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「敵は少数だ一気に抜けるぞ!」

「ここはユーヤと俺に任せてフレチェリカは魔力を温存しておけ」


城に突入した私達に襲い掛かってくる魔族をユーヤとゴーガンが次々と切り捨てる。ほとんどの魔族は本隊へと振り分けられたのだろう、城の内部にいる魔族の数はそんなに多くはなかった。


だから、この城で一番大きな瘴気を辿って走る私達を止められる者はいなかった。


「ここか?」

「ええ……扉の向こうから禍々しい瘴気を感じるわ」


そして、その瘴気の発生源の近くまで難なく到着できたのだ。

そこは城門の様に大きく鉄製の頑丈な両開きの扉の前だった。


「開けるぞ」


そう言ってゴーガンが扉を押し開け中に侵入すれば、そこはまるで謁見の間を思わせる大広間で、一番奥には王座に鎮座した黒い物体が存在した。


そう……

物体としか呼べない代物。


そいつがすくっと立ち上がれば、まるで大きな人に黒い布を被せたかの様な、ただただ黒い純然たる魔の塊。


「魔王!」


本能がそれを魔王だと認識した。


こんな禍々しい純然な『黒』は二つとないと思われた。

同じ色なのにユーヤの『黒』とはまるで正反対の『黒』。


それを本能で察知した私は、そのあまりに圧倒的な魔にほんの一瞬だけすくんでしまった。その恐ろしい『黒』はそれを見逃さず、突然その体内から黒い突起が伸びて私を襲う。


「きゃっ!」


体が竦んで硬直していた私はとっさに回避ができず、その黒い突起に刺し貫かれると覚悟したが、ぬっと大きな手が私の前に突き出された。


黒い突起はその手を貫いたが、私の眼前で止まった。


「ゴーガン!?」


それはゴーガンの左手だった。


「大丈夫だ。これ位じゃ死にはしない」

「このよくも!」



私はワンドを構えて炎の小魔法を連発する。さっきの攻撃から恐らく大魔法を使用する隙はないでしょう。無数の小さな火球が魔王を襲うけれど、やはりこんな小魔法ではびくともしない。


だけど……


その火球の陰からユーヤが躍り出て魔王へと斬りかかった。

ユーヤの常人の目では追えない剣筋が確かに魔王を捉えた。


「やったか?」

「いや、まだだ!」


魔王から次々と黒い槍が伸び、ユーヤは素早く飛び退いた。


「今のは完全に斬ったはずだが……」

「見て!」


斬られて裂けた部分から魔の触手が伸びて、離れた部位を縫い合わせてしまった。


「恐らく異常なまでに集積された魔が魔王の生命力を高めているのよ」

「反則だろそんなの!」

「これでは俺達が幾ら斬っても倒せない」


伸びてくる黒い触手をユーヤとゴーガンが斬り裂いていくが、それも直ぐに再生してしまう。でも、私には見えている。


「大丈夫よ。さっきユーヤが斬った部位から大量の瘴気が霧散していたわ。体内の魔も無尽蔵ってわけでもないでしょ」

「つまり、瘴気を消耗させれば勝機はあるんだな?」

「よし、ユーヤはそのまま魔王を斬れ。俺がフレチェリカを守るからお前は魔法でユーヤを援護しろ」


方針が決まると私達は素早く行動に移した。


私が魔法で隙を作り、そこにユーヤが斬っては後退を繰り返す。

鬱陶しそうに魔王が私を攻撃したがゴーガンが身を挺して防ぐ。


その攻防の中で執拗に狙われる私を庇う度にゴーガンの傷が増えていく。


「ゴーガン!?」

「まだ大丈夫だ!」

「だけど全身から血が……」


全身から血を流すゴーガンはもう満身創痍に見えた。

この全てが身を挺して私を守っている為についた傷。


「まだいける! お前は魔王の隙を作る事だけを考えろ!!」

「う、うん!」


永遠に続くかと思われる私達と魔王の戦い。

だけど着実に魔王の内にある魔は小さくなっていく。


「これで終わりよ!」


魔王の中の魔が既に枯渇状態であると分かり、私は魔法で石壁を床から次々と現出させる。


「ゴーガン、ユーヤ!」

「「分かってる」」


私の掛け声に呼応して、2人はその石壁を盾に魔王へ接近し挟み撃ちにして斬り付けた。

その傷口から瘴気が噴き出したが、2人の攻撃は一刀では止まらない。


斬って、斬って、斬って……


斬られまくっている魔王は体の至る所から瘴気を噴き出し、断末魔のような不快な音を響かせた。

そして、その内に秘めた魔が徐々に薄れて、やがて消えていったのだった……

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