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そこは、海と森に囲まれた白い大きなコテージだった。
でけぇな…。
立派なコテージを見上げ、感嘆する。
家から約2時間ほど走った場所に、それはあった。
目の前には海が広がり、後ろには森がどこまでも広がっていた。
潮風が吹き、炎天下の暑さを和らげてくれる。
「あいつらもう来てるらしい」
隣で春翔がそう言った途端、コテージの玄関のドアが開いた。
「よぉ、すまんなわざわざ」
そこから現れたのは、豚さん。
昨日廊下で会った人物だ。
「よぉトントン。全員揃ってるか?」
「おう。もう中におるで」
そうだ。この人だ。
この人がトントンさんだ。
雪乃は昨日の記憶を思い出した。
トントンは玄関の扉を開けたまま、こちらに近付いてきた。
「改めて、来てくれてありがとう。わいが我々だのトントンや。今日から3泊4日よろしくな」
「あ、草凪雪乃です。よろしくお願いします」
そう丁寧に挨拶を交わした後、雪乃の荷物を持ってくれた。
「あ、大丈夫ですよ。自分で運びます」
「ええからええから。長旅で疲れたやろ。暑いしはよ入り。春吉も」
春吉…?
雪乃は聞き逃さなかった。
サッと春翔の方を見る。
何だよ、とこちらを睨む春翔。
春吉って呼ばれてるんだ、可愛いじゃん。
フフッと茶化すように笑っていると、蹴られた。
そんなこんなでコテージの中に入る。
中はシックなデザインで広々とした空間が広がっていた。
「みんな、春吉と妹さん来てくれたで」
トントンがリビングで寛ぐ集団に声を掛けた。
誰がいるんだろう、と目を向けた瞬間、
雪乃は春翔の背中に隠れた。
なんで、何でこんなところに…!!?
ぶるぶると背後で震える妹に首を傾げる春翔。
どないしたんや?とトントンもこちらを見る。
「よぉ、雪乃ちゃん久しぶり」
「また会ったないもうとー」
「あれ、鬱先生の彼女やん」
「よっす妹」
そこにいたのは鬱先生、シャオロン、コネシマ、ロボロ。
そして…。
「え、おもちゃ来たんやけど」
ゾム。
カタカタと震える体。
春翔の後ろから出ることができない。
「どうした、チビ」
「な、何で、あいつが…!?」
怯える雪乃に、春翔は思い出す。
そういえば、ゾム…。
チラッとゾムを見ると、嬉しそうに立ち上がり目を輝かせこちらににじり寄っていた。
それをすかさず止めるロボロ。
「行くと思ったわ。大丈夫やで妹、俺が押さえとくから」
「どうしたん、ゾムとなんかあったん?」
トントンが心配して顔を覗き込む。
「い、いえ、大丈夫、です…」
何故か強がる雪乃。
いや大丈夫じゃないやろ、と真っ青な顔を見てツッコむトントン。
「なになにー?ゾムが嫌なんー?」
ソファーから体を起こしこちらを見るシャオロン。
「え、どないしたんや雪乃ちゃんゾムは共演NGなんか?」
「怖いんやて」
心配そうにソファーからこちらを覗き込んだ鬱先生に、ゾムを押さえながらロボロが答えた。
言うんじゃねぇよ…!!と心の中で泣きながら憤る雪乃。
他人に弱みを見せたくない癖は未だに治っていなかった。