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文化祭から数日後。
昼休み。
「写真、共有されたぞー!」
クラスメイトの声に、奏斗がスマホを取り出す。
「お、文化祭の写真!」
みんなで撮った写真が次々と並んでいる。
「これ面白い!」
「これ誰!?」
「俺こんな顔してたの!?」
奏斗も笑いながらスクロールしていく。
そして――
「……ん?」
一枚の写真で、指が止まった。
そこに写っていたのは、自分。
文化祭の教室で、誰かと話しながら笑っている。
「……これ、いつ撮ったんだ?」
撮影者の名前を見る。
石川 冴
「え?」
奏斗は隣を見る。
「石川。」
「ん?」
「これ。」
スマホを見せる。
冴の動きが止まった。
「……。」
「いつ撮ったの?」
「……文化祭。」
「それは分かる。」
「……。」
「俺が知らない間に撮った?」
「うん。」
「なんで?」
冴は少し困った顔をする。
「……。」
「?」
「楽しそうだったから。」
「……。」
奏斗が黙る。
「撮っておきたかった。」
「……俺を?」
「うん。」
冴は当たり前みたいに答えた。
-–
「え、何その写真!」
横から颯太が覗き込む。
「おー。」
「いい写真じゃん。」
「だろ?」
奏斗が嬉しそうにする。
すると冴が少し慌てた。
「……消してもいいよ。」
「なんで?」
「勝手に撮ったから。」
「いや、全然いい!」
奏斗はスマホに保存する。
「むしろ欲しい。」
「……。」
冴が少し目を丸くする。
「保存した?」
「した。」
「……そっか。」
その声が、少し嬉しそうだった。
-–
放課後。
「石川。」
「ん?」
「俺も一枚欲しい。」
「?」
「神崎が持ってる写真。」
「ああ。」
奏斗が写真を送る。
「はい。」
「ありがとう。」
「じゃあ俺も。」
「何?」
「石川が撮った写真、欲しい。」
「……。」
冴が少し考える。
「いいよ。」
「やった。」
二人はお互いの写真を送り合う。
そして。
奏斗のスマホには、冴が撮った自分の写真。
冴のスマホには、奏斗が撮った湊の写真。
二人だけが持っている写真になった。
-–
帰り道。
「なあ、石川。」
「ん?」
「俺、変なこと聞いていい?」
「何?」
「俺の写真、結構持ってる?」
「……。」
冴が黙る。
「え。」
「……少し。」
「少し?」
「……何枚か。」
「何枚!?」
「……数えてない。」
奏斗が笑い出す。
「めっちゃあるじゃん!」
「……。」
冴が少し恥ずかしそうにする。
「だって。」
「?」
「神崎が楽しそうにしてるの、好きだから。」
「……。」
奏斗の笑いが止まった。
「……それ。」
「何?」
「ずるい。」
「?」
「そんなこと普通に言うなよ。」
冴は首をかしげる。
「なんで?」
「……なんでもない。」
奏斗は前を向く。
頬が熱い。
-–
家に帰ってから。
奏斗は今日もらった写真を見る。
自分では気づかなかった。
こんなふうに笑っていたんだ。
そして。
その写真を撮ったのが冴だと思うと――
少しだけ嬉しい。
「……。」
奏斗は写真をお気に入りに入れた。
そしてスマホを置こうとして。
もう一度、写真を見る。
「……明日も会いたいな。」
その言葉が、自然に出てきた。
奏斗は少し驚いた。
でも。
今度は否定しなかった。
-–
一方、冴も自分のスマホを見ていた。
奏斗から送られてきた写真。
そこには、文化祭の準備中に笑っている自分が写っている。
「……。」
冴はその写真を保存する。
そして小さく呟いた。
「……これからも増えるといいな。」
写真も。
思い出も。
二人で過ごす時間も。
-–
第35話 おわり
次回・第36話「放課後、二人きり」
文化祭が終わって少し落ち着いたある日。
放課後、教室に残ったのは奏斗と冴の二人だけ。
そこで冴が突然、
「神崎に、聞きたいことがある。」
と言う。
その質問は――
「神崎は、俺といるとき……どんな気持ち?」
コメント
1件
みぅです🤍 「楽しそうだったから」「撮っておきたかった」って冴が言うところ、めっちゃグッときた……。奏斗が気づかないところで見てくれてたんだなって思うと、胸がぎゅってなるね。お互いの写真を「二人だけのもの」にする感覚、すごく尊い🥀。奏斗の「明日も会いたいな」って自然に出た言葉、ちゃんと否定しなかったのも進展だよなあ。次回の「どんな気持ち?」の問いかけ、どう答えるんだろう……続きめっちゃ気になる🤍