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今夜もいつもの待ち合わせ場所、レギオン駐車場の奥で待っているとぐち逸が包帯を巻きながらこちらへ向かって来た。
「ぐち逸怪我してんの!?」
「ちょっと事故りまして。まぁもう出血止まったので平気です、今日は私が運転しますね。」
ケロッとした顔で辺りを見回しながら言うが足を引きずって歩くその姿はどう見ても平気では無い。
「いやいやダメだって、先病院行こ。」
「…病院はちょっと。」
「なんでよ、またなんかイザコザでも起こしたの?」
「なんですかそのいつも揉めてるみたいな言い方。とにかく大丈夫です、早く乗ってください。」
「ねぇちゃんと話聞いて。心配なんだよ、病院が嫌なら個人医の仲間?に連絡取れないの?」
「……じゃあ電話してみます。」
「うんそうしよ。また俺隠れてるから。」
壁に張り付いて様子を見てみるとちゃんと個人医を呼んで治療されているようだった。
「治った?よしじゃあ行こ!ぐち逸が運転してくれるんだよね、今日はちょっといつもと違う事しない?」
趣向を変えて人気の無い場所で散歩しないかと提案するとぐち逸はコクンと頷いた。パレト銀行の近くまで行き車をガレージにしまう。
「ここなら流石に大丈夫だよな。ね、ぐち逸。」
「ぁ、ぇと…///」
差し出された手を戸惑いつつ握るとスルリと指を絡められ、たじろいでしまう。なのにぺいんは余裕そうな、澄ました顔をしているのを見てなんだか負けた気になった。
「…あの、さっきは高圧的になっちゃって、すいません。」
「ん?なんも気にしてないよ。でも本当心配になるからさ、ぐち逸はもっと自分を大事にしてほしい。」
「ありがとうございます、でもあれぐらい何とも無いですから。」
「分かってたけどやっぱり頑固だねぇキミは。病院行けないのはなんでなの?」
「あーそれは…いや気にしないでください。」
急にたどたどしくなり目が泳いでいる。どこをどう見ても何か隠しているのは明白だ。
「なに言えない事?ますます気になるじゃん、大丈夫だよ誰にも言わないって。」
「いやどっちかと言うとぺいんさんが困るかなと。」
「俺が?聞いてみてから考える、教えて。」
「…今私指名手配されてます。」
「は、マジで!?ちょっと見よ……ほんとだ、今日牢屋対応してないから見てなかった〜でも今の俺はただの一般市民だから、うん…それにもうほぼ皆寝ちゃったししょうがないって事にしよう。」
警察官としての正義の心が揺れ動き罪悪感に苛まれるも、言い訳を作って自分を無理やり納得させた。
「てか今日は個人医呼ぶのも渋々だったのなんで?普段はよく怪我の治療で病院行ってるよね。」
「…だってぺいんさんとの時間が少なくなるから。」
「え?……はぁーーーぐち逸はもうほんっっとにさぁ…」
「え、あ、すいません。」
「違う違う怒ってるんじゃなくてね、お前はどこまで可愛いのって。」
「かわっ///…またそれですか、嘘ついても私は騙されませんよ。」
照れ隠しなのか本当にそう思ってるのかは分からない、ただ頬を染めた顔を見られないようにそっぽを向いたぐち逸が堪らなく愛おしくなった。
「あのさぐち逸?」
「なんでしょう?」
「…やっぱなんでもない!あっち行こ!」
「ふふ、なんだか新鮮で楽しいですね。」
柔らかく笑ってぺいんについて行く。こんなに堂々と並んで街を歩くなんて初めてで、スキップでもしてしまいそうな程浮かれてるのは2人とも同じだった。