誠二さんは帰って来てくれる
そう信じていた
それなのに
帰ってきたのは、あの人に渡していた手拭いだけだった。
何も出来なかった。
ただ手拭いと、宿る命を抱え、涙を流し声にならない叫びをあげる事しか出来なかった。
晶子:……駄目だ、こんなところで悔やんでいては
私は、誠二さんとの子を守らなければいけない。
しかし、お医者様からはお腹の子がどんどん衰弱していってることを知らされるばかりだった。
晶子:(嗚呼、お願いします……神様……どうか私からこれ以上奪わないでください……)
そして等々、出産の日が来た。
激しい痛みと苦しさに悶えながら、必死に耐えて、遂に気を失った。その瞬間、朧気ながらも元気な産声が聞こえた。
目が覚めると、私は病床に戻っていた。
晶子:(頭が痛い……私の子は?)
医者:目が覚めましたか……
晶子:先生……私の子はどうなったんですか?
医者:無事に生まれました
その時、喜びと安心と感動が混じり合い、肩の力がふっと抜けた。
晶子:(良かった……無事に生まれてきたんだ……。誠二さん、私達の子は無事に生まれましたよ……)
医者:しかし、誠に申し訳憎いのですが……
晶子:どうかしましたか?
まさか病気になってしまったのでは、私は震えながらに聞いた。
医者:いえ、体の状態は健康です。
医者:……二人とも。
晶子:……え?
晶子:先生、私は一人の子を身篭ってたのでしょう?
医者:ええ、そのはずです。しかしあなたが気を失った後、もう一人生まれてきたのです……
医者:信じがたいお話でしょうが、更に二人とも性別も未だに不明なのです。
……信じられない。どうして?一昨日まで見た時は腹の子は一人だけだった。
隣にいる子の存在に気がついた。
そこには確かに
瓜二つの双子がそこにいた。
コメント
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うわぁ…全ての始まりだ…