夏草がざわざわと波を打っているのが暗がりの中でもわかる。
雨上がりのほんのり土の匂いを含んだ風が河原を駆け抜けた。
ひんやりとした夏草の上で僕たちは指を絡ませた。
見て
寝転がっている皐月が指を指す先に、
青白い尾を引いた彗星が現れた。
今日は1000年周期で地球に訪れるという
ミネルヴァ彗星の来訪日だ。
だんだんと彗星本体の円の大きさが大きくなってきた。
「綺麗だね」
皐月が僕の指をより強く握った
心臓の拍動がだんだんと大きくなってきた
次の瞬間皐月が僕の頬にキスをした
静寂の夜の下で、僕たちの頭の上を彗星が駆け抜けて
消えた 「ありがとう」
「わっ!」
突然のキスに驚いた僕は皐月の方を振り向いた
しかし、そこには皐月の姿はなかった。