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初音ライダー剣
第7話
“克服”
伊坂/ピーコックアンデッドにスパイダーアンデッドを封印したカードを奪われたミクは、スパイダーアンデッドに攫われた被害者たちを救出した後、BOARD支部に任務の報告をするため帰還を急いだ。しかし、BOARDの仮支部となっている宿舎には誰もいなかった。
ミク「あれ?どうしたんだろ…」
ミクはBOARD支部がもぬけの殻なのを訝しがる。大抵誰かはいるはずだ。少なくとも、支部長のキヨテルとオペレーターのウタはほぼいつも居る。なのに、何故今回に限って誰もいないのか。そんな疑問を抱いていたとき、ミクの後ろからルカが声をかけてきた。
ルカ「…不思議そうな顔をしているな。」
ミク「あなた…」
ルカ「仲間を探しているんだろう?付いて来い。教えてやる。」
ミク「…」
ルカはミクに仲間たちの居場所を教えてやると言う。ミクはそれに渋々付いていく。そして2人はバイクを駆って走った。
BOARDの開発部の製造所では、多くの人たちが働いていた。しかし、彼らに活気はなく、機械のように黙々と作業をしているだけだった。その中にはウタとキヨテルもいた。
ミク「何してるの?皆…」
ルカ「カテゴリーJ(ジャック)の催眠で操られている。」
ミク「そんな…じゃあ助けないと!」
ミクは早速2人を助けに行こうとする。しかし、ルカに止められる。
ルカ「行ってどうする?」
ミク「決まってるでしょ!ウタとチーフを…いや、皆を助ける!」
ルカ「できるのか?カテゴリーJはお前より強いぞ。」
ミク「…でも、何もしないで見て見ぬふりはできない!」
ルカはミクに忠告するが、ミクはそれを振り切っていく。ルカはそんなミクを笑いながらも、何か妙なものを感じた。しかし、それが何なのかは分からなかった。
ミクがカテゴリーJを探していたところ、製造所の出入口にはMEIKOが膝小僧を抱えて座っていた。
MEIKO「…ミク。」
ミク「姉さん…何やってるの?」
MEIKO「…別に。ただ、来てみただけよ。」
MEIKOは気まぐれでそこにいるだけだという。だが、ミクは丁度いいと思い、MEIKOに共闘を呼び掛ける。
ミク「姉さん、一緒に戦って!」
MEIKO「…無理よ。言ったでしょ?もう戦えないって。」
ミク「何でそんな簡単に諦めるの?アンデッドと戦って、皆を助けるのは私たちにしかできないんだよ?」
MEIKO「…あんたに何が分かるのよ。臆病風に吹かれた私の気持ちが…」
ミク「怖いのは分かる!でも、誰かがやらなきゃならないことはいっぱいある!アンデッドから人を守れるのは私たちだけなんだから!」
MEIKO「…だから、もう無理だって…どうせ私なんか…」
ミクは必死にMEIKOの説得を試みるが、MEIKOは膝を丸めて動かない。
同じ頃、ルカはカテゴリーJ=伊坂と会っていた。
伊坂「ブレイドをここに連れてきたのか。」
ルカ「ああ。」
伊坂「ブレイドについてはしばらく泳がせて、後で料理するとしよう。それより見ろ。もう少しで完成する。」
伊坂はルカにPCの画面を見せた。画面には「LEANGLE」と書かれたライダーシステムの完成度が描かれていた。
伊坂「元々完成に近かったらしいからな。あと少し手を加えることで完成だ。」
ルカ「新しいライダーを造って何をする気だ?」
伊坂「決まっているだろう。手駒にするんだ。ここで利用している人間たちと同じように、私が勝ち残るためにな。そのためにも、最強のライダーを造る。」
ルカ「…ふん。」
伊坂は堂々と言う。ルカは興味なさそうにその場を去った。そして、ルカが去ったのとほぼ入れ替わりで、ミクが1人で伊坂の部屋に来た。
ミク「見つけた!」
伊坂「意外と早かったな。まあいい。どのみち、勝つのは私だ。」
伊坂は自信過剰な性格を体現したように不敵な微笑を浮かべつつ、アンデッドへと変貌する。これと同時に、ミクもブレイバックルを取り出し、腰に装着する。
ミク「変身!」
ミクはポーズを取った後、オリハルコンエレメントをくぐり、ブレイドへと変身する。そして、ブレイドは早速ブレイラウザーを振るってピーコックアンデッドに斬りかかる。ピーコックアンデッドは持前の剣でブレイドの斬撃を防ぎ、パワーでブレイドを軽く押し返す。
ミク「うあッ!?」
ブレイドは軽く弾き飛ばされる。だが、それ以上にピーコックアンデッドのパワーに驚いた。
ミク「…こいつ…強い?」
伊坂「下級アンデッド共と一緒にしないでもらいたいな。」
ブレイドは少し冷や汗をかいた。ピーコックアンデッドの意外なパワーに押され、苦戦を予想した。
伊坂「どうした?来ないならこちらから行くぞ!」
ピーコックアンデッドは剣を振るってブレイドに迫る。ブレイドはピーコックアンデッドの剣をブレイラウザーで受け止めようとするが、パワー差の前に受けきれず、右肩の関節にダメージを負ってしまう。それでも、ブレイドは負けじとピーコックアンデッドに挑むが、ピーコックアンデッドは左腕の鉤爪でブレイドの斬撃を受け止め、ブレイドをブレイラウザーごと部屋から放り投げてしまう。
ミク「うあッ!」
ブレイドは部屋を通り越して外に放り出された。ピーコックアンデッドはブレイドを追って彼女の目の前に堂々と歩いて現れる。その様子を、MEIKOが物陰に隠れて見ていた。
伊坂「もう分かったろう。お前は俺に敵わん。大人しく降伏すれば手駒にしてやるが、どうだ?」
ミク「…誰が!」
ピーコックアンデッドはブレイドに自分の手駒になるように言う。ブレイドは当然、これを拒否し、再びピーコックアンデッドに斬りかかる。だが、ピーコックアンデッドは羽を手裏剣のように飛ばし、ブレイドを攻撃する。
ミク「うああッ!?」
ブレイドは羽の手裏剣を受けきれず、その場に膝をついてしまう。それでもブレイドは立ち上がって戦おうとする。ピーコックアンデッドは追い打ちをかけるべく、剣を振り下ろしてブレイドを攻撃する。
ミク「うッ!」
ブレイドはピーコックアンデッドの斬撃を受けてよろけ、ブレイラウザーを支えにして膝をつく。
伊坂「いい加減諦めたらどうだ?私の元に来れば、お前に力をくれてやるというのに。」
ミク「…そんなのいらない!」
ブレイド/ミクはまだ戦いを放棄しない。そして、ブレイドは再び立って走ってブレイラウザーを振るい、ピーコックアンデッドに一撃を与えた。
伊坂「ぐッ…」
ピーコックアンデッドは思わぬ一撃に少しよろけた。ブレイドはこれまでで明らかにダメージを負っている。にも拘らず、ここに来てパワーが上がっている。どういうことだ。ピーコックアンデッドは理解できなかった。ブレイドはさらに攻撃を続け、ピーコックアンデッドを押していく。その様子を遠目で見ていたMEIKOは思案に暮れた。
MEIKO「ミク…」
何でそんなに戦えるの、とツッコミたくなった。自分はそこまでできない。自分はミクとは違う。ミクにできても、自分にはできない。
MEIKO(…ん?待てよ…)
MEIKOはここで少し考え方を変えた。何故自分の中でミクと自分を比較するのだろう。そこがまず間違っているのでは、と思った。ミクと比較することはない。自分は自分でミクにできないことをして協力し合えばいい。何故これを拒否したのか。ミクに嫉妬したからだ。
では、何故ミクに嫉妬したのか。自分より強くなってきたと思ったからだ。でも、違う。ミクだって無敵というワケではない。だから以前カリスに敗れた。そして今、ピーコックアンデッド相手に苦戦している。でも、ここに来てミクは押し始めた。何故だ。
MEIKO(…そうだ!ライダーシステムはそういうシステムだった!)
MEIKOはライダーシステムの性能を思い出した。ミクとMEIKOが使うライダーシステムは感情の起伏により攻撃力が変動する。より強く意思を持てば、ライダーシステムはそれに相乗し、力を発揮する。逆に、心が弱いとライダーシステムは性能を発揮しない。ミクはそれを使いこなしているから、力を発揮できた。アンデッドから人を守る、ミクはその気持ち1つでブレイドを使いこなしている。自分にもできるはずだ。ミクだからなどと考えるのは止めた。
ミク「うっ!?」
ブレイドはピーコックアンデッドを押してきたが、これまでのダメージが蓄積しており、再び押され始めた。MEIKOはそこに勇気を振り絞って、ブレイドとピーコックアンデッドの間に割って入った。
MEIKO「それ以上はやらせない!」
MEIKOは生身のまま、ピーコックアンデッドの前に立ちふさがり、ブレイドを庇う。
ミク「姉さん…」
MEIKO「ごめん、ミク。私もようやく戦う覚悟ができた。私も守りたい。世界を、大事な人たちを、こういう悪党の手から!」
MEIKOはミクの戦いぶりを見ていて、再び戦う覚悟を決めた。やはり、自分も世界を、大事な人たちを守るために戦いたい。
伊坂「臆病風に吹かれた貴様に今更何ができる?」
MEIKO「あんたを倒す!」
MEIKOは勇んでギャレンバックルを取り出し、装着する。
MEIKO「変身!」
「TURN UP」
MEIKOは左腕に力を込めた後、ギャレンバックルからオリハルコンエレメントを投影させ、仮面ライダーギャレンへと変身する。
ギャレンは変身して早速ギャレンラウザーを手に取り、ピーコックアンデッドを撃つ。ピーコックアンデッドは剣をかざして銃撃を防ごうとするが、銃弾1発1発に思わぬ威力があり、防ぎきれない。
伊坂「ぐ…」(何だこの威力は…)
ピーコックアンデッドは銃弾を連続で受けてよろける。ライダーシステムは強い意志や感情に反応して攻撃力を高める。今のギャレン/MEIKOの銃撃の威力がそれだ。だが、ピーコックアンデッドはそれを知る由はない。
伊坂「…このまま活けると思うな!」
ピーコックアンデッドは羽手裏剣を飛ばす。ギャレンはギャレンラウザーを連射してこれを撃破していく。だが、だが、1発撃ち漏らし、右腕に手裏剣をうけてしまう。
MEIKO「うっ!?」
ミク「姉さん!」
MEIKO「…大丈夫。それより作戦がある。」
ブレイドはギャレンを気遣う。しかし、ギャレンはこの短期間で作戦を考えた。そこで、ブレイドに耳打ちする。
MEIKO(私がヤツを引き付ける。その隙に回り込んで奇襲をかけて。)
ミク(分かった!)
伊坂「丸聞こえだぞ!」
ピーコックアンデッドはブレイドとギャレンの間に剣を振り下ろす。ブレイドとギャレンはこれをバックステップで回避し、二手に分かれる。
伊坂「…仲間を逃がす気か。」
MEIKO「丸聞こえじゃなかったの?」
ピーコックアンデッドは鉤爪を開き、ギャレンに接近戦を挑む。ギャレンはこれを受け止め、ピーコックアンデッドの懐にギャレンラウザーを突きつけ、銃撃を撃ちこむ。
伊坂「ぐあッ!?」
ピーコックアンデッドは懐に銃撃を受けてよろけた。そこに、不意を突いたブレイドがピーコックアンデッドの背後に回り込み、奇襲をかける。
「SLASH」
伊坂「ぐっ!?」
ブレイドは♠2のカードで強化したブレイラウザーを振るい、ピーコックアンデッドに一撃を浴びせる。ピーコックアンデッドは大きくよろけ、剣を手放してしまう。
伊坂「う…」
ピーコックアンデッドはブレイドとギャレンに挟み撃ちにされた。これこそが、MEIKOの狙っていた構図だった。左右から挟み撃ちにしてしまえば、2人を同時に攻撃することはできない。個別に相手するしかない。片方を相手すれば、もう片方に不意を突かれる。どっちつかずになったピーコックアンデッドは不利を悟った。
ミク「これでとどめだ!」
MEIKO「待って!私がやる!」
ギャレンは逸るブレイドを制止し、ギャレンラウザーのオープントレイを開いて♦5、6、9のラウズカードを取り出し、ギャレンラウザーにラウズさせる。
「DROP」
「FIRE」
「GEMINI」
3枚のカードの絵柄がギャレンにオーバーラップされる。
「BURNING DIVIDE」
MEIKO「はあああああ!」
音声の後、ギャレンは高くジャンプし、空中で前転して分身し、両足に炎のエネルギーを纏ってダブルでドロップキックを繰り出す。
伊坂「ぐああああああ!」
ピーコックアンデッドは2体分のドロップキックをくらい、その場に倒れ伏してアンデッドクレストを開いた。ギャレンはそこに空のラウズカードを投げてピーコックアンデッドを封印する。
ギャレンは変身を解いてMEIKOの姿に戻る。同じくして、ブレイドも変身を解いてミクの姿に戻るが、その途端、ドッと疲れが出た。
MEIKO「ミク!」
疲れとダメージで倒れそうになったミクをMEIKOが支える。
ミク「…ありがとう、姉さん。戻ってきてくれて。」
MEIKO「…いや、礼を言うのは私。あんたが戦ってくれたおかげで、私も戦いに戻って来れた。」
ミクとMEIKOは互いに礼を言う。
MEIKO「さて、製造所へ行こう。皆に事を説明しないと。」
ミク「うん!」
MEIKOは疲れているミクに肩を貸し、共に製造所へ向かう。
その頃、製造所では伊坂/ピーコックアンデッドの催眠が解けた人々が我に返っていた。
ウタ「チーフ。私たち、一体何を…?」
キヨテル「…どうやら、マインドコントロールか何かにかけられていたようですね。」
ハッとするBOARDの面々のよそでは、新型のライダーシステムが完成していた。