料理が運ばれて来ると、実際に見る可愛らしさに、「わぁー!」と、感嘆の声が出た。
「実物も、とっても可愛いですね」
「ああ」と、チーフが短く頷く。
「なんだか食べるのが、かわいそうになるな」
スプーンを片手に、聞こえるか聞こえないかのトーンで呟いたチーフの一言に、「きゃー、きゃー」と心の中で思わず叫んで、見えないテーブルの下で小さく足をバタつかせた。
だって、チーフみたいにメガネの嵌るクール系イケメンが、オムライスから顔を覗かせた、こぐまの形をしたライスを見つめて、『食べるのがかわいそうになる』なんて、ちょっとはにかんで言うとか──。
もう、ミコ&リコよりもチーフの方が、ずっと可愛いが過ぎるっていうか……。ますますときめいて、好きになっちゃいそうで……って……。
あれ? 今、もしかして好きって思った??
どうしよう……私、矢代チーフのこと、いよいよ本気で、意識し出しちゃったかもしれない……。
心臓の高鳴りが止まらなくて、向かい合って食事をしているだけなのに、わけもなく顔が熱くなってくる。
「……えっとあの、このカレーライスなんですが、ミコのイメージカラーの水色のライスが、微妙に食欲に影響を与えていまして。とっても愛らしいんですけど。あはは」
どうにか熱を冷まして、他へ気持ちをやり過ごそうと、目先の些細な話題を思いつくまま口にした。
「ああ、そうかもな。青い色は、自然界にはあまりないから、人が本能的に食べ物として認識しにくいとも言うからな」
「へぇー、そうなんですね……」
気分を変えるつもりが、スキルの高いチーフの話に関心しきりで、よけいに惹かれてしまいそうになった。