玲央は森の中を静かに移動しながら、思考を巡らせていた。
スタンリーをうまく撒いたものの、このままではいずれ捕まるのは時間の問題だ。
(……さて、どうするかねぇ。)
周囲を見渡すと、木々の間からぼんやりと月明かりが差し込んでいる。
風が吹き、葉がざわめいた。
(夜のうちにできるだけ距離を取るのが得策だけど……)
スタンリーが単独で動いているとは限らない。
もし部隊が動いていたら、適当に逃げるだけでは追い詰められる。
(……なら、”あえて”気配を消して待つのもアリか。)
玲央は木の根元に身を潜め、じっと耳を澄ませた。
遠くで、かすかな足音。
(……やっぱり来てるねぇ。)
スタンリーだけじゃない。少なくとも、もう数人はいる。
(そうなると、森の奥まで逃げ込むのは危険だ。)
玲央は目を閉じ、一つの決断を下す。
(……よし。こっちから仕掛ける。)
彼はゆっくりと立ち上がると、落ちていた小枝を手に取り、慎重に歩き出した。
わざと別の方向に枝を折りながら移動することで、自分の進行方向を錯乱させる。
(追跡の基本は足跡と音……なら、こっちのリズムを狂わせてやればいい。)
カサッ——
音がすると、スタンリーの部隊がそちらへと注意を向けるのがわかった。
(……よし、いい感じ。)
玲央は音のズレを作りながら、少しずつ別のルートへと移動していく。
(これでしばらくは時間を稼げるねぇ。)
玲央は慎重に移動を続けながら、逃げ道を探していた。
(とりあえず……どこかで隠れられる場所を見つけないとねぇ。)
だが、そのとき——
パァン!!
鋭い銃声が響いた。
玲央は反射的に木の影に飛び込む。
(……くそ、もう見つかったか?!)
木の間から様子を伺うと、スタンリーが銃を構え、まっすぐこちらを見ていた。
「さすがに、お前の動きも読めてきたぞ。」
玲央は舌打ちをした。
(……そろそろ決めないといけないねぇ。)
逃げるか、戦うか——
どちらにせよ、次の一手が生死を分けることになる。
玲央は静かに息を整えた。
(……こっちも”本気” を出すしかねぇな。)
夜の森に、緊張が張り詰める。
次の瞬間——玲央が一気に動き出した。
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