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相棒に嫉妬心は産まれるか
「「産まれない」」
「なんで?」
クロウハウザーが頬杖をつきながら尋ねる。なんでって言われても…ニックと顔を見合わせる。
「あのね、私達は警察官なのよ。市民を守る私達が、相方が誰と組むかで気を揉んでる暇なんてない」
はっきりとそう伝えると、クロウハウザーは納得していない様子だった。
「ジュディは見栄っ張りだし、そう言うかもしれないけど。でもさ、ああ、ニック〜…君は違う答えを聞かせてくれると思ってたのに」
唇を尖らせてみせるクロウに、ニックは信じられないといったように笑った
「ハッ。俺が、嫉妬?この小さなうさぎちゃんに?冗談はよしてくれよ、クロウハウザー」
ニックは私の頭の上に手を乗せて、バカにしたように体重を乗せてきた。その仕草が、からかい以上の何かに見えて、無性に腹が立ったから、うさぎには脚力があるってことを、思い出させてやった。私のキックを喰らった愚かなキツネは、足元でのたうちまわり、
クロウハウザーはそんな彼に「大丈夫?〜」と声をかけた。
「…こんな、調子だから、この跳ねっ返りの相手が出来るのなんて、俺くらいだろ?」
脇腹を抑えながら立ち上がった彼に、私は反論する。
「どうかしら?最近入ってきた新人の中には、私に憧れて入隊した子も多いって聞くし、私と組みたい子だって、いるかもしれないわよ?」
ふふんと得意気に鼻を鳴らしてみせたが、ニックはてんで信じていない様子だった。詐欺師のように、身振り手振り話す。
「それはどうかな?そいつらは新聞のヒーローを見て、憧れを胸に警察になってる。計画的で、さぞ頼りになるイメージを、君に持ってるんだろう。それが実物はどうだ?手柄を立てるのよ!すぐに捕まえましょう!上司の指示なんて待てないわ!…まるで暴走機関車だ。理想のイメージだって、すぐに崩れ去るだろうさ…俺が相棒じゃなきゃ務まらない。」
酷い異様に頬をぷーっと膨らむのを感じる。
「言うわね!その行動力に何回も助けられてるのは誰だっけ?」
「その人に伝えておいてくれ、それ以上に何回も巻き込まれておいたわしいってな。」
2人で言い合っていると、クロウハウザーがこう言った。
「きょうも仲良しだね!」
「お前の目は節穴か?」「そうよ!仲良しなの!」
そうこう言っていると、ちょうど昼休みの終わりを知らせるチャイムが鳴ったので、ベストの着崩れを正し、背を伸ばす。
「それじゃあねクロウハウザー、電話にはちゃんと出るのよ」
「行くぞ、にんじん」
「ええ。」
今日も世界をより良くするんだ。言葉では素直じゃないけど、頼りになる相棒もいるし。午後も頑張ろう!
「なんだ、えらくご機嫌だな」
「気合いを入れ直したのよ、やるわ〜!」
警察車両に乗り込み、アクセルを全開に飛び出した。
ーーー
クロウハウザーside
「あらら、さっきまであんなにケンカしてたのに、今じゃ最高のコンビって感じ〜?」
去っていく2人はお互いを信頼し切っているようで、その絆は固く思える。
「伝えなくて良かったのかな…ボゴ所長にはまだ言うなって言われてるけど、やっぱり言っておいた方が良かったんじゃ…」
クロウハウザーの手にした紙には、こう書いてあった。
「シチョウメイレイ ニック ジュディ イチジカイサン」
その文字を見つめながら、クロウハウザーは思った。
あの2人にとって、相棒でいられないことが、どれほどのことなのかを。