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──家を出て歩き出すと、


「手を繋がないか」


と、彼が言ってきた。


「あっ、はい……」


おずおずと差し出した手が、あたたかくて大きな手の平に包まれる。


「君の着物姿は、私を不安にさせるから。こうやってしっかりと手を握っていないと」


「不安にですか?」


首を傾げた私に、彼が「ああ」と頷く。


「君が素敵すぎて、不安になるんだ。美しい姫は、周りの目を引くあまり悪者にさらわれてしまうかもしれないだろう? だからこうして手を繋いで離さずにいなければなと思って」


彼の言葉にふふっと小さく笑って、


「もしも私が悪者にさらわれそうになっても、今はもうカッコいいナイトがそばにいてくれるから、大丈夫です」


そう返すと、離さないでと言うように繋いだ彼の手をそっと握り返した……。


歩いて行ける距離にある、名の知れた大きな神社に着くと、お正月という事もあり、参道沿いにはたくさんの露店が出ていた。


「お参りの前に、少し何か食べようか?」


「そうですね。すごくいい匂いがしますし」


幾つも並んだお店を、彼と手を繋いでわくわくしながら覗いていく。


「そこの着物の似合うお二人さん、あんず飴でも食べていかないかい?」


すると、店主さんからそう声がかけられて、お店の前に足を止めて立ち止まった。


「あんず飴、食べましょうか?」


「うん、いいな」と、彼が笑って答える。


どれにしようかなと迷って、私はすももを選び、彼の方は、あんずを選んだ。


「子供の頃以来だな。あんず飴なんて」


「私もです」


頷いて返しながら、彼の洒落た和服姿とミスマッチなあんず飴にギャップ萌えを感じて、つい見惚れてしまった。


ダンディー・ダーリン「年上の彼と、甘い恋を夢見て」

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