コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
気づけば、目で追っていた。
初めてバンドに誘った時からだったのだろうか。もしかすると一目惚れと言うやつなのかもしれない。
でも確実に意識してしまうようになったのは、少し前からだった。
◇◇◇
「もときぃ〜帰りたくないよお〜〜」
その日は俺の家で3人で呑んだ後、若井はしなきゃいけないことがあるからと先に帰っちゃったっけ。探し物があるようで酔っ払っていたのに意識ははっきりしていた。
「はぁ、涼ちゃん…。最年長しっかりしてよねー?もう、じゃあ泊まる?」
次の日オフだった為、一応2人とも泊まるかなと準備をしておいたのだ。ドヤ顔でお泊まりセットを見せると、パッと君の顔が笑顔で弾ける。
なんだろう、凄く、可愛い。
「いいの!?わーい、元貴ありがと!」
と言って飛びつかれ抱きついてきた。しかも酔っているからかなりきつく。
「痛い、痛いって涼ちゃん」
「えへへ、ごめんって〜。でもいっつも元貴からハグしてくるよね?」
「こんなきつくじゃない。それに酒臭くない。」
頬が熱く、誤魔化すため矢継ぎ早に反論してしまった。顔赤いかな、バレていないといいけど。呑んでも俺は赤くならないタイプだから。なかなか酒が回っている分さっきの火照りが直らず、逃げ込むように風呂に入った。
風呂から上がると、君はリビングでもう寝ていた。これは介抱コースになったと確信したが、あまり悪い気はしなかった。
「藤澤さーん、起きて下さい」
軽く揺する。全く起きる気配がない。カーペットの上だと体バキバキになるのに。せめてソファーに移してやるかと彼の腕を俺の首に回し、介護士のように運んだ。とりあえず座らせて、腕を解こうと掴むが離れない。起きているのか?と思い涼ちゃんと呼びかけると、
「どこにも行かないで……。1番目が僕じゃなくていいから。そばにいるだけでいいから。お願い、行っちゃやだ…」
震えた声だった。頭越しで顔が見えないが、何となく相手は俺じゃないんだろうなと感じる。なのに、心臓がうるさい。折角冷たいシャワーを浴びて来たのに、またも頬に熱が集まる。
「分かった。一旦手退かしてもらっていい?」
「やだ、まって行かないで」
困ったな。これだと身動きが取れない。それに頬だけでなく身体中熱い。その後君は起きることなく、一晩中同じ体制で、寝付ける訳もなくずっとドキドキしていた。
今思い返せば、ちゃんと意識し出したのはその頃からかもしれない。
メンタルが不安定だった時期、そのぬくもりは俺には暖かすぎて。手放したくなくて、強引に涼ちゃんの気持ちを見ないふりして交際まで持ち込んでしまった。無理やりキスをした後、ひっくり返された衝撃で朦朧としていたが泣いている君の横顔がちらりと見えた。
その瞬間、腕と胸の中にあった熱が一瞬で消え去り、何をしてしまったか理解する。
君を深く傷つけてしまって、罪深い俺はもう一緒にはいられないと思った。
そう伝えたら君は物言いたげな、でも諦めたような感じで、苦しそうだったがフッてくれた。僕もごめん、と聞こえた気がした。が、俺が頷いてすぐ家の中に逃げ込んでしまったから、それは闇に葬られた。
そのまま扉にずるずるともたれかかり、暫く泣いていた。
色んな感情に押しつぶされそうになりながら、おそらく人生で1番とも言えるほど永い夜を独りで過ごした。
◇◇◇
読んで下さりありがとうございます!
回想のシーンに入りました。大森さんと涼ちゃんの関係は一瞬で切ないものですが、過ちと片ずけるには重すぎると思い、前半を使って表現しました。後半は回想と、今後の3人にスポットライトを当てようと思います。
次も読んで頂けると嬉しいです。
フォロワー様20人を超えました、本当にありがとうございます✨いつか記念作品も書いてみたいな…🤔