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【愛媛と広島】
彼とは、目を合わせない。それは嫌いだからではなく、必要だからだ。
僕はずっと彼に頼ってきた。その度、僕は1人で何かできるのか。ずっとそう考えていた。結局、僕は彼に頼らないと生きていけない。でも、どうしても、頼る度に罪悪感だけが積もって、押しつぶされて、また助けられる。それをただ繰り返すだけの、つまらない人生。
でも彼がいなかったら、もっとつまらなかったのだろう。僕にとって彼は、少しの休み場でもあった。顔は見ないし、話さない。でも気まずくはない。重たくもない。ただ、落ち着くんだ。
いつから一緒にいたのだろう。三桁は経っているのだろうか。俺はずっと1人だった。でも、君と海を挟んでの交易から、やっと打ち解ける味方ができた気でいたんだ。いや、できたのは事実なんだろう。ただ、少しばかり君には抱えてるものが大きすぎた。
君は俺を頼ってくれた。俺も君が必要だった。天秤のように吊るされた2人は、どちらかがいなくなってしまうと同時に、つり合うこともなくなってしまう。
行かないでくれ。俺には君しかいないんだ。もう1人は嫌だよ、助けて。俺を頼って。最後に見た顔は、生気のない。表情も変わらない。ただの人形だった。
頼るのは悪いこと?
なんて聞けたらどれだけ楽だったか。結局は頭でわかっていても体はわかってくれない。今はただその思い込みを必死に体に詰め込むしかなかった。僕はまだ彼を見られない。きっと、これだけは体だってわかっていたんだ。彼を見てしまえば、依存だと認めてしまう。駄目なんだ。僕は1人で生きていかないと。頼る相手なんていらない。じゃないと、じゃないと信用されなくなるかもしれない。頼られなくなるかもしれない。いや、違う。そうじゃない。それだけではなかった。でも、説明はできなかった。名前もわからない関係は、どう表せば解決できるのか。
解決策はない。なにもない。それでも彼は隣にいる。それは気遣いなんかじゃない。僕も逃げない。
彼は僕と同じところにいるんだ。僕を吊るして操っているポジションにはいなかった。彼は操られていない。僕も操られていない。ただ、なにもされずに吊るされ、監視されていたんだ。
ずっと、僕らは過去に囚われているだけだった。
ベランダから眺める海は、透き通っていて綺麗だった。でも俺は、この海が好きなわけではなかった。結局たどり着いてしまうのは、あの時君と話した、ひどく濁った海だった。それでも俺は、そこが一番綺麗だと思う。人間の汚い手で汚された海。でも海は消えない。なくならない。ずっとそこにあるんだ。でも、それは当たり前なのだと誰も気にしない。あるのに、ある意味は見つけてくれない。俺達もそうなのだろう。土地はあって当たり前。化身がなくなっても土地は消えない。でも土地が消えると化身も消える。その土地の化身だから。対象がなくなれば自分もなるなる。そもそも化身は人間に知られていない。もう、存在すら危ういほどだった。
君は化身として生きるのには勿体なすぎる。もっといいところに生まれて、愛されて、愛して、いい大人に育っていたのだろう。でも、人間として生まれ変わるのはごめんだ。
あんな汚い生命体には決してなりたくない。
まだ、顔を見て話せていた時。まだ、僕が彼に依存していなかった時。なにを話したっけ。
酒を飲みながら海の話、食べ物の話、詳しくは覚えていないが、楽しかった。初めて彼と飲んだ酒は、今じゃもう飲めるもんじゃない。飲んでしまえば思い出す。もう、あんなの思い出したくはない。彼は泣き上戸なのか、飲みながらわんわん泣いていたのは覚えている。僕はだんだん口悪くなった。泣きわめきながら飲む姿は、酒の影響での本心なのだろうか。結局まだ彼の本心はわからない。
ただ、どんなところにいようと、なにをしようと、お互いの顔を見ることはなかった。
見てしまえば、認めてしまう
見てしまえば、過去を見てしまう
俺が見るのは、手元や背中ばかり。自ら君の前に出ることはない。見られないとわかっていても、無理に直そうとも思わない。もうそれが当たり前なんだ。縮まらずも壊れない関係。俺はそれを認めざるを得ない。無意識にでも受け入れていた。当たり前なのだから、気にすることもない。
でもやっぱり、気にしないなんてできなくて。たまに君の前で泣いてしまう。
でも君はなにも言わない。俺を見たりもしない。触れてもこない。変な気遣いもされない。ただ近くにいる。いつも通りで、俺は元から泣いていなかったかのような。でも俺はそれが一番楽で、助かっていて。
2人とも、これだけは同じ気持ちだった。
この関係は壊れない。
それだけ
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