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憶清天はおぞましい形相に変貌し、多数の能力を同時に使用する。

正直に言って、黄楽天とは比較にならないほど強いのではないだろうか。

明らかにやばいのがhappyの反射。

俺がhappyと戦った時は、happyが椅子に座っていることを条件に発動していた能力だったため、椅子を破壊して事なきを得たわけだが、

今回、憶清天は立っている。

少なくとも椅子は辺りに見当たらない。

つまり、happyと条件が異なると言うことだ。

さらに最悪な場合、無条件の反射能力を得ている可能性もある。

椅子に座ってなくても発動している=常時発動……というパターンだった場合、普通に勝てない。

ただ彼は第二形態。ラスボスまでいかないというゲームプレイヤーのメタい視点を持てば、勝てない敵じゃない……と信じたい。


「てっきりネームドが2つ能力を使ってきたから、能力は2つだと思ってたけど……思えばラスボスだしな」

「予想できたことではあったんでしょうかね」

「いや、ネームドの能力使ってくるとかどうやっても無理だろ」

「人生二週目とかじゃない限り無理ですね……」

「てかどうやって勝つんだよ」

「あの反射を剝がせなきゃ勝てないだろうな。攻略のヒントはあるのか?」


「そういえば、私と星斗くんでhappyと戦ったんでしたね。happyの反射能力が……その、実は条件が違うみたいでして」

「どういうことだ?」

「happyと戦った際も同じような問題に当たったんですが、その時は反射能力が『椅子に座っている時のみ発動できる』ものだったんです。でも、今回憶清天は」

「椅子に座ってない……ってことか」

「じゃあ条件が違うってことですか」

「見当もつかねぇ……」

「……おそらくですが、happyの能力であることは変わってませんし、何らかの動作に関係ある条件だとは思いますけれども」

「それを見抜けない限り、攻撃が通ることはないな」

「黄楽天と違ってゴリ押せないってことですもんね」

「まあ俺様は頭使うの苦手だし、お前らに任せるぜ」


早速放棄した奴がいるが、実際そうなる気持ちも分かる。

条件が分からん上に、happyの能力以外にも複数の能力を使ってくるとなると、また一方的な蹂躙が始まってしまう。

今回は技術面で攻撃が当てられないんじゃなく、物理的に完全に不可能。

思考放棄してしまうこともあると思う(というか俺も指揮に任せる気でいたが……)。


「ま、とにかく一番最初にすべきは……」


「あの人形共を倒すことですね」


そう指揮が言ったと同時に、俺らは一斉に戦闘態勢に移る。

人形三体も同じく戦闘態勢に移る。

俺ら五人に対し、指揮と天竺のあたりに一人、messiahと小指のあたりに一人、そして仕方ないと言えば仕方ないが俺の方に一人の配置。

当然、四分の一位体力を削ってきた俺を優先して潰すつもりらしい。


その配置を確認したら、人形は本格的に俺に襲い掛かってくる。

人形の攻撃は凄く単調なものが多かった。

殴る、蹴る、防御する……みたいな。

驚いたことに、人形自体に能力はないらしく、普通の人間と変わりない性能だった。

なので、殴り合っても勝てそうではあったが、無駄にダメージを受けるのも得策ではないと判断してビームを撃った。

撃った後に周りの人形も巻き込めばよかったな、という反省会を脳裏で行った後、俺は仲間の様子を確認した。


messiah一行は、なんとしても禁忌の能力を撃ちたいmessiahを小指が抑えつつ、簡単な魔法でなんとかしたらしい。

天竺たちも俺が見たころには人形と相手していなかった。あいつの馬鹿身体能力で倒したんだろう、多分。

しかし、この程度で人形たちは終わらなかった。


人形たちは再び立ち上がった。

そして、緑色の見慣れたエフェクトを纏い、傷を修復する。

つまり、あいつらも魔法を使えるようになったということだろう。

まあ、まさかただの人形とは思わなかったし、想定内と言えば想定内か。


「魔法使えるって、どのくらいのレベルなんかね」

「小指くんは何レベル?」

「20……?」

「100が上限?」「そうです」

「どっ……どうなんだそれ……」

「全然まだまだですね」

「でもよ、仮にあいつらが100レベルくらいのフ〇ーレンみたいな大魔法使いだったらヤバくね?」

「そしたら負けじゃないですか?」

「おい嘘だろ……」


そんな会話をしているうちに、人形の内一体が俺に向かって火と思われる魔法を放ってきた。

でも、俺のビームに比べたらマッチ一本程度の雑魚火力だ。

馬鹿かよ、炎は俺の専門分野だ、と小さく呟いた後、

偶々近くで小指を追っかけまわしてた人形をまとめてぶっ飛ばした。

小指がまるで神様でも見たかのような表情を俺に見せてきて、何か言葉を交わす雰囲気を感じた直後の事だった。


「おいなんかこの人形超強くねぇか!?」


という天竺の声に俺達は振り向く。

天竺の視線の先にある人形は、一見俺や小指と戦っていた人形と同じに見えた。

そのため、一瞬視線を逸らそうか迷ったが、その迷いはすぐに立ち消えた。


人形が魔法を放つ。しかし、その魔法の威力が問題だった。


そいつが放った魔法はおそらく雷魔法。

しかしそう判断することが難しかった。

何故かと言えば、その魔法の威力がとても高く、ついでに光や音もとても強大で何も五感に情報が入ってこなかったからだ。

それは他の奴らも同じらしく、耳や目を抑えて倒れこむやつもいた。

その音や光が終わると同時に、俺達も顔を上げる。

俺が相手してたやつらとははるかに威力がおかしい。この人形超強い、というのは本気だったようだ。

そして、人形から衝撃的な音が発せられた。


「”僕はhappy!戦うこともそれ以外もできる万能キャラだよ!みんなのリーダーになれちゃうかも!”」

「”messiahだ。確定で勝てる戦いが好きな奴は来い”」

「”meutrueでーす。messiahの強化版的な”」

「”ambitionデス。一人になることが好きな人は来てくだサイ!”」

「”tearって言います。現在追加募集枠です。募集要項は一般的に頭の良いと形容されるような女性です”」


ネームドの紹介のような音。

bloodやjealousyの名前がないのは気になる事だが、今それよりも最も気になるのはその声にある。

本来なら、happyの文章はhappyが読み上げて、messiahの文章はmessiahが読み上げているはずだが、驚くべきことに、それらの声は無機質な機械音声で統一されていた。

happyも、messiahも、それ以外のネームドも、皆等しく読み上げ機能に囚われているような機械音声。

だからと言ってネームドっぽくないかと言われたらそうでもなく、抑揚もついているし語尾の上がり方などが再現されている。

じゃあ本人を使えばいいのに、とは正直思った。それほどまでにこの音声の完成度は高い。

というか、紹介と言うよりこれは募集なのだろうか。そうなると、bloodやjealousyは募集以外で選ばれたということか。

二人の共通点と言えば上であることが真っ先に思い浮かぶが、その場合happyが募集対象なのが謎だ。

いや、bloodもjealousyも神化人か。となると、人間枠は募集によって選ばれてたのか。

しかし謎は残る。仮にこの募集音声を聞いてhappyの元の奴が応募して選ばれたとすると、なんというか……キャラが合いすぎている。

もちろんこの音声を聞いてキャラが似てるから応募したとしても、あいつは音声をまるまるコピペしたように感じる。

キャラがどうのこうのならまだいいんだが、音程とかがまるっきり一緒で、機械音声を生身の声にすり替えただけみたいな。

そんな違和感がある。

今回は珍しく、全員の思考が一致していて、違和感をまとめ終わったタイミングで共有タイムが始まった。


「どゆこと?」

「分かんないですね……ネームドの紹介なのはわかるんですけど、どうにも怖いというか。声が無機質すぎるし」

「そういえば、messiahのやつもあったけどなんか知らないのか?」

「あー……いや、普通の奴はこの音声聞いて応募するらしいんだけどさ、私……応募した記憶がなくて」

「というと、気づいたらネームドだった……ということですか」

「そう。だから音声は悪いけど知らん。でも……似すぎだな。時系列的にネームドのメンツが固まる前の音声だろ?」


唯一の情報源とも言える生きたネームドが使い物にならなくて俺達が絶望してる頃、指揮は突如脈絡を切って話し出した。


「頭の良い女性……なんだかある意味皮肉ですね」

「指揮、急にどうした?」

「ああいえ、特に何も。ただ……この音声から察するに、上側……つまりbloodとjealousyで既にネームドの役割とキャラ付けが決まっていたんでしょうね」

「まあなんとなくそんな気はするな」

「それで、おそらくですがそのキャラ付けに合っている人を選んだんでしょう……本人の技能よりも」

「でもそれだとしたら合いすぎだろ」

「あー、そっか、そうでしたね。参加者の皆様は知らないと思いますが、ネームドの応募者ってかなり多いんですよ」

「え、みんな応募するようなものなのか」

「はい。まあ……理由はちょっと言えないんですけど」

「とにかく、それほどたくさんの人が応募してたわけですし、データベース的には十分なんじゃないですかね。それに輝煌グループのことですし、人格矯正を出来る可能性も」

「えー、すげぇ」「お前の事だよ人格矯正救世主」「妙に語感いいのやめろ」

「なんだよお前ら難しい話しやがっ……て……」「天竺さん起きてくださいって!」「冗談……」「若干眠そうなのやめてください」


「一旦、あの人形をどうにかしよう」

「でも無理だろあの火力。攻撃通るか分からんけど」

「あれ喰らったら即死でしょうね」

「下手に近づいたら天国だな」

「速攻できたら問題ないんでしょうけど」

「速攻……ですか」


またしても含みを持たせた感じで指揮が口元に手を持って行った。今日のこいつミステリアス路線だ。


「頼んだぞ頭脳担当」

「……天竺さん」

「俺様から動きたくないからパスで。そもそもそれやるならお前からって話だったろ」

「で、でも……」

「やだー!やだやだやだ!!」「キャラ崩壊が凄い事に」

「……じゃあやります……か」


「なあ、さっきから一体何の話してるんだ?」

「……今に分かりますよ」


そう言うと、指揮は胸元に手を当てる。

すると、指揮の体が淡く輝き、

終いには彼女の姿は大きく変貌していた。


真っ黒い髪の毛に、対照的に見える真っ白の耳。

頭から生えた耳は、白兎と違って垂れ下がっている。

服もいくらか軽量化され、髪もショートカットでいかにも動きやすそうだ。

最後の仕上げに、腰のあたりから取り出した短刀を振りかざし、勢いよく人形に向かっていく。

状況が一切理解できていない俺達も、何故か知らんが卯人になった指揮を応援するほかなかった。


「行くよ、お姉ちゃん」


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