ずっと満月のふりをしてきた。
本当は欠けてる三日月のくせに。
だけど本当にどうしようもなく憧れていたのは、満月でもない。
太陽だった。
高校に入ってすぐに異変を感じた。
俺は転校する度に、いつもクラスの中で一番注目を浴びてきた。しかし、本来俺がいるべき立ち位置に立っていたのは違う男だった。
あれ?
おーい、みんな?関西でブイブイ言わせてきた、永瀬廉やで!
永瀬廉がここにおんで~?みんなっ!”あの永瀬廉”がここにおるんやで~!?ヽ ( ꒪д꒪ )ノ
だけど、みんなの視線は俺には向いていなかった。
みんなの視線の中心、クラスの中でひと際光を放つ男、それが紫耀やった。
華があって、誰からも好かれる。
紫耀が現れるだけでその場がパッと明るくなるような、まさしく”太陽”みたいな存在。
運動神経抜群で、何でもできちゃう。カリスマ性があって、天性のスター性がある。そうかと思えば、バカがつくほど天然で可愛い。
女子から人気があるのはもちろんのこと、同性からも人気があって、まさに”非の打ち所がない”と言った存在だった。
なんやねん、あいつ?いけすかんなぁ。
それが紫耀への第一印象。
俺はいきがってはいるけど、本来人見知りな性格で、今までの学校生活で無事友達ができてきたのはこのビジュアルのおかげで向こうから興味を持ってもらえたからだった。
あいつのせいで俺の高校デビュー、狂ったわ…。このまま友達出来なかったらどうしよう(°°;)
そんな焦りを感じていた時だった。
平野「俺、平野紫耀っていうんだ!お前、名前は?」
紫耀からすれば、みんなに分け隔てなく声をかけたうちの1人やったんやと思う。
だけど、その人懐っこい満面の笑みに、俺は不覚にも一瞬でさっきまでの敵意を喪失した。
紫耀の持つ不思議な吸引力に逆らえなかったのは、俺も他のやつらと全く同じだった。
それから岸くんという超天然和み系の、実は留年しているので一個上というキャラ強なクラスメイトを発見して、俺と紫耀は岸くんを取り合うようにしてすぐに仲良くなった。
紫耀の隣にいるようになって「あれ?永瀬くんもめちゃくちゃかっこよくない!?」と、たった今気づいたような言い方で、クラスの女子は騒ぎ始めた。
それから俺と紫耀と岸くんは、”Mr.KING”などと謎のユニット名をつけられ、その中でも俺と紫耀は”しょうれんコンビ”や、”最強のシンメ”などと呼ばれ、もてはやされるようになった。
「しょうれんは、タイプの違う美男子だからまたいいんだよね!”月と太陽”って感じで!」
と女子が話してるの聞いたことがある。
どっちがどっちと聞かなくても、たぶん誰もが紫耀が太陽で俺が月に例えられていることはわかるやろう。
「どっちも違った輝きがある」みたいな意味で褒めてるつもりやろうけど、お前ら、月は恒星(自ら光を放つ星)やないのを知ってて、それ言うとんのか?
月は自分では光らない。
月が綺麗なのは太陽の光を借りてるからや。もし太陽がいなかったら真っ黒で、誰にも気づいてもらえんような孤独な星なんやぞ?
そして、太陽の光を借りたところで、「地球から見える天体の中では”太陽の次に”明るい」と説明される。
決して太陽と同等ではない。
そもそも”しょうれん”の呼び名も気に食わない。
なんで”しょう”のが先なんや?”れんしょう”…うん、確かに響きが悪い感じはするけども!
いつ頃からか俺の中には、周りの連中と同じように純粋に紫耀に惹かれる気持ちと、どうしようもなく紫耀に感じてしまう焦りや嫉妬のような感情が渦巻いていた。
だけど、あいつはそう簡単に超えられるような男じゃなかった。
俺はいつまでたっても、”ただ紫耀の隣にいるだけの人間”やった。
そして、2年の夏、彼女の登場により俺の紫耀へのこの複雑な感情は、もっと大きくなっていくこととなった。
俺は人生で最大級の恋をした。
だけど、ずっと気持ちを伝え続けてきた俺より、ただ友達としてそばにいた紫耀のほうが格段に彼女との距離を縮めていった。
紫耀が放つ天性の輝きと吸引力には、どう抗ったって勝てるはずもなかった。
相対すMoon & Sun
廉「遅かったやん?」
物音で気づいたのか、部屋に帰ってきたら隣の部屋のドアが開いて廉が顔を出した。
廉「そっち行っていい?」
風「うん」
廉「試合、負けたで」
風「うん、いわちから聞いた…。廉、ゴール決めたんやってね?」
廉「でも、風ちゃんスタンドにいなかったけどな?」
風「ごめん…」
やっぱり怒ってるよね…。
廉「何で行ったん?約束したやん?俺の事だけ応援するって」
風「約束守れなかったのは、ごめん…。でも…平野が怪我して、心配やったから。チアの応援は、私が一人抜けたくらいで何も変わらないかなって」
廉「風ちゃんが病院に行ったからって、紫耀の怪我やって何も変わらないやろ?風ちゃんが病院に行ったからって、紫耀の怪我は変わらないけど、風ちゃんが応援席からいなくなったら、俺の中ではめちゃくちゃ大きなことなんやで!」
風「…うん、ごめん。そうだよね…最後の試合やったのに。約束してたのに。本当にごめん。どうしたら許してくれるん?」
廉「だったら、今日こそええやろ?本当に俺のことだけを好きって、証拠見せてや?」
ドサッ。
廉に押し倒された。
廉が両肩を掴んで、真剣な眼差しで見つめる。
いつものふざけた感じじゃない。
両肩をつかむ力でそれが伝わる。
平野が怪我をしたのを見て、いてもたってもいられなくなって病院に行ってしまったのは本当だけど、でもそれは平野だからというわけやない。
ただ怪我をしたのが心配だっただけ。
私が好きなのは廉だけ。
だから、これを拒む理由は無い。
そっと目を閉じる…。
だけど一向に廉の体が近づいてくる気配はなかった。そっと目を開けてみる。
廉「なんで…なんで今日に限って拒まんのや?」
え…?
廉「隣に紫耀がおらんから?」
そ、そんなこと…。
廉「ずっとわかってた。いつもこの部屋で俺がイチャイチャしようとしてる時、風ちゃんが隣の部屋気にしてること。
隣に紫耀がいるときは、なるべくそういう雰囲気になるのを避けようとしてたやんな?」
風「そんなことないよ…!」
廉「結局俺にチャンスが回ってくるのは、紫耀がいない時だけ。ずっとそうやった。あいつが居る限り、ずっと俺は2番手や!欲しいものは手に入らないのや!」
風「廉?どうしたの?何言ってるの?」
試合が終わって、みんなでロッカールームでひとしきり泣いて、荷物をまとめてバスに乗ろうとした時、ふみふみが猛然と走ってきた。
そういえばさっきロッカールームを出て行ってから、しばらく姿を見せていなかった。
河合「永瀬!永瀬!」
試合に負けて俺たちの3年間が終わったと言うのに、なぜだかふみふみの表情は喜びに満ちていた。
河合「まだ正式じゃないぞ!?期待しすぎるなよ!?でも打診があったんだ!なんとさっきの試合、イタリアのチームの関係者が視察に来ていたらしくてな。お前のプレーが目に止まったって!練習生としてチームに迎えたいから、今度正式に練習を見に来るって言うんだ!イタリアだぞ?!海外のチームでプレイできるかもしれないんだぞ!?」
突然の話に、何が何だかわからなかった。
廉「ちょ、ちょっと待ってやふみふみ、全然話が見えへんのやけど…。なんでそんなチームの関係者が、うちの試合を見に来てたんすか?」
するとふみふみはちょっと言いづらそうに口ごもった。
河合「えーと…まぁ最初はな、平野に目をつけていたようなんだがな。今回の試合で平野が良いプレイを見せれば、平野をスカウトするつもりだったらしい。だけどあんなことになってしまって…。しかしその分、平野がいなくなってからのお前のプレイは確かに光ってた!それで目に止まったらしい!スポーツの世界では、運をつかむのも実力のうちだ!平野に遠慮することなんてない!これはお前がつかんだチャンスだ!」
廉「そう…ですか」
またか。
紫耀がいなくなったから転がり込んできたチャンス。もし紫耀があそこで怪我をしなかったら、俺に光が当たる事はなかったんやろう?
紫耀がいたら、俺はいつだって二番手だ。
だけど紫耀がいなければ、そもそもうちの試合を見に来てもらえなかった。
つまり紫耀がいなければ、俺は光を当ててもらうこともできない。
そうさ、だって俺は自分では輝けない月だから。太陽に照らされなければ、暗闇の中で気づいてももらえない。
入学時、クラスの輪の中に俺を引っ張りこんでくれた紫耀。
どうしようもなく大好きで、だけど腹立たしくなるほど羨ましくて、それなのにとてつもなくかけがえのない存在。
紫耀がいなければ、俺は…。
月は太陽がなくちゃ、自分の存在を知ってもらうこともできない。
そのくせ太陽と同じ時間に空に登れば、太陽がまぶしすぎて月は真っ白になってほとんど見えなくなってしまう。
だけど君は、君だけは、紫耀と一緒にいるこの世界で、”俺を選ぶ”と言ってくれた。
紫耀を目の前にして「廉が大切」と言ってくれた。
だから俺は…
廉「もう別れよか?」
風「…!?なんで?なんでそんなこと言うん?私が平野の病院に行ったから?廉の試合を最後まで応援しなかったから?でもそれは、平野じゃなくたって、もちろん怪我したのが廉だって病院に行ってたよ?海ちゃんだってジンくんだって同じだよ?」
廉「ちゃうねん。俺さ、風ちゃんを好きや言うてたの、紫耀が狙ってる女やから、横取りしてやりたかっただけやねん」
最初から決めていた。
廉「俺は、紫耀に勝ちたかっただけや。別にどうしても風ちゃんじゃなきゃだめやったってわけや無い」
風ちゃんを解放してあげる時は、俺がめちゃくちゃ嫌な奴になろうと。
そうすれば風ちゃんは、自分を責めることなく紫耀のところに行けるだろう。
風「だって、ずっと私のことを探してくれてたってゆうたやん?ずっとそばにいるって約束したやん?」
廉「それはほんまやけどな。でも会わないうちに記憶が美化されすぎてたんやな。実際付き合ってみたら、そうでもなかったって気づいたわ」
逆や。
記憶の中で膨らんでいた理想をもっと超えるくらいに、再会してからどんどん風ちゃんのことを好きになった。
「ずっとそばにいる。ずっと味方でいる」
この約束は、これからも俺がこっそり一方的に果たすから。
風ちゃんはそんな約束に縛られなくてええんやで?
風「ひどいよ…ひどいよ廉…!」
俺を選ぼうとしてくれた、心から大切で大好きな女の子に、負い目を背負わせたくないから。
廉「じゃ、俺、部屋帰るわ」
風「廉…っ!!」
ごめんな、泣かせないって約束したのに。最後だけ約束守れんかったな。
風ちゃんが紫耀に俺を選ぶと宣言したときに、本当はわかっていた。
「廉が大切なの」と風ちゃんは言った。「廉が好きなの」とは言わなかった。
風ちゃんが俺のことを大切に思っていてくれたのは嘘じゃないってわかってる。
だけど、どうしようもなく”好き”なのは、紫耀なんやろうなって。
だけど風ちゃんは俺を選ぼうとしてくれた。それだけで嬉しかった。
だからあの時、俺は風ちゃんを解放してあげなきゃいけないって思ったんや。
だけどここまで引き伸ばしてしまったのは…単なる俺の未練。
もう少しだけ、もう少しだけ…。魔法が解けないでほしいと、願ってしまった。
だけど今日、グランドから風ちゃんのいないスタンドを見て、「あー、ついに完全に魔法が解けたんや…」って思った。
三日月を満月に変えて、始まった風ちゃんとの時間。
最初からズルしてかけたこの魔法は、そう長くはもたないと覚悟してた。
だけど君が名前を呼んでくれるたびに、本当に幸せで…。
もし、君が魔法から目を覚まし、全て忘れてしまっても
それでも君と過ごした幸せな時間は、確かにここにあったんだ。
そして魔法が解けても、俺はずっと君のことを守り続けるよ。
自分の部屋に戻って窓から夜空を見上げたら、満月が昇っていた。
廉「これで、ええんや」
是が非でも手に入れたかったもの、それを自ら手放したのに、なぜか心は晴れていた。
大好き子にずっと嘘をつかせて自分のそばに縛り付けておくよりも、背中を押してあげられるほうがよっぽど愛や。
強い光を放ち君を引き付ける太陽にはなれなかった。
だけど、優しい光で包み込み、君の背中をそっと見守る月になる。
それが俺の選んだ生き方や。
ありさ「風!わっ顔ヤバすぎ…!本当…なんだね…?廉と別れたって」
昨日泣きすぎて、目が腫れていた。
朝学校に行くと、クラス中のみんながそのことを知っていた。
風「どうして知ってるの?」
ありさ「そ、それは…廉が自分で言ってんの…“もう飽きたから別れた“って」
昨日は、悪い夢でも見たのかなと思った。でも夢じゃないんやね、やっぱり。
昨日言われたことがまた蘇ってきて、ポロポロと涙が出てくる。
ありさ「風~…。廉のやつ、信じらんない!今まで適当な恋愛してきたと思ってたけど、風の事だけは本気だと思ってたのに…!ほんと許せないよ!」
「舞川さん、大丈夫?」
「れんれん、ちょっとひどいよね」
廉のファンだった子も、泣きすぎてすごい不細工になっている私の顔を見て、同情してくれた。
岩橋「それ、まさか真に受けたわけじゃないよね?」
風「え?どういうこと?」
いわちが「はぁ~~~」と大げさなため息をつく。
岩橋「もともとさぁ、風ちゃんと紫耀先輩がいい感じで、付き合ってるんじゃないの?って思ってた人も多いわけ!だけどその予想を裏切って、廉先輩と付き合い始めたわけじゃん?
だけど昨日の試合の時、風ちゃんは紫耀先輩を心配して病院に行ったよね?それでその翌日に廉先輩と風ちゃんが別れたってなったら、普通に考えて風ちゃんが紫耀先輩を取ったから、廉先輩と別れたんだって思うよね?
そしたら廉先輩を好きだった女子たちはどう思う!?」
畳みかけるように言われ、ハッとする。
岩橋「みんな廉先輩の幸せを願って涙を飲んだわけ!それなのに風ちゃんは紫耀先輩と廉先輩の間でフラフラして、結果、廉先輩がふられたってことだよ!?そんなの周りの女子が許せると思う!?
この状況、風ちゃん、もう一回いじめられてたっておかしくなかったんだよ!?
だけど実際は、風ちゃんが廉先輩に弄ばれて捨てられたって話になって、風ちゃんに同情的な流れになってるじゃん?それって、廉先輩が自分で“俺が飽きたからふった“って言いふらしてるからだよね!?
その廉先輩の行動の意味が本当にわからないの!?」
もしかして、廉はわざと自分が悪者になった…?
岩橋「前から言いたかったんだけどさ、風ちゃんは鈍感通り越してる!みんなにいい人でいようとして、結局みんなを傷つけてるんだよ!」
いわちは怒って行ってしまった。
みんなを傷つけてる…。
私、どれだけ廉を傷つけたんだろう。
「舞川せーんぱい」
優しい声に振り向くと、隣にジンくんが座ってきた。
神宮寺「玄樹がものすごい顔して走ってきたから、捕まえて事情聞きました」
風「そっか…いわち、そんな怒ってたんや」
神宮寺「泣いてましたよ」
風「えっ!?」
神宮寺「玄樹って、けっこう完璧主義なところあって。舞川先輩が紫耀先輩と廉先輩の間で揺れてるの、やきもきしてたんですよね。」
そうだよね。
「大切な人はそう何人もいないはず」って、いわちはもともと助言してくれてたのに…。
神宮寺「でも、それって、結果風先輩が周りからまたいじめられたりしないかって、心配してたからなんですよ。心配し過ぎて、”もっとちゃんとして!”って怒りたくなっちゃうんでしょうね。
あいつがあんなふうに泣いて怒ったりするの、俺にしかやらないはずなのに。舞川先輩には相当心開いてるんですね?ちょっと妬けちゃうな」
風「あはは、そこヤキモチやくとこ?」
ジンくんは、何か覚悟を決めるようにふぅっと深呼吸をした。
神宮寺「俺はね、玄樹のことが好きなんです」
はっ!?(=゚Д゚=)
風「え…なに?どうしたん急に?2人が仲良いのはみんな知ってるけど?」
神宮寺「好きっていうのは、友達としてじゃなくて、恋愛感情としてです。知ってました?」
い、いや~、そんなニコニコ爽やかな笑顔で際どい質問を…(;・∀・)
風「う、う~ん…。正直、2人は怪しいなーって思ってたけど、そこは深く聞いちゃいけないものかと…」
神宮寺「たぶん玄樹もそう思ってます。お互いに友達以上の距離感かなって思う時あるけど、友達以上のことしてるわけしゃないから」
じ、実はそこが気になってた。
いわちとジンくんは同部屋。もう1年以上、毎晩同じ部屋に寝てて、何かヤバいことって起こらないんだろうか?って。
廉と付き合ったせいで、そんなエロい妄想をするようになってしまった…。めっちゃ悪影響受けてるやん(。>﹏<。)
でも、やっぱ”そういうこと”はしてないんや。
私の頭がおかしくなってただけか。ε-(´∀`;)ホッ
神宮寺「したいんです本当は。キスしたり、押し倒したり」
ギャフッ(+д+)!!したいんかーい!!(;・∀・)
神宮寺「でも今までそうして来なかったのは、僕が臆病だったからなんです。玄樹に拒絶されたら、もう今までみたいに仲良く友達ですらいられないって」
その気持ちはすっごくわかる。
でも、
風「どうしてそんな話を私に?」
なんで急にジンくんの恋愛相談になってるんやっけ?
ジンくんはいつもみんなに気遣い上手で声かけてるけど、あんまり自分のことって話さない。
それにKing&Princeの中で、私は一番ジンくんと話す機会って少なかった。
こんな大切な話を急に私にしてくるなんて、どうして…。
神宮寺「はぁ~っ!言っちゃった!誰にも言ってなかったのに!
俺が玄樹を好きだって気持ち伝えるのに比べたら、舞川先輩が紫耀先輩に気持ち伝えるのに、何か障害なんてあります?」
すごく当たり前のことを言うみたいに、にっこり貴公子スマイルを向ける。
あ、そういうこと…。
ジンくんは私の背中を押そうとしてくれてるんや。
そのために、いわち本人にもまだ伝えてない自分の秘密まで打ち明けてくれたんや。
神宮寺「舞川先輩は廉先輩の気持ちに本気で応えようとしたんだと思いますけど、それは優しさじゃないです。今、舞川先輩がすべきことは、自分の気持ちをごまかさないことです。
って、玄樹は言いたかったんじゃないかな?」
ジンくん、いわち、ちゃんと叱ってくれてありがとう。
私、もう自分の気持ちに嘘はつかない…!
だけど私には、その前にちゃんと伝えなきゃいけない人がいる。
ありさ「え…じゃあ結局、風が平野を忘れられなかったから、廉が身を引いたってこと?じゃあなんで廉は”風に飽きたから捨てた”なんて嘘つく必要があったわけ?」
風「それは…たぶん自分が悪者になってくれようとしたんやと思う…」
ありさ「は?なにそれ?”私、廉に守られてます”って自慢?マジありえないんだけど」
ありさは吐き捨てるように言って、去っていった。
やっぱり、そうなるよね。
でも、そうなるとわかっていても、言わなきゃいけないって思った。
廉が誤解されたまま、わたしだけがぬくぬくと守られているのはダメだって思った。
特に廉を好きだと思っていた人に、廉の人柄が誤解されているのは、絶対に嫌だと思った。
別に許してもらおうと思って話したわけじゃない。
だけど、ありさの遠ざかっていく後ろ姿を見て、涙がツーっと流れる。
唯一できた、女の子の親友だって勝手に思ってた。
だけど、それを失ったのは、まぎれもなく私の行動が原因。
自分も廉を好きだったのに、私と廉を応援すると言ってくれたありさ。
それは廉を想うからこそ。
それなのに、私は廉を傷つけた。
いつも私が一人涙するときには、手を差し伸べてくれた廉。
でも、廉はもういない。
私が自分で手放したんだ。
私の優柔不断のせいで、色んな人を傷つけた。
私、間違ってた。
どうしてもっと自分の本当の気持ち、貫かなかったんだろう。
どんなに後悔しても、今さらもう元には戻れない。
私はいつもそばにいて守ってくれた大切な存在も、
初めてできた親友も、
自分のこの手で傷つけ、手放してしまった。
「1度傷つけて壊してしまったものは、もう元通りには治らない。最初から大切にしておけばよかったんだ」
廉がジェシーに言った言葉が、今重くのしかかっていた。
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