テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
目覚め
意識が、ゆっくりと浮かび上がる。
最初に戻ってきたのは――
「音」だった。
ぱち……ぱち……
微かな、火のはぜる音。
そして、人の気配。
(……生きてる……?)
重たいまぶたを、少しずつ開く。
ぼやけた視界。
木の天井。
簡易テントの内側。
焚き火の明かりが、揺れている。
「……起きた?」
すぐそばで、声がした。
銀髪の少年――キルア。
地面に座り、腕を組んでこちらを見ている。
×××は、反射的に身構えようとして――
「っ……!」
激痛が走り、思わず息を詰めた。
「無理すんな。」
キルアが、即座に手を伸ばして支える。
「全身ズタズタだぞ。三日くらい寝てた。」
「……三日……?」
喉が渇いて、声はかすれていた。
キルアは水筒を差し出す。
「ゆっくり飲め。」
×××は、戸惑いながらも口をつける。
冷たい水が、体に染み渡った。
……美味しい。
こんなふうに、誰かに世話をされる感覚は、久しぶりすぎて――いや、初めてかもしれなかった。
「……なんで……助けたの?」
ぽつりと、問いかける。
キルアは少しだけ目を伏せた。
「……助けちゃダメな理由、あった?」
その答えに、×××は言葉を失う。
そんな発想――
今までの人生に、存在しなかった。
「普通さ……あんな戦場で倒れてたら……」
「見捨てる?」
「……うん。」
キルアは、鼻で笑った。
「俺たちは、そういうの嫌いなんだよ。」
そのとき。
テントの入口が開いた。
「×××ー!!起きたの!?」
勢いよく飛び込んできたのは、ゴン。
後ろからクラピカとレオリオも続く。
「おお、意識回復か。よかった……!」
「命に別状はないが、まだ安静が必要だ。」
四人が揃った瞬間。
空気が、一気に明るくなる。
×××は、戸惑いながら彼らを見る。
(……なんなの……この人たち……)
距離が、近すぎる。
優しすぎる。
怖いくらいに。
ゴンは、にこっと笑った。
「ねえねえ!×××ってさ、めっちゃ強いでしょ!」
「……え?」
「だってさ!あのキメラアントの死体、山みたいにあったもん!」
レオリオも頷く。
「あれ一人でやったとか、化け物だぞ。」
×××は視線を逸らす。
「……仕事……だっただけ。」
「仕事?」
クラピカが反応する。
「ハンターか?」
一瞬。
心臓が、跳ねた。
(……まずい。)
旅団だとバレれば、即敵対。
最悪、殺される。
×××は、ゆっくりと首を振った。
「……違う。」
「じゃあ、何者だ?」
沈黙。
重たい沈黙。
キルアは、じっと彼女を見ていた。
嘘をついているかどうか――
見抜こうとする目。
×××は、静かに言う。
「……ただの……傭兵。」
半分、嘘。
半分、本当。
クラピカは深追いしなかった。
「……そうか。」
ゴンは気にせず笑う。
「でもさ!悪い人じゃないよね!」
「……判断早すぎだろ。」
キルアがツッコむ。
×××は、思わず小さく笑ってしまった。
……自分が、笑うなんて。
ありえなかった。
キルアが、それに気づいて一瞬目を見開く。
「……今、笑った?」
「……悪い?」
「いや……」
少し照れたように視線を逸らす。
「……珍しいなって。」
その夜。
×××は、久しぶりに――
ぐっすり眠った。
悪夢もなく。
追手もなく。
安心して眠れたのは、何年ぶりだろう。
しかし。
平穏は、長くは続かない。
翌日。
クラピカが、地面に落ちていた“ある物”を拾い上げた。
――黒い布切れ。
そこには。
微かに残る。
蜘蛛の紋章。
「……これは……」
クラピカの目が、鋭く細められた。
(……まさか……)
運命の歯車は、
静かに、しかし確実に回り始めていた。
to be continued…