テラーノベル
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季節はあっと言う間に夏になり、俺たちは長い夏休みに突入した。
若井はサッカー部が人手が足りないからと誘われて練習で忙しそうだった。
俺は作曲に忙しく、ほとんど部屋に籠もって曜日感覚もなくなって没頭している毎日だった。
そんな中でも若井はよく部活帰りなど俺の家に寄ってくれる。
「今日もめちゃくちゃ暑かった···」
「そうなの?」
「元貴マジで一歩も外出てない感じ?」
「まぁ、そんな感じ。若井も疲れてるなら来てくれなくてもいいのに」
嬉しいけど、無理させるのはいやだ。
「俺が来なかったら宿題もせず、ずうーっと音楽だろ、困るのは元貴くんだよ」
「まぁそうだけど···」
「それに、俺が元貴に会いたいからいいの」
突然そんなこと言われると、上手く返事が出来ずに少し困る、若井のストレートな言葉はいつも俺をドキドキさせる。
そのあとは2人とも真面目に今日の分の課題を済ませて、帰る時間が来たので外まで見送ることにした。
もう暗くなっているのに外に出ると汗がすぐ出るくらいまだ暑い。
「暑い、けどなんか好きかも夏の夜」
「わかる、花火したくならない?また今度しよ」
「したい!するなら海とかかな」
「海で思い出した、海、一緒にいかない?クラスの奴らと行こうって話になってて」
「俺、泳げないよ」
「浮き輪もっていくよ、見てるだけでもいいし。元貴がいた方が絶対楽しい」
だからズルいんだって。
そんなこと好きな人に言われたら断れないんだから。
「若井がそう言うなら、行く」
「じゃ、今週日曜ね、約束!」
若井はとびきりの笑顔で自分の小指で俺の小指を絡ませると、ゆーびきりげんまん、と歌って自転車に乗って手を降って颯爽と帰って行った。
若井が見えなくなると俺はその場にへたり込んでしまった。
あいつの行動も言動も全部が心に刺さって痛いくらいだ。
苦しくて嬉しくて若井の事ばっかり気づけば考えてて。
海も花火も若井と過ごせることを考えると暑くて仕方ない夏も好きになれる気がした。
コメント
5件
面白い!続きが気になるなぁ。