mtk side
あの日から、僕の世界に灰色のフィルムが貼られたようなつまらない世界に一変した。
歌詞が思いつかなくなった。
メロディーもなにも生まれなかった。
残ったのは、ただ後悔だけだった。
m(…何考えてたんだろ馬鹿かよ。)
深夜の暗いリビングでソファーに腰掛け泣いていた。
選択肢を間違えるだけでこんなにも世界が変わるのか。
それなら、やって後悔した方がマシだった。
若井に会いたい。
若井とまた話し合いたい。
若井は今なにしてるのかな。
hlt side
元貴に振られた。
でも想像はできていた。
幼馴染で、バンドメンバーで。
俺が間違っていたのか、涙が出てくる。
布団の中で必死になって泣いていた。
最近、元貴の様子がおかしい。
「歌詞が書けない」って相談してきた。
涼ちゃんもスタッフさんも皆困った。
元貴が作詞作曲を行なってきたから、今更俺らが出来ることじゃない。
r「元貴、きっと働きすぎなんだよ。一回なにも考えずに過ごしてみたら?」
m「…なんか逆にストレスになる」
h「じゃあ、お絵描きとか」
元貴の得意なことで時間を潰させる作戦。
提案したとき、元貴はしばらく俺の顔を見た。
なんかついてるのか?聞こうとした瞬間。
m「『花が咲いたから君に会う』…」
「?」
みんなぽかんとしていた。
なにを言っているだ、そう思ったら元貴は
m「『カーテンを色付ける』…」
r「元貴?」
m「歌詞…浮かんだ」
h「え?」
やっぱりわからない。
ここにいると歌詞が思い浮かぶのか?
m「若井の顔見たら、出てくる」
h「いや、なんで?」
馬鹿にしてるのか?
振ったやつに言われたくない。
なのに、少し嬉しい。
詳しくはわからないけど、嬉しい。
でも、傷は痛む。
この痛みの名前はなんなんだろう。
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なにもやる気にならない。
目の前には作り途中の楽曲。
もう飽きてしまったから捨てるしかない。
昨日からなにも食べていない。
水は多少飲んだが、もう空っぽだ。
キーンというかピーというか。
耳鳴りも酷くなってきた。
ろくに寝もしてない。
寝ようと目を瞑ると幻聴や幻覚もする。
流石にやばいなと危機感を感じた。
だから家に涼ちゃんと若井を呼んだ。
h「元貴、きたよ…」
r「ってひどい顔してるよッ…」
m「ごめん、しばらくなんも食ってないし寝てもないんだ…」
そうしたら、2人は僕のそばに寄ってきた。
r「元貴、キッチン借りていい?」
m「うん…なんもないかも」
r「そしたら買い出し行ってくるから」
h「取り敢えず、元貴は一回寝とこ」
m「あぁ…」
若井が僕をベッドへ移動させ、若井の膝の上に乗せられる。
思わず、顔を若井の胸に押し付けた。
そして、思い切り息を吸って吐いてを繰り返した。
弱々しく若井の服を掴む。
久々に寝れる気がする。
h「元貴はやりすぎなの」
説教か?と目を閉じながら思う。
h「目が離せない存在だから、元貴に夢中になっちゃったんだよ」
ごめん。
一番最初に思い浮かんだ言葉だった。
僕は若井が好き。
でも、釣り合わないと思っていた。
気の迷いなんて言ったけど、そんなの嘘に決まってる。
自分がOK出さないようにした口実だった。
この人さえ手に入れば、僕の世界は完成だった。
涼ちゃんがいて、若井もいる。
2人だけで良かったのに。
そこまでで良かったのに。
僕がそれ以上を望んだから現れた未来。
失敗しちゃったな…
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元貴が俺の腕の中で眠った。
元貴と両思いであれば、この日常は当たり前だったかな。
そっとベッドに寝かせて部屋を出る。
リビングに行くと涼ちゃんが料理をしている。
r「元貴寝たんだね」
h「うん、ぐっすり笑」
r「そっか笑」
涼ちゃんの笑顔に毎度救われる。
なんでそんなに優しいんだろう。
なんでそんなに親切なんだろう。
m「…若井、」
h「わぁッ!ビックリした…」
r「元貴、お腹減った?」
m「減ったけど…眠い…」
と言って、俺の膝に乗ってきた。
顔を胸に埋められ胸が高鳴る。
元貴はまた寝息を立て始めた。
今度はぎゅっと抱きしめられ身動きが取れなくなった。
h「涼ちゃんー…」
r「あっはは。みんなに知らせなきゃね〜」
少し遠ざかり写真を撮られる。
気恥ずかしくなり顔を晒した。
r「OK投稿完了!」
h「なんて投稿したの?」
r「『元貴生きてた。若井にべったり』って」
恥ずかしいけどみんなに知らせなきゃ。
なんかぽかぽかしてきた…眠くなったきた…。
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あれ…どれぐらい寝た…?
目を開けると目の前には若井の寝顔があった。
あれ、涼ちゃんはどこだろう。
って床で寝ちゃってるよ…。
毛布を持ってきて涼ちゃんにかける。
頭にクッションもひいて頭を撫でる。
m「ありがとう」
外は少しずつ明るくなってきていた。
涼ちゃんと若井が映るように写真を撮り、
『ありがとう』と言う文字を添えて投稿する。
キッチンに行くとトマトパスタがあった。
それを電子レンジで温め、若井と涼ちゃんを見ながら食べる。
m「おいし…」
自然と涙が出てきた。
トマトパスタの上に涙が落ちる。
ああ。幸せだな。
食べ終わった後、まだ眠る2人を見る。
若井に近づき、毛布をかけ唇にキスする。
m「 よ」
次に涼ちゃんに近づき、頬にキスする。
m「大好きだよ」
そう言って、若井の膝に頭を預け目を瞑る。
h「ばか」
m「なに、起きてたの」
h「なにが だよ…振ったくせに」
m「…そう言わなきゃ、僕の世界がぐちゃぐちゃになるから」
h「どう言うこと、?」
m「ううん。なんでも。」
m「若井、愛してるよ」
end…
コメント
3件
愛してる…😇ここにも文才が✨