「はーい、緊急会議ひらきまーす!」
緊迫した雰囲気に全くもって削ぐわないその高らかな声は、
純白の短髪に金色の輪を浮かばせて、漆黒のスーツを纏う、
天界の中ではかなり異質な天使…
…天界の統治者、ミッドナイトだった。
……ガタッ
「いくらwriter様の片割れだとは言え…」
凛としつつも少し険を含んだ声色で発言したのは、最上級神の六名中四名のうちの一人、
智慧神ノエルだった。
彼女は知識で全事象を可能とし、また知れば知るほど無限に全てを支配できる、知識の神様である。
その能力が可能性に満ち溢れていることから、俗称は「無限胎神」だ。
ノエルは星空のような美しさを秘める瞳をミッドナイトに向ける。
「…少し、軽薄過ぎるのではなくて?」
「…あはは。
こ〜れはこれは、し〜つれい致しました」
態度だけは慇懃無礼にヘラヘラしている。
相変わらずクズ天使だ。
「まあまあノエルちゃん、いいじゃん!」
ミッドナイトによく似た髪型の男が、片手をひらひらさせながらニコニコとノエルに笑いかける。
この男、本会議を監督すべく重大な役職のはずなのだが…
「…ですが、カミラ様」
「ん〜?」
「貴方様は創世神代理兼補佐でしょう、
むやみに会議を掻き乱す者など…」
カミラは悪どい笑顔でこう返す。
「ミドちゃんは乱してないけどなぁ。
こんな一言に過剰に反応しちゃってるノエルちゃん、君だって理由の一つなんじゃない?
…ねっ、シエルちゃん」
「えっ、私!?あっ、え、えと」
突然振られた驚きと焦りで上ずった声で返事をした、シエルと呼ばれた神様は、断罪神だ。
シエルは全事象を「有罪」か「無罪」かで決定し、また事実を好きに創造、操作、支配、改変できる。
彼女によって有罪判決を受けた者はたちまち世界の反逆者クラスの存在として、まさに最大の苦痛を味わい続けるようになる。
しかし断罪神のくせして優柔不断な性格が玉に瑕で、よく自爆しているらしい。
適切に能力を使えば確実に最上級神トップ、否、創造神クラスまで見込めるというのに…。
「そっ、そうですね!あ、あまりその、
気にする必要は無いんじゃないですかね…」
結局曖昧な回答で流したシエルに侮蔑の視線を送りながら、この会議の最たる問題児が口を開く。
「ンなことどうでもいいんだよ!
早く真犯人ぶっ○すんだよォ!!」
「キャロル、落ち着いてください」
破壊神キャロルが椅子から腰を浮かせたところを、後ろから災禍神ミエルが落ち着いた様子で取り押さえる。
「落ち着いてください、ほら。
怒っても時間を無駄にするだけですよ」
「離しやがれ…!」
キャロルは齢数百万歳という最年少にして最上級神中では最強の神様だ。
天地万象を暴力、火力、そしてなんと言っても破壊力で支配下に置き、誰も己に近付かせない。
精神支配や創造創世、創成、事象支配でさえそのスタンダードな攻撃には敵わないことがあるので絶対に敵に回してはならないし、逆らってはならない。
しかし頭は悪い。
ミエルは災禍神という比較的「五大神」に近い物質的な親しみやすい神様の部類で、主に火水風土雷の五大属性を司る自然の神様である。
ミエルの他の神と異なるところと言えば、五大属性の派生型である「爆」「氷」「渦」「鋼」「光・影」などの他要素まで完璧に支配できるところ。隙の無い徹底ぶりだ。本人の冷静沈着な性格からも見て取れる。
そんな彼女も本気で戦闘となれば宇宙の法則や秩序が崩壊するほどの破壊力は持ち合わせているため、やはり最上級神は怒らせてはならない…。
「…御静かに」
大惨事の真っ只中、その空間は水を割ったように静まり返る。
「…申し訳ございませんでした、
少し貴女方を挑発しすぎてしまったこと、
お詫び申し上げます」
天使の瞳のラベンダー色が、
ちょっぴり困ったように弱々しく揺れる。
全員が同時に黙り込み、その儚くも芯の通った風格に圧倒される。
…そして。
誰からともなく、テーブルを囲んで再度腰を下ろしたのであった。
「最上級神様方を黙らせる気迫があるならもう少し早くしてくださいよ、この駄天使」
「…すみませんでした」
「お前、仕事増やす事しか能が無いのか!」
「すみませんでした!!」
天界案内人である真夜中には平謝りだから、
余計わけが分からない。
「ま、まあまあ落ち着いてよ、真夜ちゃん」
「…カミラ様、その呼び方やめてください」
真夜中は不貞腐れたように溜息をつき、傍らで意気消沈してしぼむ風船のように小さくなっていく天使をちらりと見やる。
「ほら、もう怒ってませんから」
「…本当ですか」
「本当です」
小さな天使は真夜中の呆れ返った返事に大満足したようで、
上機嫌に肘をつき手を組んだ。
「……それでは、」
「創造神様消滅事件、最上級神募集要項確認の二件についての意識の擦り合わせ、
及び会議を始めます」
誰が肘をついてよいと言いましたか、
と、再度罵声が飛んだのは言うまでもない。
「えー、失礼。
…先日、創造神様が忽然と姿を消し、索敵をかけてもどこにも存在しておらず、全世界において創造神様が消滅しているという線が最も濃厚…
一件目の概要はこちらです、異論はありますでしょうか?」
これには誰も声を上げない。
一気に静まり返った卓上に、ミッドナイトが視線を落とす。
「…その前に、
…正直、最上級神の皆様には期待していた
のですがね。
なぜ今回の件が起こってしまったのか、
意識の擦り合わせはまずそこからですよ」
溜息をつきながらキャロルを一瞥する。
「特に破壊神様は、一体何をしていたのですか?」
「……え、あ」
一瞬にしてキャロルの表情が怯えたように歪み、それを見たミエルがすかさずミッドナイトに向き直る。
「ですが、キャロルには天界全体の防衛に当たる責務があります。創造神様個人を御守りするような仕事はありません」
「創造神様個人を御守りできないような神様が天界全体を守れるとでも仰るのですか?」
「それとこれとは別です、天使である貴女様には分からないかと思いますが、天界には毎日のように不正アクセス者が多々侵入しているのです」
「侵入者対応と創造神様護衛、どちらに重点を置くべきかはキャロル、貴女自身が最も解っていることでしょう」
「しかし!」
「それにシステム管理は全て生身の人間であるwriter様が執っているのですよ?
ならばセキュリティ対策に不手際があるのは致し方がないことでしょう、
あなたがた最上級神の仕事は侵入されないように見張ることです」
「それはそうかも知れませんが、創造神様は最上級神より位も力も能力も格段に優れているはずでしょう。
その脅威に抗えなかった創造神様にも、脅威に気付けなかった私どもにも、懸念点は平等にあるはずです」
「ほう、つまり…
貴女は敗れた創造神様が悪かったという意識をお持ちなのですね?災禍神ミエル様」
ミエルはその指摘に青ざめて黙り込む。
矛先がキャロルに向いた。
「キャロル、事件前に創造神様に異変などは見受けられませんでしたか」
「…あ、アタシは何も…き、気付けなかった」
「…そうですか」
癖なのか、侮辱のつもりなのか、ミッドナイトがもう一度卓上に両肘をつく。
「最上級神最強が聞いて呆れますね」
「……で、でもさ!」
「…でも何か?」
思わぬ反撃にミッドナイトはキャロルの方に向き直る。
「アタシ達は確かに気付けなかったし守りきれなかった。
でも、創造神様でも敵わない相手だったのは事実じゃん!」
「その創造神様が敵わない相手に、貴女が絶対に勝てないと最初から諦めているのも事実です」
「……っ」
話は終わった。
天使は微笑んで真夜中を向く。
「…と、いう現状です」
「…ミッドナイト…、
神イビリも程々にしてくださいよ」
真夜中は呆れたように睨みつけるが、
その懸命な視線は軽薄な天使には難なくかわされてしまう。
「それでは、この件は……、カミラ」
「あいよ」
カミラはにこにこと微笑みながら、
ミッドナイトをあくまで軽薄に見やる。
対するミッドナイトも、薄く口元をほころばせながら今度はカミラに向き直る。
卓上を軽く指さして、
「…この件については全面的に最上級神の
責任ということで」
「っ!?」
「で、ですがっ」
「ミッドナイト様!」
「御慈悲を…」
「後のことは、カミラに任せますよ」
白銀色の光を乗せ、しかし恐ろしく昏い瞳を静かに開け、
慈悲深き天使は慈しむように羽をゆっくりと広げる。
神達は絶望的な顔をして怯えきっている。
カミラに何かされた事が既にあるのだろう。
刑の執行は殆ど、カミラが行っている。
「煮るなり焼くなり、殺すなり。
好きにしてください。
そういうの、カミラの趣味でしょう?」
寒々しくなるほどの悪どい笑顔で、悪魔の顔をした神は頬杖をついた。
「…しかし困りましたねぇ」
さして困っていない時の表情だがミッドナイトはそう言って顔を上げた。
「創造神様の消滅、創世神様の精神世界の長い眠り、外界の干渉の無法化、最上級神の劣化」
抑揚のない声で並べ立て、また両肘をつく。
「…最上級神の数を増やす、なんてどうでしょう?」
いたずらっ子のような表情でクスクスと笑う。
それだけ見れば本当にただの可愛げの揺らめく天使だった。
「…名案だと思います」
ノエルが発言し、真夜中もそれに頷く。
「しかし、募集をかけるのであれば要項を説明しなければ」
ミエルの指摘にミッドナイトは手を打つ。
口をぽかんと開け、
「そうでしたぁ!」
お前はチャペル様か
「え〜〜〜…事象支配能力を会得した者、事象操作能力を会得した者、【大いなる神の息吹】 のうちどれか一つを解放した者、創世能力を会得した者、魔帝を単独で7体以上撃破した者、実力が闘神以上の者、創世神または創造神に任命された者、上記の条件のいずれかを達成した者」
真夜中がだるそうに読み上げる横で剛拳(真夜中の)を食らったミッドナイトが頭を抱えている(文字通り)。
「…た、大変ですね。
真夜中、資料をだ、出しては如何です?」
「…はあ」
「これらをひとつでも持っている神様は最上級神になれますよ…っと」
「注意事項!
【天力】は、天界で言う【筋力】のようなもので、【神力】とは全く別物の原始的な力です!
お間違いなく!」
「分かってますよ、何ですか今更」
「いや、画面に向かって言っ」
「はい、では次」
「え、ちょお待ちぃや…」
冷たくあしらわれながら天使は高らかに宣言する。
「外界の皆様!!最上級神を2人、募集いたします!能力などの難しい設定はこちらで勝手ながらさせていただきますので、名前(自由)と見た目(@天使ちゃんメーカー)だけお願い致します!!」
ガツン!
「い゛た゛ッ゛」
コメント
16件
件名:気づくの遅すぎました To:ミッドナイト様 From:ゼロ
…気づくのが遅すぎた問題。
大いなる神の.....いやどんだけあんねん 天使ちゃんメーカー可愛いですよn うお。作りたい。って思ったら既に二人いましたねワハハ