コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
朋也さんはそう言ったけれど、たいしたことないなんて、かなりの謙遜だ。
自分達で焼けるよう全て準備が整い、さらにバーベキュー以外のオシャレな料理をシェフが作って振る舞ってくれるようだ。
食材があまりに豪華過ぎて驚く。
お肉の種類も豊富で、ロブスターやシーフード系もあり、盛り付けも美しく、見ているだけで幸せな気分になれた。
ロマンチックでうっとりするような光の中でのバーベキュー。
こんなの初めてだ……
朋也さんは、本当にお金持ちなんだ。
御曹司なんだから当たり前だけれど、目の当たりにして心からそれを実感した。
「いただきま~す」
誰かの声で食事がスタートした。
朋也さんは、率先してお肉や野菜を焼いてくれている。
横で手伝っているのは……
菜々子先輩と梨花ちゃん。
私は、その中にはわざと行かないようにした。
お肉が焼ける良い匂いがみんなの空腹を刺激し、シェフが作る、見たこともないような料理に感激した。
「どうぞ」
朋也さんが、私のお皿に焼いたお肉を置いてくれた。
「あ、ありがとうございます。いただきます」
「ちゃんと食べろよ。たくさん食べないと余ってしまうから」
「はい、ありがとうございます」
一口で食べれる大きさが嬉しい。
この配慮には感心する。
口の中に入れた瞬間、すぐに溶けて無くなる高級なお肉。一気に幸せが体を駆け巡る。
柔らかくて、香ばしくて……こんな美味しいお肉を食べたのは初めてだ。
何から何まで豪華で、夢見心地だ。
みんなもアルコールが入り、楽しく過ごしている。
私も交代でお手伝いをしながら、この雰囲気を心から満喫した。
その時、屋上に社長が上がってきた。
「やあ、よく来てくれたね。みんな楽しんでるかな?」
社長の言葉に一瞬で空気がガラリと変わった。
みんな立ち上がり、背筋がピンと伸びている。
私ももちろん、同じようにしているけれど。
『文映堂』の社長の威厳はやはりすごいものがある。
「今日はありがとうございます。お邪魔してしまい申し訳ございません。とても美味しくいただいています」
代表して一弥先輩が言ってくれた。
さすがの対応だ。
「いやいや。いろいろ大変なこともあるだろうが、今日はゆっくり楽しんでくれ。今のプロジェクトの成功を祈っている、頼んだよ。まあ、今日だけは全て忘れて、どんどん食べて飲んでくれて構わないから」
「はい! ありがとうございます」
みんなは口々にお礼を言った。
社長はにこやかに手をあげて一礼してから、今度はなぜか私に近づいてきた。
一気に心臓が激しく脈を打ちだした。
「やあ、この前はいろいろと済まなかったね。朋也がわがままを言って」
たまたま周りには誰もいない。
だからこそ私に話しかけてくれたのだろう。
「いえ、こちらこそ突然で申し訳ございませんでした」
「……あいつがあんなことを言い出して正直びっくりしたよ。将来のことを急に考えたいなんて、しかも、君と結婚したいと……」
「あっ、いや、それは……」
「朋也は迷惑をかけてないかな? あいつは自由というか、マイペースというか……。森咲さんを困らせているんじゃないかな?」
「いえ。そんなことは……ないです」
ひとつ言うとすれば、いつも上半身裸でいようとするところだろう。
「そうか。でも、もし、女性である君に迷惑をかけるようなことをしたら、ちゃんと追い出してくれ」
「……社長。本宮さんは紳士です。ちゃんと私を大事にしてくれてます。だから……私の方が感謝しているんです」
確かに、この言葉は嘘ではない。
「……あいつも、少しは大人になったということかな……」
「本宮さんは、社長のことを心から信頼し、家族として大切に思っています。それがものすごく伝わってきます。本当に素敵な親子関係ですね」
「ありがとう。朋也は女性嫌いだと思っていたが、君のような素晴らしく聡明な女性を選んだ。私も、もう安心だよ。あいつの母親代わりの梅子さんという女性がいるんだが、いつか森咲さんに合わせたい。誰よりも1番喜んでくれるはずだ」
「梅子さんのお話、朋也さんから少しお聞きしてます。私もいつかお会いできたら嬉しいです」
「ああ、ぜひ。ではまた。朋也をよろしく頼みます。今夜は楽しい夜を過ごして」
「はい、本当に今日はありがとうございます」
社長が笑顔で良かった。
突然の訪問にも寛大で、怒ってなどいなかった。
やはり貫禄があって、本当に尊敬する。
社長は、心から朋也さんを愛しているんだ。
大切な大切な家族として――
「さあ、まだまだあるからたくさん食べて」
「は~い! いただきまーす」
朋也さんが空気を変えてくれ、私達は再び料理を食べ始めた。
さっきから一弥先輩と朋也さんが仲良く話している。
オーラに包まれ、嘘みたいに素敵だ。
バーベキューだから、いつもよりラフな服装なのに、2人の周りだけ空気感が違う。
恐ろしくオシャレ過ぎて、あまりに眩しい。