コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
アリスはわずかに身を引いて、北斗を見つめていたずらっぽく瞳を輝かせ囁いた
ハァ・・・
「・・・だめよ・・・アキ君がいるわ・・・ 」
チュッと「ハイ、もう終わり」とばかりにアリスが唇にキスした
北斗はううっ・・と唸って俯いた
「俺をもてあそんでいるな」
わかったと言うつもりなのに、体がアリスと離れたがらない
彼女はあまりにも甘美なのだ、あともう一度だけキスを・・・・いや・・一度といわず二度三度・・・
「これで最後にする・・・ 」
クスクス・・・
「だぁ~め・・・ 」
北斗がもう一度アリスの唇を奪おうとした時
「な・・・何やってるの?」
明の声に磁石がはじけるように二人は左右に飛んだ、バケツ一杯に、水を浴びせられたようにヒヤッとした
北斗はとにかく自分の顔が赤くなるのを、抑えたくてずっと二人に背中を向け、景色を見るふりをした
冷や汗が背中を伝う、どうしよう・・・明にとんでもない所を見られてしまった・・・
「シロツメクサ沢山見つけた?」
アリスは唇をきつく閉じて、こみあげる笑いを隠そうとしたが、上手くいかなかった。唇の端がひくひくしている
「ど・・・どうして・・・
キ・・キスしてたの? 」
明が眉にしわを寄せて言った
「夫婦はキスをするものです」
アリスが威厳たっぷりに言った。夫と妻がキスをして何が悪いとでも言うように
「ほ・・・北斗・・・そうなの? 」
明が不思議そうに聞く
北斗もくるりと振り返り、真面目くさった顔で答えた
「そのとおりだ」
ああ・・もうっ・・・
耳が熱い
それでも北斗はアリスは、きっと素晴らしい母親になるだろうと思った
アリスも何気なさを装っているが、髪をかけた耳は赤く染まっていた
「シロツメクサで花冠り作る?」
アリスは籠一杯に入った明の土産を観察した
「ああ・・・すまない・・・仕事のメールだけ済ませてくれ 」
そう言うと北斗が小さなノートパソコンを取り出して、パチパチキーボードを打ち出した
青空とバーべキューコンロの横で、電子機器なんてなんともおかしな光景だとアリスは思ったけど
でもそこが北斗らしいと思った。やっぱり彼にはビジネススーツに無機質なオフィスは似合わない
彼はとても自由で素敵な牧場オーナーだ
アリスはシロツメクサを一本ずつ取り出して、芯になる三本に順番に一本ずつ編んで、花冠りを明に作って見せた
「ジ・・ジュリアンの首輪も作る!」
明の瞳が輝いた
「それならもっと沢山いるわ 」
「と・・・取りに行こうよ!ありす!」
「ええ!いいわよ 」
走り去る明の後を追おうとしたとき、ぐいっと腕を掴まれて、アリスはくるりっと回って北斗に向き合わされた
北斗からのキスは激しく力強かった
少し荒っぽい唇の動き、彼の味、香りがアリスの中に不届きな欲望を燃え上がらせた
彼が耳元でそっとアリスに囁いた
「今夜・・・」
アリスの下腹部のおかしな所に力が入った
ああ・・・私も待ちきれない
それからはなんとか冷静になって、アリスと明はシロツメクサを集めて編むのに夢中になった
こんな怠惰な午後を送ったのはきっと人生で、初めてかもしれない
やがてゆっくり夕日が沈み始め、風が冷たくなってほっぺがカサつくようになった頃
遠くの方で二人を呼ぶ北斗の声が聞こえた、帰ると言っているのだ
スケジュールもスマートフォンも気にせず、ただ北斗さんのバーベキューを食べて、遊んで日が暮れたら帰る
トラ猫母さんに花輪を被せると一瞬で、ズタボロにされた
彼女の「あたしゃ飼い猫じゃないわよ!」という気高さが伝わってくる
しかしジュリアンの首輪のシロツメクサは、とても似合っていた
ジュリアンの首輪を作るには大量のシロツメクサが、必要だったけどアリスと明はあきらめなかった
そして荷馬車に乗る二人の頭にも、シロツメクサの王冠は輝き
そして北斗の頭にも当然シロツメクサの王冠は、彼がノートパソコンを、打っている時から付けられていて
家に着くまで冠はかぶらされていても、彼は一言も文句を言わなかった