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ゆきのはな

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ゆきのはな

148 - 13.【そして蕾は夢を見る】

♥

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2023年09月01日

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ふと、春翔の声がフラッシュバックする。


ボールに…。


ここからボールを投げれば、ニャオハに当たるかもしれない。


そしたら近寄らずにニャオハを救い出せる。


雪乃は空のモンスターボールに手を掛けた。


でも、そこで手は止まる。


「おーい、いつまで待たせるんや」


ゾムが欠伸をする。


「こーへんのやったら」


そして片手でボールを投げた。

そこから出てきたのはルガルガン。


ゾムはニャオハをルガルガンに渡し、こちらに近寄る。


「こっちから行くけど」


「!!!」


近付くゾムに、恐怖が最高潮に達した時、



「ーーーワッシャァァァァ!!!」



ワシボンが開いていた窓から飛び込んできて、ゾムの周りでバサバサと羽ばたく。


それに気を取られているうちに、雪乃は逃げ出した。


息もつかず、どこまでも、どこまでも走った。


走って、走って。


ボロボロと涙を流しながら、膝から崩れ落ちた。


「どうして…っ」


どうしてこんなに、情けないの。

どうしてこんなに、弱いの。


嫌いだ。

こんな弱い自分、大嫌いだ。


トレーナー失格だ。


「ニャオハ…っ」


ニャオハだって、怖かったろうに。

1人で逃げ出して。


何が覚悟だ。

口ばっかりで。


全然守れてないじゃないか。



「何で…、こんなに弱いの…っ、嫌だ、嫌…。最低だ、ほんと、最低…」


ボロボロと流れる涙。

止まらない自分への卑屈な言葉。




「ダメだよ、そんなに自分を貶しちゃ」



ふわりと、落ち着いた声音が降ってくる。

温かい手が、俯く頭を包み込む。


「君は最低なんかじゃない。強くて真っ直ぐで、優しい女の子だよ」


「……でも、」


「僕が言うんだから間違いない」



そう言って瀬戸は、いつものように微笑んだ。



「けど、たまに繊細で、折れそうになる。そんな時は周りを見てほしい」


雪乃は顔を上げた。


「君の周りには、君のことを助けてくれる人がちゃんといるから。


もちろん僕も」


微笑む瀬戸に、思い切り抱きつく。

肩口を涙で濡らしながら、ギュッと力を込める。


「そうよ。あんた1人の世界じゃないのよ」


涙で滲んだ視線を上げると、そこには美希が立っていた。


「何1人で暴走してんの。一緒にいるって言ったでしょ」


ほんと、馬鹿なんだから。と美希は腕を組んで怒った後、手を差し伸べる。


「ほら、いつまでも泣いてないで、行くわよ」


雪乃はさらにボロボロと涙をこぼしながら、その手をとった。


あたたかい。


私はこんなにも支えられている。

こんなとこで止まっている場合じゃない。


「ありがとう」と呟いて、雪乃は涙を拭いた。

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