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大地を覆いつくす、巨大な黒い影。
空の彼方まで伸びる、不気味な塔。
そして……
天に向かって聳える無数の十字架たち。
どれもこれもが異様な姿形をしており、 それぞれの思惑を持って動いているようにみえる。
しかしそれらはみな、ある一つの意思によって動かされていた。
それは、この世界の管理者であるモノの意思だった。
だが、その目的は誰も知ることはないし、知ろうとも思わない。なぜなら、それを知れば、この世界に存在することの意味を失うことになるからだ。
世界を管理する者はただ一つ。『管理者』と呼ばれるその存在だけだった
だが、『管理者』はその役目を放棄し、自ら生み出した『悪魔』によって滅ぼされてしまったのだ。残された者たちはこの事実を知ることなく、また、新たな支配者が現れることもなかった。世界はそのままの形で時を重ねていた。……いつの間にか『管理者』に代わっていただけのことなのだが、そのことを誰も知ることはない。なぜならば、『管理者』とは人知を超えた存在であったからだ。ヒトである我々では到底理解し得ない領域に存在するものだったからだ。だから我々は『管理者』について語ることを避けてきた。そもそも我々の言葉など届かない相手だったのだ。だが、今は違う。我らの言葉を理解してくれるかもしれない者が現れたのだ。それも、ごく身近にいる。……『管理者』について知りたいだと? 君たちにとって、それはとても大事な話なのかね? なるほど。ならば聞かせよう。
あれは遥か昔のことだった。
あるところに一人の男がいた。男は、自分以外の人間が嫌いだった。人間たちはいつも争いばかり起こしていた。男はそんな愚かな生き物たちを憐れんでいた。そして同時に疎ましく思っていた。男の両親は彼が物心つく前にこの世を去っていた。親戚に引き取られたがすぐに家を追い出されてしまった。彼は自分の境遇を受け入れていた。なぜならば、自分が他の人々とは違う特別な存在であることに薄々勘付いていたからだ。彼は他人に興味がなかった。周りの人々が醜く見えた。だからと言って特に不幸ではなかったし、むしろ幸せだと感じていた