テラーノベル
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昨日のレコーディングを終え、今日も追われるように曲作りの大詰めを迎えていた。
レコーディングは神経を使う。ふっと息を吐き、ポケットからスマホを取り出す。
……彼女からの連絡は、あの日の夜以来ない。
連絡したい気持ちを押し込みながら、なんとなくTwitterを開く。
タイムラインに、やけに伸びている動画があった。タグには
#Mrs Green Apple #ミ セ ス #Riva の文字。
――リヴァ?
動画をタップすると、画面にはギターを抱えた彼女の姿。
ぽつぽつと話す声も、指先の動きも、一昨日の記憶そのままだった。
「それでは、聴いてください。…WaLL FloWeR」
誰もいないコントロールルームに、彼女の歌声が広がる。
胸の奥にじわりと熱がこもる。
もっと知りたい。触れたい。近づきたい――そう思った。
ドアが開き、打ち合わせを終えた若井と涼ちゃんが入ってくる。
「誰の歌聞いてんの……って、俺らの曲じゃん」
若井が俺のスマホを覗き込み、目を丸くする。
「……あれ、これリヴァちゃんじゃん。え、やば」
「知ってるの?」
「まぁ、たまにゲーム配信やっててさ。あの孤高な感じ、なんか惹かれるんだよな。最近配信してなかったけど」
涼ちゃんも「わかる」と頷く。
二人の何気ない会話が、僕の胸の奥に残った熱を、さらに強くする。
そのあとのレコーディングは、正直、身が入らなかった。
口も手も動かしているはずなのに、頭の中ではさっき見た映像と歌声がずっと反響している。
会いたい。でも――踏み込んでいいのか、わからない。
彼女はきっと、僕の知らない場所で、僕の知らない景色を見て生きてきた。
もし今の距離を間違えて近づけば、その透明な羽根を傷つけてしまうかもしれない。
――それが一番怖かった。
けれど、ここで何もせずにやり過ごせば、彼女はもっと遠くへ行ってしまう。
二度と、手の届かない場所に。
レコーディングが終わった瞬間、もう答えは出ていた。
スマホを開き、指先がためらいながらも画面をなぞる。
短く、それだけを打ち込む。
“会いたい”
送信ボタンを押した瞬間、胸の奥でドクンと心臓がひときわ大きく跳ねた。
逃げ道は、もうない。
コメント
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コメ失礼します〜! ミ夢珍しくて!私夢だいすきなんでドキドキしながら読んでます✨ みおちゃんと元貴さんの行先が気になります🫣