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第1話『王都軍』niki視点
王国を統べる王都サイキョリア。真っ白の城壁が空に聳え立ち、その内側では能力者たちが煌びやかな能力を使い市民と王族を守るため、日々訓練を重ねている。能力の才能は産まれながらに決まる。しかし、能力で人を見ず、平等に暮らせるのがここ、王都サイキョリアなのである。
しかし、その輝かしい王都の裏を暴こうとする人々がいた。
彼らは「最強無敵連合」を名乗る反乱軍。王国からは「哀れな者たち」と蔑まれ、市民からは「反乱分子」として恐れられている。
そんな周りの意見と裏腹に、彼らは王都軍に負けず劣らずの能力を駆使し、王都の裏を暴く道を着々と広げて行った。
しかし、そんな夢のような反乱劇は長くは続かなかった。
数時間前、 俺とボビーは、夜ご飯の買い出しを終えて、いつもの帰り道を歩いていた。
「最近、暗くなるのが早くなったなぁ」
俺がそうつぶやくと、ボビーはかぶっていたフードを深くして、俺に寄り添ってきた。
「早く帰って、みんなとご飯食べよや。寒いし、」
ボビーの言葉に、俺は少し笑った。そうだ、早く帰って今日あったことの情報共有を済ませ、いつも通り笑いながら飯が食いたい。そう思って再び歩き出した瞬間、 後方から
《バンッ!!
っと銃声が鳴り響いた。急いで戦闘態勢に入ったが、遅かった。目の前には、血まみれの相棒が倒れていた。
「……ぼびぃッ…!!!」
口から、か細い声が漏れる。一番大切な相棒が目の前で殺されたのだ。そう思うと、絶望が全身にのしかかり、その場に崩れ落ちてしまった。手が震え、呼吸もままならない。そんな俺を見て、王都軍は嘲笑を浮かべ、俺を取り囲んでいた。
「反乱軍もこんなもんか…」
その声は、冷たく、そしてどこか楽しげだった。王都軍の一人がもう1発をニキに向けて打とうとした瞬間反対側から見覚えのある青年が近ずいてきた。
「Look is cat!!!」
「ニキニキ!!逃げるよ!!!」
その声は、最強無敵連合の一員であるりぃちょだった。彼の能力によって生み出された無数の猫の幻影が、王都軍の視界を遮る。その隙をついて、彼はニキの手を掴んだ。
「早く…!!!」
俺は放心状態のまま、りぃちょと共に駆け出した。王都軍が幻影に気を取られている間に、彼らは闇夜の中、全力で走った。悲しみと絶望、そして仲間を失った無力感。様々な感情がニキの胸を締め付ける。 りぃちょは、泣きながらも必死に俺を誘導する。その表情には、仲間を失った悲しみに満ち溢れていた。
王都軍の追跡を振り切り、彼らはようやく最強無敵連合のアジトにたどり着いた。待っていたのは何も知らない仲間たちだった。彼らはいつものように、俺たちの帰りを心待ちにしていた。
「おかえり!遅っかたね〜!!もうお腹ぺこぺこだよぉ」
そう言って美しい笑みを零すのは最強無敵連合の一員、18号だった。
「みんな待ってるから、早く中入ってねって…せんせーは?一緒に買い出しに行ってたよね…?」
18号の言葉に、俺は何も答えられなかった。彼女の笑顔は、次第に不安に曇っていく。りぃちょは俺の代わりに、震える声で言った。
「…せんせーが、王都軍に……」
その言葉が最後まで続くことはなかった。18号の表情が凍りつき、アジトにいた全員が、その場で息をのんだ。そして、りぃちょの目から、大粒の涙がこぼれ落ちる。
俺はリーダーとして、みんなに何かを言わなければならない。だが、喉から声が出ない。俺はただ、悲しみにくれる仲間たちを、どうすることもできずに見つめることしかできなかった。
アジトに響くのは、仲間たちの嗚咽と、自身の心音だけだった。
第2話『仲間の誓い』kiru視点
アジトを包む沈黙は、いつもと違った。
普段なら誰かの笑い声に溢れているはずなのに、今日は違う。
「……状況を整理しようか…」
沈黙を破ったのは、冷たい声で話す弐十だった。 涙で顔を濡らしたりぃちょを横目に見ながら、俺は一息ついて話し出す。
「しろせんせーは、王都軍に殺された。ニキはその場にいた。そして、りぃちょは帰りが遅い2人を心配し、迎えに行くと王都軍に囲まれたニキと遭遇し、助けた───間違いない?」
「……うん…」
2人の声はかすれていた。普段なら熱のこもった声なのに、今は燃え尽きたように力がない。
「ふざけんなよ…!!なんでせんせーが……」
キャメロンが机を叩き、低く唸る。その隣で18号が唇を噛みしめ、震える声で言った。
「……せんせーがいなくなるなんて、信じられない!!……」
俺は仲間たちの顔を順に見渡す。怒り、悲しみ、そして恐怖。誰もが揺れている。
しかし、こういう時こそ冷静でなければならない。
「泣くのは勝手だよ。でもさ、泣いていても王都軍は止まらない。次は誰が殺される?俺たち全員か?」
その言葉に、空気がさらに重くなった。
ニキが俯いたまま拳を握りしめている。リーダーであるはずの男が、今にも折れそうになっている。
……だからこそ、俺が言わねばならない。
「俺たちは“最強無敵連合”だ。――“無敵”を名乗る以上、誰かを失った程度で崩れるようじゃ笑い者でしょ」
その瞬間、俯いてたりぃちょが涙を拭い、ぐっと顔を上げた。
「……そうだよね。せんせーだって、そんなの望んでないよね……!」
はとねもその言葉を聞き、目を赤くしながら頷き、立ち上がる。
「……やられたら、やり返す。それが最強無敵連合だよな…!!」
仲間が少しずつ立ち上がる中、俺はリーダーのニキを見据えた。
「ニキ、お前がそんな調子だったら俺が一時的にリーダーをやる。」
その挑発に、ニキの肩がピクリと震えた。
そして、顔を上げた時――その瞳には、再び炎が宿っていた。
「……いや。俺がリーダーだ。ボビーの意志は、俺が継ぐ」
アジトに力強い声が響く。
仲間たちの目に再び光が戻り、全員が頷いた。
「――最強無敵連合は、まだ負けてねぇ!」
その夜、彼らは改めて、「王都軍への反撃」を誓い合った。
第3話『潜入作戦』nito視点
翌朝。冷たい風が吹き抜ける森の奥で、俺たちは再び、集まっていた。
誰もが無駄口を叩かない。緊張と覚悟が、吐く息よりも白く漂っている。
「……作戦の確認をするね」
俺は新聞を広げ、仲間たちに見せた。
「目的は、王都軍の補給路を潰すこと。
食糧と武器の供給を断てば、奴らは戦力を維持できなくなるって考え。」
皆が頷く。目に迷いはない。
昨夜の彼らからは考えられないほど、強い光が宿っていた。
「とりあえず、三手に分かれよう。
――ニキと18号はメイドに変装して、潜入。補給路の調査と並行して、王都軍の調査も担当する。
――キルシュトルテ、キャメロンが戦闘と、補給路の閉鎖。
――俺とりぃちょ、はとねでみんなに情報を共有しつつ補給路の場所を探る。」
「いいね、派手にやろう!!!」
りぃちょの軽口に、キルシュトルテが眉をひそめる。
「お前の能力戦闘系やないから無理やろ」
「は!?俺にもできるし!!」
そんなやり取りを見て、はとねが小さく笑った。そんな彼らを見ながら恐る恐る口を開くのは最強無敵連合のリーダー、ニキだった。
「ねぇ…みんな?ちょっと確認しときたいことがあるんだけど、……俺、メイドなん?」
一瞬の沈黙のあと、シードが腹を抱えて吹き出した。
「ニキがメイド!?すぐバレるやろ!!」
「だよね!!!おかしいよね!?!?」
ニキが真っ赤になって叫ぶが、18号が首をかしげて言った。
「だって、王国の中って貴族とか、王族とか、男の人がうじゃうじゃいるとこでしょ…?そんな中に女の子一人、入れ込むっていうの!?」
「それはわかるけど…!!え…ガチ?俺、一応戦闘能力だよ!?!?」
そんなやり取りに、一瞬だけ場の緊張が解けた。
「それについては俺が説明するわ、」
キルシュトルテが手を叩き、全員の視線を集める。
「まず、18号は戦闘分野を得意としていない。だから、ニキは18号のサポートをするために、潜入調査を担当とした、これ以上、仲間の犠牲を出したくない。」
その言葉に笑い声が止み、場の空気が再び引き締まる。
俺は新聞を畳み、静かに告げた。
「……動こう。これは“最強無敵連合”の反撃の始まりだ。」
仲間たちは無言で頷き、それぞれの持ち場へ散っていった。