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〜前回のあらすじ〜
VTRに悪意があったため、種族は【リリム】に決まりそうです。
「嫌だ!!リリムは絶対に嫌ですよ!!適正種族を変えてくれるまでここ動きませんから!!」
「スーパーで駄々こねる子供ですかあなたは。私より子供みたいで見るに堪えないですね」
「だってそうでしょ!!なんで男の俺が男の精気なんか吸わないといけないんです!?ふざけんなクソッ!適正審査員呼べよ!」
俺が必死に抗議している間に、少女は壁にかけてあった受話器を手に取った。
「もしもし?すいません先輩。今転生支援課五番窓口にクレーマーが来てるんですよ」
クレ!…いや、我慢…我慢だ。
「なんか適正審査員呼べよ〜とかこのクソロリっ子が〜とか駄々こねて鬱陶しいんですよ」
「なんか知らない記憶が捏造されてるんですけど!?」
「え?お客様第一?転生者の要望は可能な限りって…あ〜はいはい分かりました…じゃあこっちで適当にあしらっておきますね。失礼します」
なんか扱い雑くない?俺死人だよ?目の前で自分の墓踏んずけられてる気分なんですけど。
少女は何故かこちらを睨んだ後、受話器を壁に掛け再びこちらを向いた。「はぁ…」と呆れたため息と共に言葉を吐き出す。
「上司の命令であなたの要望をできる限り聞かないといけなくなりました。ですが適正種族の変更や、強制的に天国行きにすることはできませんので、身の程わきまえてもの言ってくださいね」
こいつちょいちょいなんなんだよ!上司に言いつけてクビにしてもらおうか…
「とりあえず、食事を何とかできませんか?さすがに男の…その、精気は気が引けるというか…」
「別の食料ですか…上司の命令でできる限り応えるとは言いましたが、かなり面倒臭いこと要求してるのわかってます?はーあ、ほんと最悪!おやつの時間削ってまで対応してるのにグチグチグチグチ文句ばっか言ってくるとかないわー。客ガチャハズレもいいとこです」
そう言っていやいや手元のスマホを手に取り、別の食料を探してもらう。
殴っていいよな?これ。俺がみんなを代表して一発顔面に決め込んでやろうか。
「んんー…ん?あ、これなんかどうです?」
彼女が指さした食料は、何と美味しそうなお肉__のちょうど上にあった…
「…あの、僕の見るとこが間違ってたらアレなんですけど…それ、「尿」って書いてません?」
「はい。おしっこですね。お好きですよね?男性のおしっこ」
「俺は男の尿なんか好きじゃねぇえ!!」
「そんなに本気にしないでくださいよ。冗談です。それに、声量には注意してくださいね」
周りを見てみると、他の転生者と思われる人達がこちらを見ている。他の窓口からは、何事かと顔を覗かしている職員たちが何人かいた。
「本当はもう一個あります。食料ではなく、行為と言った方がいいですけど」
「なんですか?また性行為しろとか言うんですか?」
「それでいいならいいですけど…もう1つは、添い寝、です」
「添い寝?添い寝って、あの添い寝ですか?」
「はい。あの添い寝です。しかも性行為じゃないので、女性の方と添い寝しても効果がありますよ。良かったじゃないですか」
ま、まぁ…他のと比べれば難易度下がったけど、人と知り合えなかったらどうするんだ?
「ここまで手厚い措置を受けたんですから、もうさっさと転生してもらっていいですか?時間ももう押してま__」
ハッと何かに気づいた顔をして、カウンターに置いてあった書類等を片付ける。
「死人転生支援課五番窓口休憩入りまーす!」
「ちょちょちょちょっと待てぇぇぇええ!」
時計は【15:30】を示していた。
「なんですか?休憩は16:00までなんで、これ以上時間取られると困るんですけど?」
「いや、こんな中途半端なところで終わんないで下さいよ!!第一、人に出会えなかったらどうなるんですか!?」
少女は、その見た目に似合わないほど嫌味っぽい舌打ちをした。
社会に出たことない俺が言えたもんじゃないが、窓口の職員がそれはダメだろ絶対!
「じゃあこちらで設定しますね…本当はあんまり良くないんですけど、おやつのためなのでやむを得ません」
え、大丈夫なの?それ。
「えっと、じゃあ…転生したら早めに人と出会えるようにして貰えませんか?添い寝できないと意味ないですし…」
「なるほど、転生後の座標はイジれないんで、あなたの俊敏性上げときますね。とりあえず…最上位の【神速】にしときましょ!はい解決ッ!!」
え?早速インフレしてない?早く休憩入りたいからってとりあえずで最上位ってヤバない?
「ん〜、あとはあれですね。添い寝ってゆうくらいなんだから、やっぱり持ち運べるベッドとか欲しいですね」
「なるほど、つまりアイテムボックスが欲しいってことですね!?じゃあ【四次元収納】の能力もつけちゃいましょ!!はい解決ッ!!」
「あ!ついでに索敵能力とかも欲しいですね!」
「じゃあ【敵感知】もつけときます!!」
どさくさに紛れて関係ない要求してみたけど…気づいてないのか?ラッキーだぜ!!
というか、結構無理な要求してるけど、こいつ後で怒られたりしないのか?
「もうないですか!?ないですよね!?じゃあもう決定しますよ!?クソが!!」
ん?なんで?30分前までの事務的な感じは片道宇宙旅行中ですか?
「はいもう決定ッ!!これ以上は要求されても対応できませんのでさっさと転生しやがれ下さい!!私は大人のteatimeを楽しみますので邪魔しないでくださいはい閉庁!!」
「大人ってほどの見た目じゃないじゃな__なんでもないです。手早く転生しましょう」
優しく微笑んでいるつもりだろうが、目が笑っていないのでとても怖い。目に光がないもん。
「私は大人なので気にしないです。あぁ、そうそう。言い忘れてたんですが、あなたが行く世界の男は性欲に飢えた男が多いですので、添い寝する相手がいないっ!!なんてことはないので安心してください」
「どこに安心できる要素があるんだ!!それって添い寝の先の段階まで行っちゃわない!?」
「うるさぁあい!!私は子供なんでそんなこと分かりませ〜ん!!」
大人じゃねぇのかよ!!さっきの事務的な態度と家族旅行中か!?
「もうゴタゴタ言わないでくださいよ!ほんとにタマ付いてるんですか!?あぁ、これからなくなるんでしたねwうっかりうっかり」
「一言余計だよ!!男にその発言はやめといた方がいいぞ傷つくから!!」
「はいもう知りませぇーん!!1名様ごあんなーーい!!ちなみにあちらの世界で死んだらもう転生できませんのでご了承ください!!ではでは、快適な異世界ライフを送れることを願ってます!!」
「え?あっちょっと待って!!まだ心の準備がぁぁあああああーーーーー!!」
そんな俺の悲痛の叫びを無視して、足元から白い閃光が広がり、辺り全体を覆った。そのまま体の力が抜けていき、視界が暗転してゆく…
最後に見た景色は、 クッキーをボリボリ食べる小さい悪魔の姿だ。 その瞬間、俺は薄れゆく意識の中で心に決めた。もう、子供だからといって女の子を雑に扱うのは辞めようと…小さな子供でも、心に深い闇を宿すことがあるのだと…
転生前からハードモード確定してしまったことに不安を感じたが、そんなこと知ったこっちゃないとでも言うように意識が遠のいていった…
俺はこれから、どうなってしまうのだろうか。
第3話…ここからようやく、俺の異世界でのリリムライフが幕を開けてしまう。