テラーノベル
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山道を照らすヘッドライトが、雨の中で滲んでいた。
白い光が木々の隙間を切り裂く。
それを見たとき、 涼架の指先がわずかに震えた。
モトキはそれを見逃さなかった。
「……先生って、誰」
低い声だった。
怒りを押し殺した声。
涼架は少しだけ黙る。
外では車のドアが開く音。
足音。
ゆっくり。
だけど確実に近づいてくる。
「……オレを研究員にした人」
ヒロトが息を呑む。
涼架は視線を落としたまま続けた。
「獣人化計画を作った人でもある」
モトキの尻尾が逆立つ。
「じゃあ、全部の元凶じゃん」
「うん」
涼架は否定しなかった。
「たぶん今でも、実験は続いてる」
「ここに僕の記憶にはない新しい獣人がいるしね。」
ヒロトを見ながら涼架が言う。
雨音が強くなる。
ヒロトの顔が青ざめていく。
「……っ、また捕まる……」
「捕まらないよ」
モトキが即座に言った。
「絶対」
その時
玄関の向こうから、静かな声が響いた。
「相変わらず騒がしいねぇ、涼架くん」
びくり、と涼架の肩が揺れる。
聞きたくなかった声。
忘れたかった声。
扉の向こうに立っていたのは、一人の男だった。
黒いコート。
銀縁眼鏡。
雨に濡れた長い黒髪。
年齢の読めない、不気味なほど整った顔。
口元だけが笑っている。
「久しぶり」
涼架の喉が強張る。
「……榊」
榊はゆっくり室内を見回した。
モトキ。
ヒロト。
暖炉。
生活の痕跡。
それら全部を観察するように。
「へぇ……ちゃんと生きてたんだ」
その視線がモトキに止まる。
「M-17。経過は良好そうだね」
モトキの目が鋭く細まる。
「その番号で呼ぶな」
榊は少し目を丸くして、それから笑った。
「自我形成が進んでる」
まるで研究結果を見たかのようだった。
人間を見る目じゃない。
ヒロトが怯えて後ずさる。
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unknown
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# omr _ .
9
猫耳が震えていた。
榊はそちらを見る。
「H-21はまだ不安定か。まぁ、急造品だから仕方ない」
涼架の中で、何かが切れた。
「……急造品?」
声が低い。
榊は気にも留めない。
「君のデータ、優秀だったからねぇ。消されても大半は復元できたよ」
「っ……」
「君、本当に才能あったんだ」
嬉しそうに言う。
まるで恩師みたいに。
それが涼架には耐えられなかった。
「……黙れ」
榊が少し首を傾げる。
涼架は拳銃を向けた。
「お前のせいで、どれだけ人が壊れたと思ってる」
「壊れた?」
榊は不思議そうに笑う。
「違うよ。進化だ」
その瞬間。
モトキが飛び出した。
ありえないほどの殺気を飛ばしている。
狼の牙が榊の喉元へ迫る。
だが
「っ!?」
空中で、身体が止まった。
モトキの目が見開く。
首輪
昔、施設で埋め込まれた制御チップ。
榊が小さな端末を操作していた。
「まだ残ってるよ、君の中」
モトキの身体が痙攣する。
膝が床につく。
「ぁ……っ、ぐ……!!」
「モトキ!!」
涼架が駆け寄る。
榊は静かに笑った。
「獣人はね、暴走する。だから制御が必要なんだよ」
「やめろ……!」
「君も知ってるだろ? 涼架くん」
榊の目が細まる。
「人間は、弱い生き物なんだから」
その時だった。
ヒロトが震える手で、落ちていたスタンガンを握った。
怖い。
足が動かない。
でも
モトキが苦しそうにしてる。
あの人が笑ってる。
嫌だった。
すごく。
「ぁ……ああああっ!!」
ヒロトが飛び出す。
榊の腕へスタンガンを押し当てた。
顔が歪む。
端末が落ちる。
同時に。
モトキの拘束が切れた。
「っは……!!」
次の瞬間。
モトキの拳が、榊の顔面へ叩き込まれた。
鈍い音。
榊の身体が壁へ激突する。
空気が止まる。
モトキは肩で息をしていた。
金色の瞳が獣みたいに光っている。
「……オレ達は」
低い声。
怒りで震えていた。
「お前の道具じゃない」
榊は口元の血を拭う。
それでも笑っていた。
「……やっぱり成功作だねぇ」
その笑みに。
涼架は初めて、本気で殺意を抱いた。
コメント
1件
いやもう、めっちゃアツかった……!!😭💥 榊ってヤバすぎるだろ、研究結果みたいに獣人見るの本当にムカつくし気持ち悪い…!! でもヒロトが震えながらスタンガン握って飛び出すシーン、涙腺きたよ…「嫌だった」って感情が勇気になったんだね。 モトキの「道具じゃない」も最高にかっこよかった!!涼架の殺意が初めて本気になったラスト、続きが気になりすぎるよ…😭✨