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「決めたよ。僕は君の恋人になる」
「口だけじゃダメだぞ! 心から私を愛せるのか?」
「全力で君だけを愛すると誓うよ」
「信じていいんだな? 裏切ったらおまえを殺して私も死ぬ!」
「絶対に裏切らない」
「気に入った!」
どこにそんな力がまだ残っていたのか、彼女は片手だけで僕を引っ張り上げて、屋上に放り投げた。途端に屋上からも校舎の中からも校庭からも歓声が上がった。みんな今まで固唾をのんで僕らの様子を見守っていたらしい。
とにかく助かった。でもまだ胸がバクバクいっているし、声を出すこともできない。僕はただ呆然とフェンスの外側の狭い場所で腰が抜けたように座り込んでいた。
すぐに先生たちが駆け寄ってきた。
「霊山寺、よくやった!」
「まだ生きたいという気持ちが彼に残っていただけです。私は何もしていません」
「どうやって説得したんだ?」
「私と交際することで死ぬことを思いとどまってくれるなら喜んで交際すると答えました」
よくこう次から次へと嘘を思いつくもんだ。呆れて何も言えずにいた僕の体を、アリの群れが大きな荷物を運ぶように先生たちがフェンスの内側に移動させた。そこには担架が用意してあって、僕は問答無用でそれに乗せられた。