知らないけどそんくらいはする」
「それはヤバいね」
「いや、カッコいいんだけどさ?でも服のこととか知らない私とかから見たら
マジで赤山とかAKAKI(アカキ)にも売ってそうな感じ」
「あぁ〜ね。たしかに服詳しくないとわからんもんね。
私も就活のとき赤山で買ったスーツいまだに使ってるし」
「…それは…。さすがに新しく買いなよ」
「その分ゲームにぶっぱしたいのだよ」
と言う明観に
小角決のことあれこれ言ったけど、明観も明観でヤバいよな
と思う気恵。
「ほんで?」
「ほんで?」
明観の「ほんで?」って言葉に、某大物司会者の顔が思い浮かぶ気恵。
「ま、それで、居酒屋行って、食べて飲んで話して、で、出て「帰るか」って言われてさ」
「汐田…」
「やれやれ」と首を静かにゆっくり横に振る明観。
「でも…」
私なんて言ったっけ?
と思い出そうとする気恵。
「なに?「私まだ帰りたくないっ」的なことを言ったの?」
「いや…。そこまで露骨なことは言ってないけど、引き留めはした」
「おぉ〜。気恵にしちゃやるね」
「で、2軒目にマジックバーに行って」
「へえぇ〜。変わったとこ行ったね」
「うん。歩いてたら看板が目に入ってね」
「恵位寿の夜ってどんな感じなん。おしゃ?」
「…あ。言ってなかったけど、居酒屋からは真新宿に場所変えました。
恵位寿だと居酒屋でも(値段)すると思ったから」
「なるほどね?」
「あんま高いと居酒屋でもくつろげないじゃん?」
「まあぁ〜。高い居酒屋行ったことないけど、気持ちはわかる」
「でしょ?」
「うん。で?」
「でー。…帰りました」
「…お。帰ったんだ」
「はい。終電近かったからお会計して、んで帰りました」
「なるほどね?」
「あ、送ってもらいはしました。家まで」
「それはいつもでは?」
「…。いつもでした」
「なんならそれはうち(オーライ おおらか不動産)に入って
歓迎会した後から、飲んで遅くなると送ってくれるって言ってたじゃん」
「そうでした」
「そっかぁ〜。なにもなかったかぁ〜。せっかく次の日空けて勝負下着で行ったのにねぇ〜」
と言う明観にジト目を向けながら
「フォーク投げるよ」
と言う気恵。
「ごめんごめん」
笑いながら謝る明観。
「なぜ私は同じ職場の人を好きになってしまったのか。帰ってから割とガチで悩んだわ」
「それ月1くらいで聞くわ」
「いや、それくらいガチで悩んでんだって。明観同じ職場で好きな人できたことないでしょ」
「できたことないでしょ。っていうか
私今のとこ(オーライ おおらか不動産)以外勤めたことないし」
「そっか。はあ…。辛い。幸せな気もするけどめっちゃ辛い。しんどい。
同じ職場の人を好きになってしまうのはなぜ?七不思議でしょ。この世の」
「まあぁ〜…。社会人になったら同じ職場じゃないと深い関係って生まれないでしょ」
「まあねぇ〜…。でも部署違うとかあるじゃん?他の会社は」
「あぁ〜…。うちは部署とか無い上に少人数だもんねぇ〜」
「辛い…。幸せだけど辛い」
「お。名言。幸せと辛いは紙一重なんだね」
「お。明観のほうが名言ぽいの出してる」
なんていう恋バナをしてお昼ご飯を食べた2人だった。
コメント
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お疲れさま、結愛さん!第17話読み終えたよ〜🌸 今回もオフィスの空気感がめっちゃリアルで好きだな〜!気恵と伊織のじれったい距離感、明観の軽快なツッコミ、ルビアのちょっとしたドジっ子感…それぞれのキャラが立ってて、読みながら自然と笑顔になっちゃった😊 特に気恵の「幸せだけど辛い」ってセリフ、めっちゃ刺さる…!職場恋愛のリアルな葛藤、すごく共感したよ。伊織の貧血シーンとかルビアとのやりとりも可愛くて、続きが気になる〜! 次話も楽しみにしてるね!✨