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この作品はフィクションです。
実在する人物・団体とは一切の関係はございません。
こちらはnmmn、二次創作です。nmmn、kgm受け、他にもmbkg、rfkgなどのタグの意味がわからない方は閲覧をお控えください。
また、作品閲覧する際は公共の場を避けてください。拡散、保存するような行為もご遠慮ください。
全ての配信や動画、ボイスを終えているわけではありませんので、口調や性格の解釈違い等が多く発生する可能性がございます。
・rfkg
・kgm監禁
・rfがkgmに対して冷たい
・kgmが可哀想
・めちゃくちゃド捏造展開
これでもOK!という方のみどうぞ!
あの日、あの冷え切った打ち合わせが終わってからの数日間、加賀美ハヤトは常に喉の奥に小さな棘が刺さっているような、得体の知れない違和感を抱えながら過ごしていた。
もちろん、その間も仕事が滞ることはない。
個人での生配信では、画面の向こうのリスナーに向けていつも通りのハツラツとした、丁寧な「加賀美ハヤト」を届けた。
コメント欄と楽しげに掛け合い、ゲームに熱中し、大好きな玩具や音楽について熱弁を振るう。
配信中の彼はどこからどう見ても完璧なエンターテイナーであり、リスナーも何一つ異変には気づいていないようだった。
しかし、配信の終了ボタンを押し、防音室の明かりを消した瞬間、どっと押し寄せるのはあの会議室の記憶。
剣持の、視線すら合わせない無感情な声。
不破の、突き放すような低いトーン。
甲斐田の、機械的で事務的なあの態度。
(……やはり、私の気のせいだったのでしょうか)
スマートフォンの画面を開き、ROF-MAOのグループチャットを見返してみても、業務連絡のテキストが淡々と並んでいるだけだ。
以前のように、誰かの何気ない一言からスタンプの応酬が始まるような、くだらない雑談のログはここ数日、完全に途絶えていた。
皆、忙しいのだ。
新生活の時期でもあり、個人の案件も立て込んでいる。
だから一時的に心の余裕をなくしているだけだ――そう自分に言い聞かせ、無理やり納得しようとした。
そして、数日後。
ついにやってきた、ROF-MAOの番組収録の日。
加賀美はいつものように、ビシッと着こなしたスーツの襟を正し、少し早めの時間ににじさんじの事務所へと足を運んだ。
前回の打ち合わせでの冷たい空気は、きっと今日になれば綺麗さっぱり消えているはずだ。
過酷なロケや無茶振りを何度も共に乗り越えてきた彼らだ、今日スタジオに入れば、
「いやぁ社長、こないだはちょっとみんな寝不足でピリついててすみません!」
と、誰かが笑って肩を叩いてくれる。
そんな楽観的な希望を、ほんの少しだけ胸に抱いていた。
だが、事務所の自動ドアをくぐった瞬間。
加賀美の淡い期待は、冷や水を浴びせられたかのように、一瞬で凍りついた。
(……おかしい)
一歩足を踏み入れただけで分かった。
事務所全体の空気が、明らかに奇妙なのだ。
いつもなら、入り口付近のロビーにはライバーやスタッフの笑い声が響き、和気あいあいとした活気に満ちているはずだった。
しかし今日に限っては、まるで重苦しい霧でも立ち込めているかのように、全体のトーンが一段階も二段階も沈んでいる。
誰もが小さな声でボソボソと話し、どこか周囲を窺うような、ピリピリとした緊張感が空間を支配していた。
加賀美が通路を進むと、向こうから見知った後輩ライバーの姿が見えた。
いつもなら加賀美を見つけた瞬間に目を輝かせ、嬉々として駆け寄ってくる、あの懐っこい後輩だ。
「あ、お疲れ様で――」
加賀美がいつも通りの柔らかな笑みを浮かべ、挨拶を交わそうと言葉を紡ぎかけた、その時だった。
「……ッ、あ、加賀美先輩。お疲れ様、です」
後輩は加賀美の姿を視界に捉えた瞬間、まるで見てはいけないものを見てしまったかのように、目に見えて身体を強張らせた。
その表情には、いつもの人懐っこい笑顔のカケラもない。
怯え、あるいは嫌悪したような歪な表情で、辛うじて挨拶を絞り出す。
「すみません、これから収録があるので、失礼します!」
加賀美がまた声を発するより早く、まるで何かから逃げ出すかのように、足早にその場を去ってしまった。
背中を向けて遠ざかっていく後輩の足音を見送る。
加賀美の手は、宙に浮いたまま止まっていた。
胸を突くような、奇妙な焦燥感。
(今のは……一体、何だったのでしょう)
それだけではなかった。
さらに奥の廊下へと進むと、今度はいつも親しくしている番組スタッフが数人、資料を片手に深刻そうな顔で話し込んでいた。
加賀美の歩み寄る靴音に気づき、彼らが一斉にこちらを振り返る。
「皆さん、お疲れ様です。今日の収録、よろしくお願いいたし――」
「あ、加賀美さん。お疲れ様です……。あ、ええと、ちょっと今から別のスタジオの機材チェックに行かないといけなくて! すみません!」
「私も、上司に書類を届けに行かないと……失礼します!」
スタッフたちは、加賀美とまともに視線を合わせようともしなかった。
彼らの瞳には、明らかな「動揺」の色が浮かんでいる。
加賀美が近づくのを拒むように、一歩、また一歩と後ずさり、軽い会釈だけを残して、四方に散るようにその場から立ち去っていった。
まるで、関わること自体を恐れているかのような、あからさまな回避行動。
誰も、加賀美の前に留まろうとしない。
通りすがるライバーも、顔見知りのデスクスタッフも、加賀美の姿を認めると、一瞬だけ息を呑み、最低限の挨拶だけを済ませて、腫れ物に触るようにすれ違っていく。
廊下に、加賀美ハヤトという一人の男だけが、ぽつんと取り残される。
いつもなら、彼を中心に自然と人の輪ができるはずのこの場所で、今や彼の周囲だけがぽっかりと空白の地帯になっていた。
すれ違う人々の、背中に突き刺さるような視線。
直接見ようとはしないものの、陰から様子を窺うような、好奇と、同情と、そして畏怖が混ざり合ったような、冷たい視線の群れ。
(私を……避けている?)
確信に変わった瞬間、心臓がドクンと嫌な音を立てた。
数日前の打ち合わせでの、ROF-MAOの3人の冷たい態度。
それは決して、彼らの寝不足や疲労といった、一時的な体調不良のせいなどではなかったのだ。
この事務所全体を包み込む異様な空気。
自分を避けていく仲間たちやスタッフ。
すべては、繋がっている。
自分の知らないところで、何かが決定的に動いている。
それも、加賀美ハヤトという存在を、この温かいコミュニティから完全に切り離そうとするかのような、巨大で不可解な何かが。
自分が何か決定的な過ちを犯したのか。 それとも、自分が知らないうちに、なにかトラブルに巻き込まれているのか。
加賀美は深く息を吸い込み、乱れそうになる呼吸を整えた。
背筋を伸ばし、顔を上げる。
ここで取り乱しては、それこそ加賀美ハヤトの名が廃る。
どんな状況であれ、今日の仕事はROF-MAOの収録だ。
スタジオに行けば、あの3人が待っている。
この異常な空気の理由が何であれ、彼らと対峙すれば、何かが分かるはずだ。
一歩、また一歩と、誰もいなくなった冷たい廊下を進む。
いつもはあれほど近くに感じられたスタジオの重い扉が、今日に限っては、まるで底知れぬ深淵の入り口のように、加賀美の前に立ちはだかっていた。
次話 冷たい視線