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センシティブ設定つけ忘れたり タイトル分かりにくいから変更したり繰り返してたけど そういうのって通知行くのか? 通知行くんだったらごめんね!!うるさかったな!!
「ねえ、暇だし王様ゲームやろうよ」
ハンジ分隊長が、そう言いながら棒が入った筒を持ってくる。
言っておくが、我々は決して暇ではない。
分隊長がそこかしこに散らばした資料を、ちゃんと中に目を通してから
全て元通りの場所に戻している最中だ。
要するに、全部この人のせいだ。
「前もやったじゃないですか」
巷で“髭ゴーグル”とか呼ばれているアーベルが、至極真っ当な不満を溢す。
こいつが言う通り、前にもこの遊びはやったことがある。
その時はまあひどいものだった。
まずハンジ分隊長によりニファがノーブラにされ、
その次にニファによりケイジがノーパンにされた。
その時点で、もうほぼ半数が下着を身につけていないという地獄絵図が描かれ
その後アーベルからの命令で、私は2人の下着を買いに行くことになった。
もうあんな苦行の極みみたいな遊びは御免だ…だがそこで諦めないのが分隊長だ。
「次は前みたいにはしないからさ」
「そうですよね分隊長。次あんなことしたらこうですからね?」
ニファが親指で首を切り裂く動作をする。
分隊長の肩が少し揺れ、乾いた笑いを発しながらこう続ける。
「そうだよ!信じてよみんな。私だって人間に殺されるのは嫌だからさ…」
「もう、今日だけですからね?」
ニファもなんやかんや言って王様ゲームがやりたいんだろう。
彼女はケイジと付き合ってるらしく、先程も言ったがケイジをノーパンにしていた。
今回彼はどんな目に遭うのだろうか…
少し目を離している隙に、ニファと分隊長は準備を始めている。
やっぱりやりたいんじゃないか。
「おーい、そこでだんまり決め込んでる副隊長殿ー。」
「一体誰が散らかした資料を片付けているんでしょうね」
「そうですよ!ほんとにもう!!」
しばらくやるやらないで一悶着あったが、ニファが実力行使に出ようとしたので
渋々参加することになった。
我々には言葉という解決方法があるのに、なぜ暴力で人を支配しようとするのだろう。
「あ、私王様」
「1番渡っちゃいけないやつに渡ったし」
ニファが嬉しそうに赤い目印がついている棒を見せる。
一体何を命令されるっていうんだ。
彼女は少し考え、こう話す。
「…全員語尾を“にゃん”にして何か一言どうぞ」
「いつも散らかしちゃってごめんにゃん」
「あー、分隊長ってば。猫のフリしても許しませんよー?」
分隊長とニファは2人でキャッキャうふふしてるが、私達にとっては由々しき事態だ。
いやノーパンとかに比べれば余裕も余裕なのだが、何しろ私たちは声が低い。
それで“にゃん”なんて言ったところで何になるというんだ。
それが萌えに繋がるということは分かる。とても分かるし
いざ他人がやってたら私だってきゃーきゃーする。
だがそれを自分でやるとなるとかなり恥ずかしい。
…隣でバカのアーベルが深呼吸を始めたが。
まさかやるつもりなのか?
ドヤ顔で親指を立ててくる。まさか必勝法を見つけたか?
この状況を打開する案が出たか?
「…わりぃがてめぇに構ってる暇はねえんだにゃん」
「待ってください、セリフがチンピラっぽすぎてにゃん聞き逃しました」
これは…真っ向から対抗していくスタイル…!
やはりこいつの非凡な発想力には目を見張るものがある。
まさかチンピラっぽいセリフで語尾の“にゃん”を掻き消すとは。
そうと決まれば後はチンピラっぽいセリフを考えるだけだ。
「…この落とし前どうつけるにゃん」
「待て待てモブリット…君もそっち方面で攻めるのか…」
「てめぇの不始末はてめぇで始末するにゃん」
「ケイジ!ちょっと待って聞き逃したって!!」
なんとか窮地を切り抜けた。
後でアーベルの仕事を変わってやらなくもない。
問題は次だ。次も良くないやつに王様が回ってしまったら…
「お、次は私だね」
「なんで分隊長が王様なんですか」
「日頃の行いってやつかな?」
分隊長は何を命令するかはもう決めていたようで、
迷うことなくこう発する。
「みんなの誰にも言ったことのない秘密とか、聞いてみたいな」
「あ、ケイジは耳フーってされるのに弱いですよ」
「ちょちょちょ待った…それお前の秘密じゃなくてオレの秘密じゃ…」
ニファが口をかなり滑らせたため、ケイジは命令免除となった。
私はかなり恥ずかしい秘密しかないため、もう頼れるのはアーベルしかいない。
ここでいいアイデアを思いついてくれれば、酒を奢ってやらなくもない。
いや奢らせてください。頼みます。
祈りが届いたのか、アーベルはまたしても何か思いついたようだ。
色々理由をつけて私を一旦別の場所に連れ出した。
「さっきの見たか?ケイジはともかくニファも命令免除されてたぞ」
「そうだね」
「…お前、オレの秘密なんかひとつバラしていいよ。出来るだけエグめの」
「……い、いいの?」
また真っ向から対抗していくスタイル…
しかも私はノーダメージでこいつがかなりダメージを負うタイプの。
エグめの秘密…そういう関係だし、色々持ってるが。
ニファと分隊長がどこからをエグめと判断するかも問題だ。
やはりそっちネタで行くしかないのか。
そっちネタで行くしかないのか?
考えを巡らせながら戦場に戻る。
2人の奇行種は待ち侘びたというような顔で、私達を出迎える。
「さて、一体どんな秘密を話してくれるのかな?」
「……」
「さあ勿体ぶらないで、早く言ってくださいよ」
悪魔だ…悪魔の末裔だ。
言っていいのか。この悪魔達にお前の秘密を売っていいのか。
いや、私は自分が助かるためなら手段は選ばない。
すまない。お前がバカなばかりに…私に助かる手段を与えてしまったようだな。
「…アーベルは…他のとこ毛深いけど…パイパン…」
「はっは、ちょっと待ってよ。なんで君も他の人の秘密バラしちゃうわけ?」
「悪魔ですかあなたは」
悪魔はどっちだ悪魔は。
アーベルは耳を塞いでいるので…ノーダメージ…なんだろうか。
とりあえずアーベルも免除ということになり、この場は免れた。
「いや強烈だね。なんでそれ話そうって思ったの?」
「自分が助かりたいだけですよ」
「やーねぇほんとサイッテー」
隣でバカがなんか言ってるが、そもそもお前が提案したんだろうが。
さて、次の王様が誰に渡るかが問題だ。
悪魔2人には渡しちゃだめだ。絶対に。1番いいのはケイジか、自分で引くことだろう。
少し危ういのはアーベルか。私単体を指定してきて、何かさせるかもしれない。
「オレですね」
「よくやったケイジ」
理想的な状況だ。ケイジはピュアだから絶対変なことはさせない。
変なことさせてきたら、私が解釈不一致で気絶してしまう。
「うーん、誰が1番瞬きせずに目開けてられるか競いましょう」
「未だかつてここまで健全な命令があったか?」
「いいや無い」
私とアーベルは潜むことなくガッツポーズを交わす。
ハンジ班という名の奇行種集団の中の一輪の花…奇行種の天使だ。
もう彼が女神ということで異論はないだろう。
「あっダメだ。目ぇしぱしぱして上手く開かないや」
「そこからですか?」
分隊長はそもそも上手く開けることが出来ず、記録は0秒。
ニファも秒で瞬きしたため、記録は1秒。
とりあえずドベになってこの悪魔たちにからかわれることは無い。
「あぁ、オレもダメだわ。」
「……」
「結構頑張るじゃねえか」
「………」
「構ってほしいにゃん」
「っふ…あ、笑った時に目閉じたわ」
最初の語尾“にゃん”で笑わせてくるのはやめてほしい。
このバカの記録は12秒、私は32秒。
ケイジは1分超えても瞬きをしなかったため、分隊長のドクターストップが入る。
次の王様は私だった。
とりあえず、どう考えてもそっち系には転ばない…
そうだな…
「早口言葉とか」
「任せてよ、なもむgyなまmwめ… 」
「分隊長、それ以上恥を晒すのはやめておいた方が…」
分隊長はもう寝させた方がいいのかもしれない。
目もまともに開かない上に、口もまともに回っていないし
ろくなことを言わないからだ。
「えっと、隣の柿はよく客食う柿だ…」
「逆だろそれ、化け物だろ客食う柿は」
「あそっか、化け物だ」
ニファも変な柿(奇行種)を爆誕させているため、寝かせた方がいい。
本当に早く寝てほしい。
ろくなことを言わないからだ。
「特許って壁内にあんの?」
「無い」
「じゃああの早口言葉はダメか…そもそも早口言葉って壁内にあんの?」
「分かれば苦労はしない」
アーベルは例の早口言葉を言おうとしたが、壁内には東京も特許もない。
踏みとどまってくれて何よりだ。
そもそも壁内に柿があるのか疑問だが。
「生麦生米生卵」
「隣の客はよく柿食う客だ」
「2人とも言えてるし。私だけだ土俵にすらまともに立ててないの」
口にローションでも入ってるみたいな滑舌を披露した分隊長が嘆く。
2回連続で安全なところに王様が回ったため、若干油断している自分がいる。
順番に回ってってるし、次はアーベルだろうなとか。
いや、こいつが安全だとは言い切れないが。
「あ、また私だ」
「何やってるんだアーベル」
「なんでオレ?」
悪魔の手に王様が回ってしまった。またニファだ。
アーベルがしっかり、順番通り引いてくれれば。
これで酒奢るうんたらの話はナシということで、問題はないだろう。
そして、この悪魔が何を命令してくるのか…
また語尾系なら、あの切り抜け方があるから問題無いが。
流石に似たような命令はしないだろう。
「えー?どうしよう思いつかない…あ、好きなタイプとか?」
助かった。悪魔が乙女になった。
こんなの適当に流すかあのバカの特徴を言えばいいだけだ。
「私は…そうだね。特定の人間を狙って不審な行動を繰り返す…」
「分隊長、それは奇行種です」
「あの、あれ、紅一点の…」
「分隊長、それは女型の巨人です」
「爆風がすごい長身ナイスガイとカチカチ鉄壁防御の彼だよ」
「分隊長、それは超大型巨人と鎧の巨人です」
もう分隊長の好みは“巨人みたいな人”でいいんじゃないかということになり、
もっと話したがる分隊長を宥める。だが、後で聞きますからと言ってしまったことがまずい。
後…この調子だと朝になるだろう。
「オレはやっぱり、可愛くて仕事出来る子が好きだな」
「オレは…リードしてくれる子ですかね」
「ちょっとそれ…モブリットとニファのこと?」
私はなんて言おうか…こいつの良いところ?
こいつに良いところなんてあっただろうか…
「…馬鹿正直でいつも前向きな人」
「バカってついてる時点でオレ確定じゃん」
「それ自分で言ってて悲しくならないんですか?」
アーベルがバカであることが確定したところで、分隊長に急かされまたくじを引く。
次はやはりケイジあたりがいいが。
ケイジあたりがいいというか、もう残された聖域がケイジだけというか…
ずっと純粋なままでいてくれと、切実に願っている。
ニファになんて穢されるな。保ってくれ正気を。
「やっとオレだ」
「げっ」
「げってなんだよ。失礼なやつだな。」
アーベルの手に握られていたのは、赤い印がついた棒。
こいつが王様…1番予想がつかない場所にいってしまった。
さて、これが吉と出るか凶と出るか…
「えっと、モブリットは…」
名指しか。これは終わった。
潔く目を閉じてその瞬間を待つ。
「モブリットは命令を拒否する権限を持つ」
「…え?」
「もう命令拒否ってもいいの」
「……いいのか?」
「いいよ」
酒でもなんでも奢る。こいつも奇行種の天使だった。
分隊長とニファから熱いブーイングの嵐が投げかけられたが、
このバカは命令を取り消すつもりはないらしい。
その後、私は変な命令は徹底的に拒否してやり過ごした。
悪魔達から「モブリットがやってくれないと楽しくない」と
不満の声が寄せられたため、今日のところは一旦お開きになった。
「助かった。一応礼くらいはしとくよ…ありがとう」
「じゃあ今度、全部お前の奢りで飲みに連れてって」
「覚えてたらね」
研究室を出ようとすると、ハンジ分隊長に肩を掴まれる。
心なしか息が荒くて、目も泳いでいる…
「私の好きなタイプの話…聞くんじゃなかったっけ…?」
「眠すぎてもう目開かないので遠慮します」
「今さっき君の目が開いてるとこ見たけど!?」
どうやら、私達の夜はまだまだ長いようだ…