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第4話ー依織だけは


✦ ✦ ✦


あの時計の男。何だったんだろう。まだ戻りきっていない意識でふと考える。

なんだか見覚えがあったような気がしなくもない⋯なんだったんだろうか。見た感じ俺より少し若いか同じくらい、アイツは──⋯


⋯そうだ、思い出した。俺が打ちのめしたやつだ。依織に嫌がらせまがいなことをしていた男だ。そしてまた、高校時代の名を馳せていたヤンキーだった気もする。そうだそうだ、懐かしいなぁ。


思い出すだけで腹が立つ。



──それは俺がいくつだったか、中学⋯か、そこら辺の頃。

当時の我が家の教育方法は最悪で、俺はとてつもなくグレていた。ほぼヤンキーみたいなもんだ。服装はアレではなかったけど⋯。

日々の苦しい鍛錬に、大量の勉強、それと家庭ルールが今より複雑で面倒くさかった。

だから夜な夜な抜け出して喧嘩して遊んでを繰り返してた。


そこで依織が小学生へと上がった。教育が俺の頃より優しくなった。最初はなんだか俺が居た堪れない気持ちだったが依織の笑顔をみるとそれがみるみるうちに吹き飛んで、依織が居ると俺は明るくなれた。元気になった。

依織の全部が好きになった。

だから、初めての愛が芽生えたんだと思う。愛の形は姉妹愛とか、そういうのでは無かったが、確かに愛だった。


依織は家庭のせいで、もしかしたら俺のせいで、嫌がらせを受けた。何も悪くないのに。

こんな世界はおかしいと、そう思った。だから俺は嫌がらせの主犯格を打ちのめそうとアイツを学校で呼び出した。

「うちの妹がお世話になってるようで。」

大きな喧嘩をした気がする。

そこから俺たちは更に更に犬猿になっていった。進学丁度一ヶ月前。俺たちは本気で異能ありの大喧嘩をした。結果的に大人の仲裁により両者引き分けで終わった訳だが。

結局親や警察に怒られ話すことは無くなった。だがそこには決して許さないという強い信念は合った。



だがそれも学生時代のお話。俺は見事に忘れていたことだが⋯アイツは覚えていたのだろう。


アイツは俺のことを復讐するために誘拐したのかもしれない。そしてまた、依織の嫌がらせの為かもしれない。

何が何でも依織を護る。そう決意したのだから。アイツになんか負けてやんない。そんな敗北を収めようとアイツに頭を下げることはないし負けた時点で俺は切腹して死ぬだろう。依織に最後の愛を伝えてから──。


✦ ✦ ✦


目の前に広がった光景は自分が思う限り最悪なものだった。姉が捕まっているのだから。

周りに敵がいないかを確認する。耳をそばだてるも何も気配がない。

私は急いで姉のもとへ向かう。幸い縛られていたのは縄だったため、手持ちの短剣でどうにか助けることができた。

「依織…!」

「良かったぁ…一緒に帰ろ」

そう言って手を差し出す。姉はゆっくりと私の手を掴み、指と指を絡ませる。もう離れないように、と。私も少し強く握り返す。

「⋯⋯最悪。居るじゃん」

姉が冷たい瞳をしている。あぁ、やっぱり居たか。


✦ ✦ ✦


そういう時こそアイツらは空気を読まない。とてもとても穏やかで幸福な時間も刹那だ。

「──⋯《藤衣ノ結界》お姉ちゃん、少しゆっくりしてて」

依織は俺に異能を使った。俺が護ろうと、そう思ったのに。周りに花々の結界ができる。少し視界が悪くなるが別に攻撃ができない訳じゃない。俺は刀を手に取った。

「お姉ちゃん、?」

「⋯どうしても、だめ?」

少し瞳を潤せて依織に頼む。依織は俺のこの表情に弱いはずだ。

「⋯無理はしないでね、」

俺は結界から解放された。ありがとう、依織。

これでアイツを──


「《赫焉ノ誓刃》」


依織を死ぬまで護るから。

だからどうか、刃よ強くあれ。

「お姉ちゃん、ごめん。無理そう」

「依織⋯?依織?!おい!」

依織が黒に取り込まれていく。アイツ⋯!


「《朧刻ノ斬界》」

何も無い空間を切り裂く。こいつは自爆式だから、後でアイツが通りそうなところを刀で遮った。

最後、バレないように、アイツの影も切り裂く。これで影から俺の攻撃が可能となる。


「何も無いところを切り裂いたって意味はないじゃないか。相変わらず頭が悪いね」

「は?まぁうちには可愛い可愛い依織が居るから大丈夫ですよ!お前は黙ってろ!ばーーか!!」

「あらあら、口が悪い■はお変わり無いよ■で。さぁ、おいで。■■■■■■?」

アイツの声にノイズがかかる。何を言っているんだ?誰を呼んだ?

「「⋯御意」」

重なる二つの声。一体誰なのだろう。

──片方の声色はなんだか依織に似ているような。遂に幻聴かな、なんて。




幻聴だったら、良かったのに

黒刀は、藤に堕ちる

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