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[敦side]
ピピピピ ピピピピ
朝6時30分。
目覚ましの音で目を覚ます。
…なにか変な夢を見たような。
オサム…?カメン…?
思い出そうとしても思い出せない。
だけど真っ暗な部屋で誰かと話をしていたことだけは覚えている。
でも、ただの夢だろう。と思い、いつも通り起きて着替えて歯を磨く。
今日は鏡花ちゃんは早朝から任務でいない。
朝出る前に用意していてくれただろう朝食を食べて丁度7時30分になっていた。
出社時間は8時だ。残り30分もある。
社員寮から探偵社は距離が近いから数分で着く。
30分家にいてもやることがないのでとりあえず探偵社へ向かう。
しっかり鍵を閉めて家を出る。
この季節のこの時間はまだ少し肌寒い。だからといって厚着をすると昼になって汗をかく。
難しい季節だ。
そんなことを考えながら歩みを進めているとあっという間に探偵社に着いた。
探偵社の鍵を開けて中に入る。
まだ誰もいない。
当たり前だ。出社時間まであと24分もある。
少しでも早く仕事を終わらせようと思い椅子に座りパソコンを開く。
カタカタカタカタ
静かな部屋に僕がキーボードを打つ音だけが響く。
暫く仕事をしているとドアの開く音がする。
国木田さんだ。
「おはようございます!!」
元気よく国木田さんに挨拶をする。国木田さんは挨拶を返してすぐにパソコンを開く。
出社時間まで残り10分。
まだ2人しか居ないけど大丈夫なのだろうか。
今日は鏡花ちゃんと賢治くんと谷崎さんとナオミさんと社長は不在だ。
探偵社はだいぶ静かになりそうだが太宰さんが出社してきたら騒がしくなるからそこら辺は心配ない。
なぜだか、今日は朝から胸がモヤモヤする。
あの夢のせいだろうか。
オサム。カメン。あとは…ダザイ…?
「うっっ…」
急に頭が殴られたように痛くなり声を出してしまった。
「どうした?体調でも悪いか?」
国木田さんが僕に気が付き声をかけてくれた。が、心配はかけたくないので大丈夫です。とはぐらかす。
何かあったら言えよ。と優しく声をかけてくれる。良い上司を持ったな。としみじみ感じる。
あ、そんなことを考えてる暇は無い。今はこのモヤモヤをどうにかしないと集中できない。
太宰さんがなにか関係があるのだろうか。それに、助けて。と言っていたような気もする。
ふと、ひとつのセリフを思い出す。
ー僕はダザイのなかにいるコドモ?なの!
太宰さんの中にいる子供…そしてもうひとつ気になるのが、カメンという言葉。
ーいつもダザイはカメンをつけて笑ってる。
そこでふとひとつの事が思いついた。
オサムという子供は太宰さんの中にいる子供。つまり、太宰さんが仮面をつけて隠している人格なのでは無いだろうか。
僕はそこまで頭が良くないのでここまでしか仮説を立てられないがだいぶ近付けたのではないだろうか。
いつもヘラヘラ笑って自殺をしている太宰さんが助けを求めている…?確かに、僕たちは太宰さんのことを知っているようで何も知らない。ポートマフィアを抜けた理由は?ポートマフィアに入る前は?ポートマフィアになぜ入った?包帯の下は?なぜ死にたい?一瞬考えるだけで沢山の太宰さんへの疑問が浮かんでくる。僕は太宰さんの表面上のことしかしらない。
いつも太宰さんが行っている墓で浮かべる悲しいような、今にも消えてしまいそうな笑顔の正体とか、
空を眺めているハイライトのない目とか、
知りたい。
太宰さんの仮面の下を、秘密を全て知りたい。
ーもう時間がないの。
時間が無い?
ーだけどいつか、そのカメンが顔に張り付いちゃうかもしれないの…
張り付いちゃう…?
どんどん疑問が浮かんでくる。
……これは誰にも頼らないで僕一人だけで解決しよう。
僕の恩人のために。
僕の事を助けてくれた恩師のために。
いつも情けないけれど、仕事をしないけれど、それでも太宰さんのことを僕は大好きだ。
太宰さんが救われる世界。
僕も、太宰さんも救われる世界。
僕一人で作ってみせる。
ーふふ、やっぱりアツシは頼もしいな…期待してるよ。
「残り1週間」
第1話〜決意〜