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山田や原田との間にも、前よりずっと近い距離を感じるようになった。「天然のクーラー」なんてからかいながらも、2人が本気で心配してくれることが、不思議でほんのりうれしい。
その日、休み時間に何気なく職員室の前を通りかかった。
「高瀬くん、これ提出してね」
先生の声にふと足を止める。
(……高瀬?)
そちらを見ると、見慣れない先輩男子が先生と話をしていた。背が高くて落ち着いた雰囲気、たぶん転校してきたばかりの生徒だろう。
一瞬だけ、彼と目が合った――そんな気がした。
胸の奥が不思議にざわつく。
(……なんだろう、これ)
初対面のはずなのに、どこか懐かしい感覚だった。あの日感じたぬくもりのよう。
……でも、そんな偶然があるわけない。
僕はその場を離れられずにいたけれど、高瀬は再び先生へ顔を向ける。
「……っ」
移動教室の途中、廊下を歩いていると曲がり角で誰かとぶつかりそうになった。
「――っと、悪い」
低めの声。顔を上げれば、さっき職員室にいたあの転校生だった。
「……高瀬……さん?」
思わず名前を呼んでしまう。
高瀬は少しだけ驚いたように目を見開き、すぐに笑った。
「名前知ってるってことは、同じ学校か。」
「……はい。一年……下です」
僕が緊張気味に返すと、高瀬はうなずいた。
「ぶつからずに済んでよかった」
「あ、はい」
ただそれだけの会話なのに、心臓が落ち着かない。
すれ違ったあと、背中越しに声が届いた。
「……お前、ちょっと涼しいな」
「……え?」
振り返ると、高瀬は片手を挙げて、既に歩き出していた。
僕は無意識にマフラーを指でつまむ。
――どうしてだろう。
初めてのはずなのに、やっぱり懐かしい。その人からは、マフラーをくれた彼と近い空気を感じる。
期待してしまう自分がいる。そんな偶然、ありえないのに。
……高瀬。下の名前も知ってみたくなる——
個人的に納得いかなかったため修正しました🙏