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「茶ひげ?」
「そうだ。聞いたことあるだろう。俺の昔の通り名だ」
「知らねえ」
「なんだとてめえ! 遊んでんじゃねえクソガキども!」
そう子供たちにすごんだ茶ひげの頬をひっぱたく。
「ガキに怒鳴んな!!」
「痛ェ……何すんだよジェイデン……」
「お前が俺のことをどう思うかは別だがな、子供に危害を加えたら容赦なくブッ飛ばすからな」
睨みつけるようにそう言うと、茶ひげが怯む。
「どうした? さっきまで固く口を閉ざしてた男がえらく上機嫌じゃねえか」
「ウオッホッ! お前らはもうすぐ殺される。ローが俺を助けに来てくれるからな。俺はお前らの世代の海賊たちが大嫌いだが、ローは別だ」
「何だ? 俺たちの世代って」
「お前たち、2年前のシャボンディにいただろ? あそこにいたルーキーに黒ひげを加えた奴らを〝最悪の世代〟って言うんだよ。一時代の終わりと始まりの狭間に生まれた戦乱の運命を背負う問題児ども……ってな」
白ひげが死んだあと、新世界へ飛び込んで海を荒らしに荒らし、大事件が起きたと思えば渦中にいるのは最悪の世代たち。
「コイツが船長をやる海賊団をバラしたのはホーキンス、そいつも最悪の世代だ」
「あいつのせいで俺は両足を失い、海賊をやれなくなった。仲間も壊滅的、命からがら逃げだしてたどり着いたのが、このパンクハザードよ。お前ら、ここが何だか知ってんのか?」
茶ひげはパンクハザードが元は緑が青々と茂る生命の宝庫だったことを語り始めた。ある日、政府No.2の科学者シーザー・クラウンが、自らが開発した毒ガス兵器を島内で発動してしまい研究所が爆発。毒ガスが立ちこめたことで生物が住めない荒野と化してしまい、立ち入り禁止区域となった。
だが茶ひげは「ベガパンクが失敗して島が爆発した」と言った。シーザーのせいだとは思っていないらしいな。今俺がその真実を明かせば色々と拗れる。
不機嫌な顔を隠すために俺は狐の面を再び付けた。
「なるほど、そんな大爆発があったのか……どうりでめちゃくちゃなわけだ」
「爆発は高熱と有害物質をまき散らし、島の命という命を奪い去った。だが、その状況で政府の奴らは実験体の囚人たちを置き去りに1人残らず逃げ出して島を完全に封鎖しちまったんだ」
そんな死の島に取り残された囚人たちは唯一形を留めていた第3研究所に立てこもり島中に立ち込める毒ガスから身を守っていた。死ななかった者たちも、神経ガスのせいで主に下半身の自由が奪われてしまい、そこから出ることもできない状態だった。とても未来に希望など抱けないような絶望的な環境だったのだ。
そこに救世主のようにして現れたのがシーザー・クラウン。もとい〝マスター〟
シーザーは自分の能力で島中のガスを無効化し、歩くことも出来なくなっていた囚人に科学力の足を与えて部下にした。茶ひげの言葉だけを聞けば、シーザーは救世主で、まるで聖母の如く慈悲深気人間だ。そこに表も裏もなければな。
俺は狐面の下で歯を食いしばる。舌打ちしたくなるのをグッと堪えて冷静に話を聞いていた。
茶ひげが上陸したのは今から2年前、まだ有毒物質が残っている場所で生きることを諦めていたそこにまたシーザーが現れたらしい。
「俺も他の囚人たちと同じように、マスターの優しさによって命を救われた。同志たちの足を奪ったベガパンクが悪魔なら、マスターは心優しき救いの神だ!」
茶ひげが涙ながらにそう言った。
「そしてさらに数か月前のことだ。2人目の救いの神、七武海の称号を得たトラファルガー・ローと、そこにいるジェイデンがこの島にやって来た。自由に歩けねえ俺たちに対してローはその能力で足をくれたんだ。生きた動物の足をな! もう二度と歩けねえと思っていた俺たちは、喜びに涙が零れた!」
「やっぱりトラ男はいい奴なんだ! 俺も助けてもらったしな。それにジェイデンの友達だ! な!」
「……あぁ」
「ベガパンクって、そんなにひどい奴なんだ?」
「研究所で見た羊人間はあいつの能力か」
「ケンタウロスも鳥女もそれで納得だ。だが待てよ、ドラゴンは?」
「あれはベガパンクが島の護衛のために作り出した人工生物だ。どんな環境にも適応できるらしい」
「そうだ。とにかくこの島で誰が偉いか分かったな? 今や誰も寄り付かねえ。このパンクハザードは我らがマスターの所有地だ! マスターは今日も人類の未来のため、研究を続けられている。その為に僅かばかり必要な実験体に、お前たちはなれるんだ。なぁ、ジェイデン?」
「……そうかもな」
「なあ、ローとジェイデンは仲間なんだろ? なんでジェイデンに助けを求めねえんだ?」
ルフィが茶ひげに向かって首を傾げる。
俺はルフィの質問に答えることなく、黙って茶ひげの次の言葉を待っていた。
「ジェイデンはローの命令しか聞かないってことは俺たち部下の中で有名だからな」
「そうなのか?」
俺はルフィの問いかけに無言で肯定する。別にそんなことはない。が、シーザーの部下にはそう思われているし、シーザーにもローに従順で忠実な男だと認識されている。
シーザーを神格化している茶ひげの言葉に感動し、フランキーとチョッパー、ブルックは涙を流しながら手を取り合っていた。
「ウオーッ! マスター!」
「なんていい奴なんだ!」
「ああ、マスターは素晴らしいお方だ」
「マスターはスーパー!」
「慈悲深い!」
「人類の希望!」
シーザーを褒め称える言葉が次々と出てくる。俺はその言葉をひとつひとつ否定してぶった切っていきたいのを我慢する。ここでキレたら話が進まないし、原作を大きく崩すことになってしまう。
「なあジェイデン、ローはいつ来る?」
「さぁ。もうすぐじゃないか?」
茶ひげに聞かれた俺は適当に答えた。