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「…………」
「ジェイデン? そわそわして、どうしたんだ?」
「もうすぐ、時間なんだ……」
「時間? トラ男が来んのか?」
「いや……」
俺は曖昧な言葉をルフィに返して、チョッパーの元に向かう。チョッパーは子供たちの汗を採取して子供たちの言っていた〝病気〟が何なのかを調べていた。子供たちは病人なんかじゃない。ただの可哀想な実験体だ。
「ジェイデン? どうした? 俺に何か用か?」
「……ごめん、止められなくて」
「え?」
チョッパーに一言謝り、俺は禁断症状を起こし始めたシンドの元へ走った。
「アンヘラ! シンドから離れろ!!」
「お兄ちゃん…? シンドが…」
アンヘラが持っていた雪玉を握り潰し、シンドは「違う」と言う。
「ウワァーッ!!」
「シンド!! 落ち着け!!」
暴れるシンドを必死に抑えつけるがシンドは俺よりもずっと大きい。モチャと同じく、6メートルはある。
「どうしたの? シンド」
「どこか痛いの?」
「みんなシンドから離れて!!」
「苦しい……」
「シンド、大丈夫だから。ゆっくり息を吸って吐け」
俺がそう言っても、シンドは苦しむだけだ。シンドが苦しみ始めたのを皮切りに、身体の大きい順に、子供たちが苦しみ始める。
「でけえ奴ら中心に倒れていくぞ!」
「どうなってんだ?」
「チョッパー、どうだったの? この子達、本当に病気だったの?」
「……違う」
「えっ?」
「シンド、今欲しいものはないか? いつもこの時間に何してる?」
「ハァ……いつも……ウウッ! 検査の時間があって、そのあと……」
「そのあと、どうするんだ!?」
「キャンディを……もらうんだ…」
「キャンディ?」
シンドは苦しみながらそう言った。
まだ様子がおかしくなっていない子たちがチョッパーに近寄る。
「美味しいんだよ。あのキャンディ、みんな大好きだよ」
「それとね、すごく面白いんだ」
「えっ?」
「シュワシュワって、煙が出てくるんだ」
「ハァ……そうだ……あれ、食べたら……ハァハァ、あれ食べたらいつも…幸せな気分になるから……」
「シンド! お菓子! お菓子あげるから!! 何がいい!? シンドが食いたいの、俺作るぞ。だから!!」
「キャンディ!!」
「ッ…」
俺は絶句して膝をつきそうになる。だめだ。俺の作ったお菓子ごときじゃ、数年間キャンディとして投与され続けた麻薬の依存を取り払うことなんてできない。
「茶ひげっていったか。お前は何を知ってるんだ?」
「うん?」
「この子たちは病気なんかじゃない」
「何言ってる、俺は外回りで研究所内のことはそう詳しかねえが、そのガキどもは難病を抱えている」
「チョッパー! 茶ひげは何も知らねえんだ。何も……この子供たちと同じくらい、何も知らねえんだ!!」
「ジェイデン……。マスターって奴は何を考えている?」
「そういうことだ? お前、マスターを疑ってんのか? 慈悲深いマスターはわざわざそいつらを預かって、彼の製薬技術で治療を施している。愛の科学者だ!」
「黙れ茶ひげ!!」
「っ!? ジェイデン? どうしたんだよ。そうだろう? その証拠に研究所を離れたガキどもが今日の治療を受けられず苦しみ始めている」
「違う!!」
チョッパーが茶ひげの言葉を大きな声で否定する。
「チョッパー、何か分かったの?」
「〝NHC10〟子供たちの体内から出てきた。微量だけど、これは――ドラッグだよ!」
「……」
「ドラッグ?」
「世界でも、決められた国の、決められた医師しか扱っちゃいけないドクトリーヌが使ってたから知ってるんだ。本来の用途、病気の治療でも、この薬を中毒に達する極量まで使うことはない。この子たちは毎日少しずつこれを体に取り込み続け、もう慢性中毒になっている」
チョッパーの説明を聞いて、俺は拳を握る。
「どうしてこんな子供に……研究所から逃がさないためか! 救いの神のマスターは、こんな子供たちをどうしようとしてるんだ!」
「お前マスターを侮辱すると――」
「茶ひげ、お願いだから黙ってくれ」
俺はそう言って茶ひげの言葉を遮った。
シンドが俺の腕を掴む。すごい力だ。それほどまでにキャンディが欲しいのだろう。
「ダメだシンド、俺がケーキを作るから。何でも作るぞ」
「キャンディ、くれないの? なんで…? ハァ、ハァハァ……」
子供たちが泣き始めたかと思えば、怒りのようなものを見せ始める。
ルフィが一度子供たちに「取ってきてやる」と言ってしまったから。
「取ってきてくれるって……言ったじゃんか……。取ってきてくれるって!!!」
シンドがルフィを殴り飛ばす。ルフィは軽々と吹っ飛んでいく。
チョッパーは子供たちを落ち着かせようと声をかけるが、効果はない。
「シンドやめて!」
「見たことないよ、こんな乱暴なシンド…」
「お前ら! 大きい子達から離れろ!!」
「なんでキャンディくれないんだよ!!」
シンドや他の子たちが大きな瓦礫を持ち上げてあちらこちらに投げる。
苦しみながらも、まだ正気だったアリーが叫ぶ。
「シンドは巨人族じゃないよ!」
「みんな、この島に来たときは全員普通の大きさだったの…」
「僕ら、大きくなる病気なんじゃないの? それ以外どこも悪くないよ?」
「普通の人間が、巨人族のように大きくなる病気なんてないよ。デカい奴は初めからデカい」
「ここにいる時間が長い子たちほど、体が大きいの……」
「じゃあ、脳下垂体のホルモンが異常高進しているのは元々じゃないんだ……この子たちは……実験されてる…」
子供たちが口々に、譫言のように「キャンディ」と言い、地団駄を踏んで暴れまわる。
ウソップが子供たちを眠らせ、強制的に子供たちを落ち着かせる。