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岸「いってぇ~!」
風「岸くんっ大丈夫!?」
部活中。
練習中に接触により負傷することは多々あり、それを優しく手当してあげるというのは、不謹慎ながらマネージャーとしては一番憧れる仕事である。
急いでコールドスプレーを持って岸くんに駆け寄る。
岸「あ~大丈夫大丈夫!自分で保健室行ってくるわ」
ガーン…。断られた…。
廉「あ、俺もちょっと足痛いわ~」
岸くんに接触したれんれんが急に足を引きずる。
岩橋「え?廉先輩、倒れてなかったじゃん」
神宮寺「2人とも大丈夫ですか?俺、付き添いますよ」
平野「え!みんな行くの?じゃあ俺も」
海人「あ~!みんなまきちゃんに会いに行きたいんだね!」
神宮寺「こらっ!海人、余計なこと言うなっ…汗」
いわちがジロリとジンくんを睨み、ジンくんがあからさまにあたふたする。
風「まきちゃんって?」
海人「保健室の先生だよ!すーっごく美人さんなの!」
へぇ~~。
それで男子たちはみんな浮かれ足で保健室に行ったわけね…。
岩橋「手当の仕方を学ぶのもマネージャーの仕事だから!俺たちも行くよ!風ちゃん!」
風「あ、はいっ…」
岩橋「あーこれ見て!かわいー!」
風「ほんとだー!かわいー!」
平野「お前らさー、さっきから3秒に一度は立ち止まって全然進まねーじゃんか」
キャピキャピ言いながらショーウィンドウに張り付く私といわちに、平野が呆れた顔で言う。
平野「あんま寄り道ばっかしてると、先帰っちまうぞー」
そろそろ大会も近いので、部活の用品を新調しようと、隣り街まで来ていた。
珍しく街に出てきて、可愛いお店がいっぱい並んでいるので、ついつい立ち止まってしまう。
岩橋「ひどーい!荷物持ちいなくなったら、こんなかよわい2人でどうやって荷物持って帰ればいいわけ~?」
風「そ~やんなぁ~!」
岩橋「ね~っ!」
平野「お前ら、いつの間にそんな仲良くなったんだよ…」
確かにあれ以来、いわちとはとっても仲良くなって、今日も用品の決定権は本マネのいわちにあるけど、「1人じゃ決められないから」といわちから直々に付き添いのご指名を受けた。
そして、平野は私たち2人から荷物持ちとして指名された。
平野「お前、今日これ岸くんに頼めば良かったじゃんかよ」
平野が腕を組んだまま、肘で小突いてくる。
風「え…だってほら、岸くん今日足怪我してたし、そんなん頼めないやん」
もちろんその理由もあったけど、まきちゃん先生に手当されてデレデレしている岸くんの姿を見て心が折れたっていうのが本当のところ。
まきちゃん先生、本当に美人さんで、優しくて、いかにも男に好かれそう~なタイプの癒し系のお姉さんやったなぁ。
言われてみれば、海ちゃんがお腹痛いって言った時も、岸くん「俺が保健室連れてってやる」ってすぐさま申し出てたっけ。あれもまきちゃん先生が狙いだったんかぁ。
平野「だったら廉に頼めばよかっただろ?あいつなら喜んでついてきたと思うぞ?」
風「れんれんは寮に住んでないから、わざわざ荷物を学校まで持ってきてもらうの悪いやん?海ちゃんは華奢すぎて戦力にならんし、そう考えたら平野が1番適任やん!」
平野「うん、確かに…」
私の説明には何も反論できなかったらしく、今度はいわちに絡みに行く。
平野「玄樹、お前はなんでジンに頼まなかったんだよ!?」
岩橋「頼むわけないじゃん!見た!?神宮寺のさっきのあのデレデレした顔!」
みんなが保健室に行ってしまって、慌てて私といわちも追いかけたのだけど、男子たちみんなの衝撃的なほどのデレデレ顔を見ることとなってしまった。
私たちの顔を見て、ジンくんとれんれんは慌てて
「風ちゃんっ!ちゃうねん、優太が痛い痛いって騒ぐから心配でついてきただけやねんで~(;・д・)」「お、俺もみんなが心配で様子見に来ただけだぞっ、玄樹!」なんて取り繕っていたけど、完全に鼻の下が伸びていた。
れんれんはともかく、確かにジンくんのデレデレ顔見たくなかったなぁ。イメージが…。
岩橋「男ってホント単純だよね!何かと保健室入り浸ってるじゃん!廉先輩だって、いつもあんなに”風ちゃん風ちゃん”って言ってるくせに、腹立つよね!?」
風「れんれんは元々そういう人だって聞いてるから別に腹は立たないけど…」
平野「あ~ぁ廉、やらかしたな(笑)
でもさぁ、まきちゃんは美人なだけじゃなくて本当にいい先生なんだよな。相談とかもすごく親身になって聞いてくれるし」
そっか。保健室の先生に恵まれなかった私にとっては、保健室が憩の場になってるってちょっと憧れる。
でも、見た目だけじゃなくて性格美人さんでもあるんなんて、すごい強敵やなぁ。
え…?
その時、通りの向こうを岸くんが歩いていた。
小さい女の子の手を引いて。幼稚園生くらい?
声は聞こえないが、なんか二人で楽しそうに歌を歌いながらぶんぶんと繋いだ手を揺らしている。
風「あれ、岸くん…?」
平野「ほんとだ、岸くんだ。誰だあの子?」
風・いわち・平野「ただいま~」
海人「あ~お疲れ~。みんなでお買い物いいな~。俺も行きたかった~!」
神宮寺「玄樹!なんだよ、黙って買い出しなんか行って!俺に頼めばよかっただろ!?」
岩橋「ツーン!」(スタスタスタ)
神宮寺「あっ、玄樹!玄樹ィ~っ…(汗)!!」
いわちが完全にジンくんをスルーして、ジンくんは慌てて追いかけて行った。
海人「アハハ!またあの二人喧嘩してるぅ~」
廉「風ちゃ~ん、なんで俺誘ってくれへんの!?もしかして、さっきのことまだ怒ってるんかな?誤解やで、俺はまきちゃんよりも風ちゃんの方がずーっと可愛い思ってんで」
風「あれ、れんれんまた来てたん?」
廉「風ちゃん、冷たいわ~。風ちゃんに会いに来たのにぃ」
風「あれ?岸くんは?」
海人「岸くん?あぁ、なんか今日、金曜日だから実家帰るって。日曜日の夜に帰ってくるって」
廉「なんや岸くんおらんのかぁ」(←岸くん大好き)
風「実家?岸くんって実家近いの?」
海人「うん、岸くんち、実家市内だよ?」
風「え~?じゃあなんで寮入ってるん?」
海人「う~ん、なんかちょっと訳あり?なのかな?ほら、玄樹とかも実家市内だけど、特例で寮入ったじゃん?うち、けっこうそういう訳あり生も受け入れてるから」
玄樹「でも、岸先輩ってああ見えてけっこうミステリアスだよね。自分のことほとんど話さないし」(←戻ってきた)
神宮寺「確かに、家族のこととかもほとんど聞いたことないな。なっ?玄樹ぃ~?」(←まだご機嫌とってる)
廉「そうやんな、岸くんああ見えてなかなか心開かへんから」
海人「あ、でもなんか妹いるって言ってたな。妹のことが心配で、土日は基本実家に帰ってるってママが言ってた」(←身内が業務上知り得た個人情報をベラベラ話す海人)
妹!?なんだ、さっきの妹やったんかぁ~!
確かに、すっごい優しい顔してた。
岸くん、お兄ちゃんなんかぁ~。うわ~ますます萌え~♡
日曜日の夜。
みんなでライバル校・清高サッカー部の試合映像を見ていたら、岸くんが帰ってきた。
岸「たっだいま~!あれ?みんな揃って何見てんの?」
風「岸くんっ!おかえり~っ!」
やば。土日に岸くんが寮にいなくて寂しかったから、なんか久々に顔を見た気がしてついつい主人を待ちわびていた忠犬ハチ公のようになってしまった。みんなにバレてないかな…。
海人「清高のビデオだよ~!戦略会議!」
岸「おっ!じゃあ俺も見るかな!」
岸くんがどこに座ろうかとキョロキョロする。
グイッグイッ。
何かと思ったら、隣に座っていた平野が私の隣の空いているソファのスペースを顎でクイクイと指し示す。どうやら隣に岸くんを呼べと合図しているらしい。
風「えっ…ちょ、待って…」
平野「早く早く!」
風「や、でも恥ずかしいから…っ」
私と平野がギュウギュウとお互いに押し合っていると
海人「なぁ~に、二人でイチャイチャしてんのぉーー!俺も入れてぇ~~!!」
海ちゃんが間にダイブして割り込んできた。
風「きゃぁっ」
平野「おまっ、狭ぇよ!ってか重ぇ!」
海人「真ん中がいいのぉーー!!入れてぇーー(≧△≦)」
無理やり隙間に割り込んできた海ちゃんは、入りきれてなくてほぼ平野の膝の上に斜めになって座っている。
ドカッ。
海ちゃんのほうに気を取られていたら、ふいに反対側のソファが沈み込んだ。
振り向くと、当たり前のように岸くんが隣に座っていた。
岸「はぁ~、つっかれた疲れた~」
そして当たり前のようにテーブルに置いてあった麦茶を飲んでいた。
玄樹「あ、岸くん、それ風ちゃんの…」
岸「えっ!?あっ、そうだった!?あ~!でもだいじょぶだいじょぶ!俺、人の飲んだのとか全然大丈夫だから!気にしないで!」
岸くんがコップを返してくる。
神宮寺「いや、誰も岸先輩の心配してませんよ。気にするのは舞川先輩ですよ!」
岸「えっ…!?そうなの!?ごめんごめん…!え?そんな嫌?」
風「え、嫌っていうか…」
全然嫌じゃない!むしろ光栄です!!
でもこれは、か、間接キス…!?の、飲めない…!そんないきなり急展開…心の準備が…!!
でもでも、「間接キス!?」なんて意識しているのバレたらキモがられるやん。
実際、岸くんは私との間接キス、全然意識してないし。(それもちょっと悲しいけど( ˊ•̥ ̯ •̥`))
ここは全然気にしていない余裕を見せて、よし、飲むぞ…!!
ゴクリと喉が鳴る。
海人「じゃあ、俺が飲んじゃおうっと!あ!岸くんと間接キスしちゃったぁ!(っ’ヮ’c)」
隣からひょいと海ちゃんがコップを奪い取ると、ごくごくと飲んでしまった。
岸「なんだよ、間接キスって。お前は中坊か」
岸くんが海ちゃんに呆れている。
海人「はい風ちゃん、返す!」
コップを受け取り普通に1口飲んだ。海ちゃんは家族同然だから全く抵抗なく飲める。
じゃあ、やっぱ私、岸くんと間接キスってめっちゃ意識してたんやん。自分キモ…。
ってか中坊やん。
海人「あ!風ちゃん飲んだね!俺と岸くんに二股かけたことになるよ!\( ˙▿˙ )/」
岸「はぁ~、何言ってんだよお前は~」
平野「てか、いい加減どけ!」
ずっと海ちゃんを抱っこしてた平野が痺れを切らして立ち上がり、海ちゃんがコロリとソファーから転がり落ちた。
海人「何すんのーもう~!」
海ちゃんがヘラヘラと怒り、みんなが笑う。
岸「こういうバカなやりとり見てると、なんか帰ってきたって感じするわー。やっぱ落ち着くなぁここは」
岸くんも笑う。
まだまだ全然意識されてないかもしれないけど、こんな風に当たり前みたいに隣に座ってきてくれる。
間接キスも全然気にしない。(これは意識されてないってことだけど、嫌われてはいないってことだよね?)
毎日当たり前に、岸くんの笑顔がこんなに側で見られる。
毎日何気ない瞬間が、なんて幸せなんやろうと思う。
それに岸くんだけじゃなくて、みんながいる。
ここにいる誰1人が欠けてもダメ。
ここにいるみんなが、私に居場所をくれた人。
ずっと部屋に閉じこもって明るい空があることにも気づかなかった去年の夏は、1年後にこんなキラキラした夏を迎えられているなんて、想像もできなかった。
ずっとここのみんなと一緒にいたい。
この幸せがずっとずっと続けばいいと願う。
そして続くと思っていた。
このキラキラした瞬間が、近づきすぎたら見えなくなってしまう蜃気楼のように、いつかは消えてしまうことも知らずに…。
そう、例えるなら、ここにいるみんながそれぞれの道に出発する前に、たまたま同じ駅で止まって居合わせただけ。
ずっと一緒にいられるわけじゃない。
だけど、このかけがえのない日々が、本当に本当に愛しくて、こんな幸せな時が続いてくれるなら、両思いじゃなくたって、私は”その先”なんて本気で望んでいなかったのに…。
Summer Station 今すぐおいで
毎日が笑顔になれる場所があるのさ
Summer Station みんなでおいで
いつもより楽しい夏がここにあるから
かけがえのない日々をずっと忘れないように
キラキラのカガヤキ見つけに行こう
いつかこの景色も あの蜃気楼のように
ユラユラと静かに消えてくけど
King & Prince「サマー・ステーション」作詞:Komei Kobayashi 作曲:馬飼野康二
次の金曜日。
この前の買い出しで足りなかった分があったので、もう一度、隣街まで出てきていた。
すっかり仲直りしたいわちとジンくんは、買い出しが終わると「ちょっと2人で街ブラしてくから、こっからは別行動で~」とまるでカップルのようにイチャイチャしながら街に消えていった。
平野「で?なんでまた俺?もう岸くん足の怪我治っただろ?」
風「うん、今日は誘ったんだけどね、なんか用事があるからって断られちゃった…」
平野「ふーん…」
ガバッ!
風「えっ…」
突然、平野が抱きしめてきた…!
え!?何…!?
びっくりしてもがいてみたけど、すごいたくましい腕にしっかりとホールドされて身動きが取れない。
顔が完全に平野の胸に包まれていて、前が見えない。
ふがふがと暴れて、なんとか体をずらしていくと、前のショーウィンドウのガラス越しに見覚えのある人影が見えた。
風「岸くん…?」
平野「え!?わっ!」
平野が私の目線の先を振り返って、「あちゃ~。そっちに映ってたかぁ〜」と頭を抱える。
平野の手が緩んだ隙に振り返って、ガラス越しに映っていたのが本当に岸くんなのかを確かめる。
確かめないわけにはいかなかった。
だって、その隣にはかわいい女の子が腕を組んで歩いていたのだから…。
女の子って、今度は幼稚園生の女の子じゃない。
平野は先に二人に気づいたから、私に見せないようにしてくれたんや。
岸「お前、あんまひっつくなよ」
彼女「いいじゃん、照れんな優太ぁ~!」
二人は私と平野には全然気づかずに、すっごく楽しそうにイチャイチャしながら歩いて行った。
「優太」って言ってた…。
彼女…以外の何者でもないやんな…。