ーーー帝国王宮本部ーーー
-マヌエル伯爵-
「なぜだ なぜサムエルがいない」
-幹部-
「1人でネーヴェに逃亡したと思われます」
-マヌエル伯爵-
「ネーヴェ?随分とハードな所へ行くな」
-幹部-
「しかし
男2人と共に過ごしてる模様です。」
-マヌエル伯爵-
「なんだと?今すぐサムエルだけここへ連れてこい」
-幹部-
「誰に頼みましょうか」
-マヌエル伯爵-
「エルゼオ1人で十分だ
3日以内に連れ戻してこい」
-幹部-
「承知しました」
ーーーネーヴェ地方某海岸ーーー
-クローチェ-
「説明はこれで以上だ
またいつか会おう」
-セレーノ-
「明日の作戦を立てよう
明日はクローチェの指示があるまでとりあえずここで待機。そのあと地下神殿に向かうとしよう」
-アンドレア-
「オッケー」
-サムエル-
「はい」
3人はしばらく雑談をしたあと、眠りに着いた。空を見渡す限り、分厚い雲が覆っていて、その雲の中からブワッと、また悪魔の鳥が飛行している。ここら辺を巡回しているのだろう。
ー翌日ー
-セレーノ-
「おーい朝だぞー」
-アンドレア-
「えぇ〜あと5分だけ」
-セレーノ-
「ふざけるな起きろ」
-アンドレア-
「ふぁ〜もう、セレーノ毎回起きるの早すぎ」
-サムエル-
「おはようございます」
-セレーノ-
「クローチェがあと30分でここにくるはず」
30分もしないうちに、クローチェともう1人昨日の言っていたやつが来た。
-クローチェ-
「よし、全員起きてるな
とりあえず、これが昨日俺が言ってたもう1人のやつ。名前はリナ。」
-リナ-
「よろしく」
-セレーノ-
「よろしく」
-クローチェ-
「作戦のことだが
君たちには地下神殿へ行ってもらう。
その間、俺は周りを見張っている。リナはネーヴェの内戦の動きを見ててくれ。」
-リナ-
「承知」
-セレーノ-
「了解」
-クローチェ-
「アルカンジェロがどうなっていたかしっかり見てきてくれ、いいか」
-アンドレア-
「オッケー」
-クローチェ-
「それじゃあ、作戦にうつる」
セレーノは、何かを感じ取った。
話が上手くいきすぎている。
不自然なこの話に疑問を持ちながら、作戦どおり動く。エルゼオと戦ったところを通り過ぎて、まもなく地下神殿に辿り着く。
朽ち果てた階段を降りてついにアルカンジェロ本体を初めて目にする。
-セレーノ-
「これが…アルカンジェロ…」
-エルゼオ-
「どうじゃ
驚いたじゃろ?」
-セレーノ-
「!?」
-アンドレア-
「お前は…!!」
-エルゼオ-
「貴様
まだ右腕の再生がなっていないのか
人間も所詮こんなものか
貴様ら2人には用はない
用があるのはそこの小娘じゃ」
-サムエル-
「私…?」
-セレーノ-
「サムエルを連れてどこ行く気だ」
-エルゼオ-
「マヌエル伯爵からサムエルを連れ戻せと命令を受けただけじゃ」
-セレーノ-
「マヌエル…!」
セレーノは目が飛び出そうなくらい怒りだした。
-セレーノ-
「マヌエルの目的はなんだ」
-エルゼオ-
「それはわしにもわからん
だが
きっと帰ったころには
それなりの制裁が下ることじゃろう
フハハハハハ!!」
-サムエル-
「・・・」
-クローチェ-
「何かと騒がしいと思ったら
久しいなぁ、エルゼオ」
-エルゼオ-
「クローチェ…か
久々に声を聞いたが
特に変わっておらんなぁ
今は貴様と戦う気はない
さっさとこの小娘をわしによこせ」
-クローチェ-
「俺に勝てたら
その小娘を渡してもいいだろう
さあどうするエルゼオ」
-エルゼオ-
「何回いったらわかる
わしは今貴様と戦う気はない」
-クローチェ-
「さてはお前
昨夜の内戦で体力を消耗しすぎたな?」
-エルゼオ-
「笑わせてくれるのう
小娘だけは貰っていくぞ」
-クローチェ-
「おい、待て!」
ーーー帝国王宮本部ーーー
-幹部-
「マヌエル様、どうやらエルゼオがサムエルの逮捕に成功したようです」
-マヌエル-
「そうか
ここに連れてこい」
しばらくすると、茶色の大きな扉が開き、両脇を幹部に押さえつえられ下を向いたままのサムエルが姿を表した。
-マヌエル伯爵-
「お前
なぜここから逃げた」
-サムエル-
「・・・」
-マヌエル伯爵-
「貴様のような逃亡者はもう必要ない
処せ」
-幹部-
「死刑でいいのですか?」
-マヌエル伯爵-
「斬首だ」
-幹部-
「承知しました」
ーー帝国王宮本部某処刑場ーー
サムエルは処刑場に向かわされた。逃げられないように、足かせと手錠、目隠しがしてある。最後の世界を感じながら、涙を流しているのか、目隠しが涙で染みている。
助けにきてほしいなんて願いもなかった。
サムエルはただ死を待つだけだった。
いよいよ処刑台に座り、処刑による作法が行われる。目隠しを外すか外さないかを幹部に問われると、サムエルは少し悩んで外す方を選んだ。マヌエル伯爵が問いかける。
-マヌエル伯爵-
「最期の遺言はないか」
-サムエル-
「私も
生きててよかったという感情を
味わいたかった」
-マヌエル伯爵-
「…よし」
サムエルはゆっくりと首を傾け、うなじを幹部に向けた。幹部は剣を振り上げ、サムエルの首目掛けて一直線に斬った。
ーーー地下神殿ーーー
-クローチェ-
「くそ、
このままじゃ、サムエルが何をされるかわからん!」
-アンドレア-
「じゃあどうすんだよぉ!」
-クローチェ-
「王宮に入るのは極めて困難
サムエルの解放を祈るしかない…」
-セレーノ-
「サムエルは生きて帰ってこれるんだよな!?」
-クローチェ-
「それは分からない
ヤツ(マヌエル伯爵)は何を仕出かすかわからない」
-セレーノ-
「(頼む…解放してやってくれ)」
ーーー帝国王宮本部王室ーーー
-フェデリーコ-
「なぁ、ベラ
もしまた戦争が起きたら
君は僕に協力してくれるかい」
-ベラ-
「えぇ、もちろん」
-フェデリーコ-
「今….
僕の命が狙われてるんだ
何としてでも
アルカンジェロだけは守らないといけない」
コンコン
-幹部-
「伝令です。
サムエルの処刑が完了しました。」
-フェデリーコ-
「そうか。
遺骨は、テゾーロ島周辺に散骨してくれ」
-幹部-
「承知しました」
-フェデリーコ-
「僕たち帝国政権か
王国復権の反乱軍か
どちらが勝つんだろうか
検討もつかないよ」
-ベラ-
「勝利は我々のものです。
政権を譲るわけにはいきません。」
-フェデリーコ-
「そうだな…。
この戦争が終わったら
どこか景色の良い場所に行こう」
-ベラ-
「えぇ、約束ですよ」
ーーーネーヴェ地方マルティーーー
-反乱軍兵士A-
「エオーネ教信者は徹底的に潰せ」
何の罪もない街人が次々に殺されていく。
12年ぶりに、また殺戮の街と化してしまった。コーヒーをくれたおっちゃんも
火傷で顔の原型をなくしていた。
-街人-
「誰がぁぁ!助けてくれぇぇ!」
ブォォォォォォォン!!
街人の命乞いも
悪魔の鳥のさえずりによってかき消される。
-クローチェ-
「とりあえず、ここ(ネーヴェ)にいてもどうにもならない、移動しよう」
-アンドレア-
「どこに!」
-クローチェ-
「一度レガーメに引き返す」
-セレーノ-
「軍が追ってくる可能性は?」
-クローチェ-
「軍は俺が何とかする
お前たちは先に行っててくれ」
-セレーノ-
「わかった」
ーーー帝国軍参謀本部ーーー
-アメデオ公爵-
「我々は今
反乱軍により驚異的な力の差を見せつけられている
そこで!
急遽反乱軍の対策本部を立ち上げる
メンバーはここいにいる全員と己らの兵士!
悪魔の鳥かなんか知らんが
我々も兵器の研究を行い
反乱軍の鎮圧に専念する
よいか!!」
-貴族一同-
「はっ!!」
-マヌエル伯爵-
「ですが公爵
どうやって兵器を研究するんですか?」
-アメデオ公爵-
「我々に兵器の開発はできん
反乱軍の拠点を特定して
兵器を盗み出す」
-マヌエル伯爵-
「ですが相手はどんな武器を使ってるかわかりません、袋叩きにされる可能性もあります」
-アメデオ公爵-
「そんなもの
やってみないとわからないだろう
一体どんな武器を使っているのか
わしも気になる」
ーーーレガーメーーー
-アンドレア-
「あいつ1人で軍相手にするとか大丈夫かよ」
-セレーノ-
「クローチェならきっと大丈夫さ」
-アンドレア-
「なぁ
サムエル…どうなっちまったんだろう」
-セレーノ-
「・・・
早く取り返さないと…な」
2人は、サムエルがすでに処刑されているのではと考え始めていた。
あぐらをかいて座った。目の前にうつるのは
冷たい地面と
血が染まった手袋だけだった。
-アンドレア-
「俺たち
そろそろ死んでもおかしくないな
帝国に捕まったら死刑確定だよ」
-セレーノ-
「弱音を吐くのはやめろ
俺たちの目的は捕まることじゃない
忘れたのか」
-アンドレア-
「国を…変える」
-セレーノ-
「そうさ」
少し強い風が吹き抜けた。
どこか懐かしみを感じるこの風景に
2人はホッとした。
つづく
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