そこへ、また別な声がした。「それより、もっと楽しく行きましょう、楽しく」と言っている。まだ他に誰かいるのかと郷田が心の中で言うと、「います」という声が複数聴こえた。
「こんなになっちゃったら、どうせうまく行きませんよ。宇宙なんてそんなものです」
「意思あれば道あり」
「諦めましょう」
「絶対諦めちゃだめです」
「無難にいきましょう」
「クールに行きましょう」
「ただ流れてましょう」
「頼むから命だけは」
郷田は両耳を塞いでみたが、無駄だった。お前達は一体誰がだれなんだ、と郷田は心の中で声を荒らげた。すると一斉に、私です、僕です、俺です、あたしですと言ってくる。このどれもが、自分自身の一面であるらしい。
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