次の日、バーベキューにはチームのほぼ全員が参加できるようになった。早めに仕事を切り上げられるよう、みんな全力で頑張っていた。
バーベキュー、何だかすごく待ち遠しい。
普段とても忙しいみんなだから、このメンバーで食事をするのは久しぶりだ。
朋也さんは何も言わないけれど、本当に社長は大丈夫だったのだろうか?
突然大人数で押しかけて、まだ少し不安はあるけれど……
「本宮さん。今日、すごく楽しみにしてます。ご自宅で一緒にバーベキューができるなんて最高ですね」
私の横で、菜々子先輩が朋也さんに話しかけている。
キラキラした菜々子先輩……とても綺麗だ。
「ああ……ありがとう」
「本当に、社長のお宅にお邪魔できるなんて光栄です。きっと大豪邸なんでしょうね」
「そんなに大きいわけではないから、期待しないほうがいい」
「そんな謙遜しなくてもいいじゃないですか。『文映堂』の社長のご自宅ですよ? 立派じゃないわけがないです」
「……」
「お手伝いさんとかいるんですよね?」
「……ああ、まあ」
「だったら、もっと自慢すればいいんですよ」
「自慢してどうなる? 俺が建てた家じゃないんだ」
「……本宮さんはきっとシャイなんですね」
菜々子先輩、本当に嬉しそう。
朋也さんの横に並んでいる菜々子先輩が美人過ぎて、何度も思うけれど、本当に2人とも素敵だ。
一弥先輩と菜々子先輩よりも……お似合いかも知れない。
まるで映画のヒーローとヒロインみたい。
今すぐここで映画の撮影ができそうだ。
それは、きっとラブストーリー。
一弥先輩と朋也さんで菜々子先輩を取り合う……
夏希は朋也さんを、梨花ちゃんは一弥先輩を好きな女の子役。
私は……たぶんエキストラ。
ただの通行人ぐらいの役はもらえるだろうか。
それにしても、今、朋也さんは菜々子先輩のことをどう思っているのだろう。
やっぱり……
ほら、私はまた変なことを考えている。
このネガティブな性格……本当に嫌になる。
そんなこと、今考えても仕方がないのに。
とにかく気持ちを切り替えて頑張ろう。
あともう少し準備すれば、CM撮影が始まるのだから。
私は、ネガティブモードを、無理やりポジティブモードにシフトチェンジした。
チームで手がける商品が、世の中に出る前はすごくワクワクする。
……もちろん、同時に緊張もするけれど。
売れるか売れないか、そこには天と地ほどの大きな違いがある。
だからこそ私達は、話題性のあるCMになるよう、念入りに打ち合わせを重ねて作品を作っている。
今回はシンプル4の人気も手伝って、きっと良いCMになる。
お菓子も売れる。
みんな、そう信じて頑張っている。
その思いを共有し、私達は今日も1日仕事に邁進した。
そして――
いよいよ夜になった。
待望のバーベキュー会場である朋也さんの自宅には、朋也さんが用意してくれた車でむかうことになった。
会社から自宅まで……数台の車が来てくれていた。
ここまでの配慮はなかなかできない。
私達にとっては、本当に有難いことだ。
帰りもそれぞれの家まで送ってくれるらしい。
今日は朋也さんの歓迎会なのに、こちらがずいぶん甘えてしまっている。
車が朋也さんの自宅の前に到着し、私はまず目の前に佇む立派な門に驚いた。
左右に木々が植えられ、ライトアップされている。
自動で門が開くと、とてつもなく豪華で素敵なお屋敷が目の前に現れた。
みんな思わず声をあげている。
「やっぱり大豪邸じゃない。さすがだわね」
菜々子先輩は腕組みをしながら小さな声でつぶやいた。
3階建てで、まるでクラシック調の高級ホテルのようなおもむきがある。
建物も下からライトアップされ、窓にも明かりが灯り、幻想的な雰囲気が漂っている。
とても上品で優しい光。
「なんて綺麗なの……」
思わずため息と共に言葉がこぼれた。
玄関というにはあまりにも広すぎる場所を通り、そのままらせん状になった階段を上がり、私達は屋上に案内された。
「うわぁ、夜景が見えるんだぁ。すごく遠くまで見渡せるね~」
「うちの会社から見える夜景も綺麗だけど、この夜景も最高だね」
「こんな素敵な場所、初めてだよ」
みんな口々に感想を言っている。
そこから見える広大な景色は、少し高台に立っているせいもあり、散りばめられた宝石のようにキラキラしてとても美しかった。
かなりの面接がある広い屋上にはバーベキューの用意が完璧にされていて、数人のシェフの姿もあった。まるでどこかの高級ホテルビュッフェのようで、驚きを隠せない。
こんな素敵なところで食事ができるなんて本当に夢みたいだ。
みんなも、キョロキョロしながら、この素敵な空間を眺めている。
「みなさん、ようこそ。特に何もないですが、シェフの料理を楽しんでもらえたら」
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