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授業が終わっても、ニャオハは帰ってこなかった。
雪乃は居ても立っても居られず、教室を飛び出した。
購買の近くやグラウンド、木の上や屋上、隅々まで探したが、姿はなかった。
「ニャオハ、どこ…」
私が目を離したばっかりに。
どうして抱っこしておかなかったのだろう。
…ボールに入れていれば、こんな事には。
ダメだ、諦めちゃダメ。
きっとどこかにいるはず。
春翔に言われたタイムリミットは日没。
まだ時間はある。
雪乃は授業も出ず、学校中を探し回った。
気付けば放課後になっていた。
いない…どこにも…。
探し疲れて夕陽がさす空を見上げていると、バサバサと羽ばたきの音が聞こえた。
「ワッシ?」
「ワシボン…」
雪乃の見上げた先に、あの時共に戦った片目のワシボンが現れた。
「ワッシャ?」
「ワシボン、お願い、協力してほしいの」
雪乃は藁にもすがる思いでワシボンに懇願する。
「ニャオハがいなくなったの…。
お願い、一緒にニャオハを探してくれない?」
不安そうな顔をする雪乃を見つめた後、ワシボンは何も言わず飛び上がった。
きっとワシボンは協力してくれる。
私も探さないと。
雪乃はモンスターボールを2つ取り出し、投げた。
出てきたのはエーフィとブラッキー。
「2人も協力して!」
2匹は頷く。
そして雪乃は再び走り出す。
日没はもう近い。
どれほど時間が経っただろう。
教室棟の1階廊下を走っていると、窓の外にワシボンが見えた。
「ワッシャ!ワッシャア!」
ワシボンは窓越しに上を見る。
そして上の方に飛んでいく。
雪乃は窓を開け、上を覗き込んだ。
2階のところでワシボンが窓をつつく。
「そこか!」
ありがとうワシボン!とお礼を言いながら、エーフィとブラッキーと共に走る。
階段を駆け上がり、ワシボンがつついた辺りの場所までやってきた。
「に”ゃあ!!」
ニャオハの声が聞こえる。
「ニャオハ!!」
そう名を呼んだ時、雪乃は立ち止まった。
そこにニャオハはいた。
緑の悪魔と一緒に。
なんで…。
「ニャア!!」
ニャオハが嬉しそうにこちらを見る。
そしてニャオハの首根っこを摘む緑の悪魔、ゾムもこちらに気付いた。
ニャオハがいる、あそこに。
やっと見つけたのに。
足が、動かない。
「フィ…」
隣にいたエーフィとブラッキーが、ボールに戻っていく。
自分と同じように、あの姿は2人にとってもトラウマで、恐怖の対象。
逃げなきゃ。
でも、ニャオハが。
「にゃおぉぉ!!」
ニャオハがゾムの手から逃れようと暴れる。
「あいつがお前のご主人か?」
ゾムがニヤリと笑った。
「好都合やん」
ゾッと背筋が凍る。
逃げたいけど、逃げられない。
ゾムはスッと、摘み上げたニャオハを差し出す。
「ほら、返したるからこっち来いや」
「……っ!!」
震えが止まらない。声も出ない。
どうしよう。どうしたらいい。
「にゃあ…」
ニャオハが不安そうにこちらを見ている。
早く助けてあげないと。
「はよ来んと、返されへんで?」
ほら、と首根っこを摘んだままプラプラとニャオハを揺らす。
ニャオハは威嚇しながらも、身動きが取れずにいる。
早く、早く行かなきゃ。
守るんでしょ、一生かけて。
覚悟したでしょ?
『じゃあ何でボールに入れない』