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神の居場所を探しながら、さっきから廊下を行ったり来たり泳いでいる。相も変わらず面と話しているが、会話は単調だ。例えば郷田が「もしかして神様って、心の中にいるんじゃないかな」と言えば、面は「私だって心の中の一面です。私はあなたの一面です」と、毎度同じことしか言わない。
そこへ「恐れ多くも、私の意見は違います」という、新たな声が混じり込んできた「神様は私達の次元にいらっしゃらない。だから、私にはあなたの姿が見えないんです」
彼もまた、郷田の一面なのだという。そこへ前出の面が「私共も神の一面、神の子であります」と繰り返す。新しい面は「恐れ多くも我が神。考えているばかりでは何も始まりません。動いてみれば、そこから見えてくるものが必ずあります」と言う。「いいえ、動いて失敗したらまた無用な作業が増えるだけです」と前の面がいう。「いえ、ここで漂っているだけではご覧の通り暗黒の世、見えるものも見えてきません」と後の面。二枚はどこまでも同じ主張を平行にぶつけ合ったまま、交わる線ひとつ見えてこない。そこで郷田は「じゃあ、お前達二つの面を合わせてみよう。じっくりと考えながら挑戦してみようか」と言うと、両面はどちらも「かしこまりました」と言う。