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4話目
コーヒーがなくなりそうな頃、浮奇さんがちょっと表情を変えた。
「少し話そうか、ルカがいる間の事」
向いに座る2人は当然のように微笑んだ。
「ルカ、今使いたいものある?」
そう言われても…
「特には…」
俯いてしまう。困らせてしまうかもしれない、そんな不安が俺の本音を隠す。
そんな不安を察してか、ファルガーさんが声をかけてくれた。
「ルカ、PCは使えるか?」
「使え…ますけど」
「使ってないのが、1台あるんだ使うといい」
どうしていいか分からない、ここでなんて言えばいいか分からない。
「あの、でも…」
遠慮する俺に浮奇さんが微笑む。
「使いたい時に使ってくれればいいから」
「ありがとう…」
俯く。
嬉しかった、このままだと緩んでしまう。
だから、顔を隠した。
「呼び方も好きに呼んでくれていいし、しばらくここにいていいからね」
これまでにない程の優しい声、そして暖かい表情。
顔を上げて3人を見る。
その時の3人の表情を俺はきっと、一生忘れない。
「じゃあ、部屋まで案内するね」
浮奇さんが立ち上がった。俺も続いて立ち上がる。
「お開きだな」
そう言ってヴォックスさんも部屋へ戻っていった。
リビングを出ようとした時、ファルガーさんが俺を呼んだ。
「ルカ、後でPC持っていくからな」
「はい…!」
ファルガーさんの笑顔は優しく、明るいものだった。
昨日、同じように浮奇さんの後を歩いた廊下。
広く感じるのは変わらなかったけど、長くは感じなかった。
浮奇さんはひとつの部屋の前で足を止めた。
「ここ、使っていいからね」
促されて中に入ると、机やベッドなど必要最低限のものが置いてあった。
でも、それ以外何も置いてなかった。
何もない訳じゃない。
けど、何もなかった。
「服とか買いに行こうか」
浮奇さんがクローゼットを開けて、呟いた。
そして、そのまま部屋を出た。
「何かあったら呼んでね、後でふーちゃんも来ると思うから、大丈夫だと思うけど」
「はい、」
何か言うことがある気がして、浮奇さんを呼び止めた。
「あの…!」
浮奇さんは不思議そうな顔をしてこっちに振り向く。
「ありがとう…ございます…!」
「ルカ…」
微笑んで俺の名前を呼ぶ。それ以上何もなかったけど、ちゃんと伝えなきゃいけない事が伝わった気がして嬉しかった。
静かな部屋に1人きり。
1人だけど、不安じゃない。孤独じゃない。
久しぶりの感覚に大きく息を吸い込んだ。