「夏梅は腹が立たないのか?」
「それほど」
「どうして?」
「僕には関係ない、というか……」
「夏梅のように政治に無関心な者が多いから、悪い政治家がはびこるんだ」
「そうかもね」
「そうかもねって……。やつらは自分の欲望のために平気で他人を犠牲にできる連中だ。夏梅は自分の人生がやつらに食い物にされてもいいというのか?」
そういう連中を悪徳政治家というなら、君には間違いなくその素質があると思った。もちろん口にはしない。
「私は誰にも私の人生を食い物にされたくない!」
でも君はリクという男に思い切り食い物にされたんだよね?
もちろんそれも口にはしない。
「私はフェミニストだ。女だからという理由で不利益を被ることがあってはならないと考える。夏梅はそれをどう思う?」
「君が選んだ生き方だから尊重するよ」
「そうじゃない。私がフェミニストである以上、私の恋人である夏梅もフェミニストにならなければならない、ということを言ってるんだ」
「分かった」
リクという男はフェミニストだったの? などとよけいなことは言わない。
僕はクラゲ。もともと自分というものがなく、今はもう彼女に逆らえない立場になったから分かったと答えただけだけど、彼女は満足そうな表情。
「でも僕はフェミニズムにそれほど詳しくないよ」
「それは大丈夫。場面場面でフェミニストならこうするものだと私が教えるから」
かなり面倒くさそうな提案にも思えたが、よろしくお願いしますと素直に頭を下げた。
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