テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
197
2,749
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
「……それ、俺、ホワイトチョコがいいです」
「あ、でもこれ、俺が指で触っちゃったし」
「ホワイトチョコが一番好きなんですぅ」
あ、と大きく口を開けたりゅうせいが、俺が運んでくるのを待っている。
待ってくれ。可愛い。なんだこれ。心臓のバックバクが止まらない。
指先が震えないよう細心の注意を払いながら、そっと口の中にチョコを放り込む。
「……おいちい」
なんて言いながら、ほっぺを押さえて至福の表情を浮かべている。
待ってくれ、本当に。可愛いが渋滞しすぎて、脳が処理しきれない。
「……いつきくぅん、顔真っ赤ですよ?」
「うるせぇ」
いっちゃんにコソッと、ニヤついた顔でバカにされ、俺は咄嗟に背中を向けた。
誰も気づいてないよな? りゅうせいにだけは、この動揺を絶対に見られたくない。
「俺アーモンド貰いますんで、いつきくんは最後に残った、このよくわかんないの食べてくださいね」
何事もなかったかのように、いっちゃんが最後のチョコを掴んでデスクに戻っていく。お前、それ本当に今日中に仕事終わるんだろうな?
「さあ、いつきくん、行こうか! 俺、7時にレストラン予約してあるんだぁ」
「おう、ちょうどお腹も空いてきたしな」
「じゃあ、お二人さんも楽しいクリスマスを!!」
まだ仕事が残っている二人に向かって、だいきが元気よく手を振る。
少し前までは心配で仕方がなかったけれど、今日は……最高にいい日だった。りゅうせいが前みたいに甘えてくれて、ヤキモチを焼いてくれて、チョコだって俺の手から食べてくれた。
もう、思い残すことは何もないくらいだ。
「……いつきくん、なんだか嬉しそうっすね」
「え、そうか? いつもと変わんないだろ」
自然と口角が上がっていたのを指摘されて焦る。お前のせいだよ。いや、お前のおかげだよ。
「デート、楽しんできてくださいね」
「……おう」
案外、割り切ったような笑顔で言われたけれど、不思議と傷つかなかった。
避けられていた頃を思えば、今日という日は幸せすぎてお釣りがくるくらいだ。
「いつきくん、今日は一緒にいてくれて本当にありがとう」
コース料理を終え、冬の夜風に吹かれながら歩く。街のイルミネーションが、だいきの横顔を鮮やかに照らしていた。
「ううん。それより本当に良かったの?俺、もうお金の余裕あるのに」
「今日は俺が『いつきくんのクリスマスを買わせて』ってお願いしたんだから、気にしないで?」
「そっか。ありがとう。……今度どこか行くときは、自分の分は自分で払うから」
「あ、そこは『俺に全部払わせて』じゃないんだ?」
「まあ、恋人じゃないしな」
「……そうだよね。じゃない、しね」
だいきが何かを言いかけて飲み込む。その言葉の続きを、俺は静かに待った。
これまでずっと、俺のそばにいて支えてきてくれたんだ。俺はちゃんと向き合いたい。だいきだって、他の二人と同じくらい大切な存在なんだから。
「……いつきくん。また、誘ってもいい?」
「もちろん」
そうか、だいきがそれでいいなら、それがいい。
俺も、ずっとこうして笑い合える、仲のいい友達のままがいい。