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「ただいま」
「ああ、よかった。響子帰ってきた!」
穏やかな母にしては珍しく気が動転している様子で、私に駆け寄った。
「お母さん、どうしたの?」
「さっきお父さんが会社で急に意識を失ったって、……連絡が入って」
「えっ?!」
「今病院に向かおうとしていたんだけど、この前、免許証返却しちゃって困ってたの」
おろおろして顔を真っ青にしている母をなだめるように、
「わかった、私が運転するから、先車の中で待ってて」
そう言って、車のキーを母に渡した。
「お父さん、今朝普通に元気そうだったのに」
……まさか。勤務中の音声検索を拾っていたとかないと信じたい。
私はなんだか急に気味が悪くなって思わずボイスフレンズから目をそらした。
「とにかく病院に行かないと」
車の運転席に乗り込み、病院の場所をナビに入れようとする。
「お母さん、病院の住所教えて」
「えっと、住所書いた紙、家に置いてきちゃったみたい」
こんなミス珍しい、随分と動揺しているようだ。
「病院の名前は?」
「Smart Voice Technology病院だったかしら、ボイフレを出している会社の系列病院よ」
「ボイスフレンズか……」
「そうだ、ボイスフレンズに道案内をお願いしたらいいんじゃない」
母の言葉に思わずギョッとする。
「嘘、この車ボイスフレンズと連携しているの?」
「そうなの、この前お父さんが頑張って連携してたの。Hi, ボイスフレンズ」
【Yes】
「Smart Voice Technology病院まで道案内をして」
お母さん、せめて私が了承してから頼んで欲しかったと心の中で悪態をつく。
そんな悪態など無視して、ボイスフレンズは、ナビゲーション画面を展開し始めた。
【Smart Voice Technology病院までのナビゲーションを開始します】
【この先100m、右に曲がります】