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朝。
詩夏は、制服に袖を通しながら、昨夜の夢を思い出していた。
地下室。
焦げた床。
骨。
『……夢、だよね』
そう言い聞かせても、胸の奥のざわつきは消えなかった。
机の引き出しを開ける。
古い書類の束。
『……』
両親が亡くなった――
いや、行方不明になったと聞かされた日の書類。
詩夏は、一枚ずつめくる。
『……住所』
そこに書かれていたのは、
今は住んでいない、昔の家の住所だった。
『……この家』
なぜか、
地下室があると分かってしまう。
理由は分からない。
でも、確信だけがあった。
学校。
『詩夏、今日なんか静かじゃない?』
琴音が、机に肘をついて覗き込む。
『……ねえ、琴音』
詩夏は小さな声で言った。
『私、前に住んでた家、覚えてる?』
『え?』
『……どんな家だったか』
琴音は首をかしげる。
『うーん……』
『大きかった気はするけど』
『中は……あんま覚えてないな』
『……地下室とか』
その言葉に、琴音の動きが止まった。
『……地下室?』
『……あった?』
『……分かんない』
琴音は眉をひそめる。
『でもさ』
『なんか……聞いたことある気はする』
詩夏の心臓が、跳ねた。
『……本当に?』
『うん』
琴音は笑った。
『夢かもだけどね』
その瞬間。
『……夢』
詩夏の頭に、嫌な予感が走る。
昼休み。
詩夏は、図書室に向かった。
『……昔の、住宅地図』
司書に頼み、
当時の地図を出してもらう。
『……あった』
確かに、
その場所に家は存在していた。
『……地下』
間取り図を指でなぞる。
――地下倉庫。
小さく、そう書いてあった。
『……』
背中に、冷たい汗が流れる。
(……夢じゃない)
放課後。
詩夏と琴音は、
その住所へ向かっていた。
『……今は、空き家らしいよ』
琴音がスマホを見ながら言う。
『不動産サイトに載ってた』
『……行ってみよう』
詩夏は、即答した。
家は、
想像よりも静かだった。
『……』
フェンス越しに見る、古い屋敷。
『……なんか』
琴音が小声で言う。
『近づきたくない』
詩夏も、同じ気持ちだった。
玄関は、封鎖されている。
『……回ろう』
裏へ回る。
庭は荒れ、
雑草が伸び放題。
その時。
『……あれ』
琴音が足を止めた。
『……ここ』
『……何か、変じゃない?』
詩夏は、地面を見た。
土が、
不自然に盛り上がっている。
『……』
無意識に、
そこを避けて歩く。
胸が、痛む。
『……行こう』
これ以上、
近づいてはいけない気がした。
その瞬間。
空気が、歪んだ。
『……来る』
詩夏が言う。
悪者が、姿を現す。
『……っ』
戦闘が始まる。
琴音が火を放ち、
詩夏が氷で動きを止める。
連携は、完璧だった。
――はずなのに。
『……っ!?』
詩夏の視界が、一瞬暗転した。
地下室。
焦げ跡。
骨。
『……やめて……』
手が、止まる。
『詩夏!?』
琴音の声。
間一髪で、悪者が消滅した。
『……大丈夫?』
『……うん』
詩夏は、震える息を整えた。
『……でも』
『確信した』
『……この家』
『私、何かを忘れてる』
琴音は、真剣な顔でうなずいた。
『……一人で抱えんなよ…?』
『一緒に考えよう』
詩夏は、少しだけ救われた気がした。
その頃。
ちなは、屋上でスマホを握っていた。
『……行ったんだ』
位置情報。
『……詩夏』
唇を噛む。
『……
『……でも』
『もう、止められない』
ちなは、静かに目を閉じた。
夜。
詩夏は、布団に入っても眠れなかった。
目を閉じると、
家の裏庭が浮かぶ。
そして。
地面の下に、扉がある
という確信。
『……』
知らないはずなのに。
『……明日』
『……確かめよう』
小さく、そう呟いた。
思い出せない家
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