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人類が砂漠の中に進出して数世紀――
都市に住む者と砂漠出身者の争いは絶えず、お互いの陣営が所有する人型ロボットによる戦争が海底の中で激化していた。
そして力関係が拮抗する中、地上陣営によってもたらされた新機体の出現は長い闘いに終止符を打つ可能性を見出すのである。
「すっごいわ!」
砂漠を漂う無数のロボットだった物達はたった一機によってガラクタへと姿を変えていく。
搭載されているブーメラン型エネルギー装置がキラキラと輝いている。
やはり量産型とはわけが違う。
「やっぱり主人公機はかっこええな」
ずんぐりむっくりでくすんだ土色ボディの量産型とは全く異なる。
スラっとして光沢ピカピカボディは主人公機の特権だ。
量産型ロボットR44560号機はうっとりとしながら呑気にそんな事を考えていた。
すぐ隣で同じ型の仲間が次々と散っていく様子もスローモーションのように流れていく。
「ええな。主人公機に倒してもらえて…」
量産型ロボットR44560号機は大きなため息をついた。
自分だってできれば、主人公機に鮮やかに真っ二つにされて派手に爆発したかった。
だが、用意されているのは主人公機の登場に触発されて同陣営の名もなきロボットに殴り倒されるというお粗末な展開だ。
まあ、どっちにしても粉々にされるんだけど。でも、なんか複雑…。
「こうなったら間近で主人公機を眺めるぐらいの幸せは許されるやんな」
いつものように粉々になるまでの短い時間を楽しもうと思っていた。
だが突如、砂漠の果てから猛スピードで飛んでくる謎の物体に意識が向いた。
「なんや?」
謎の物体は未だ出番待ちの仲間の量産型機に直撃し、大きな煙を立てた。
大破した仲間の成れの果てから煙が上がる。その中にまとわりつくように赤い色を放ったライト…いや、目玉がキョロキョロと右へ左へと動き回る。
「宇宙生物?」
青い巨大ネズミのようなモンスターが姿を現した。おかしな話だ。この世界の創造主はシリアス系リアル人間模様をうりにして作った物語だと認識している。
「こんなSF満載のモンスターとのバトルは想定されてへんやろ!」
ガルルッ!
モンスターの大きな口が雄たけびを上げる。量産型の自分では簡単に飛ばされそうだ。
“ウイ~ン”
すぐそばでモーター音が鳴り響く。ハッとして振り返れば主人公機が立っていた。
まさか、想定外のモンスターに戦いを挑もうというのか?
「やっぱり主人公機はちゃう!」
まるで恋する乙女のようにウットリとしながらそのしなやかなキラキラボディを眺めていた。そうよ。主人公機の必殺ブーメランエネルギーの力を見せつけてあげて!
ガブっ!
「えっ!」
量産型ロボットR44560号機は主人公機の勝利を確信していた。だが、目の前にはモンスターの巨大な口の中へと消えていく主人公機。しかも、変な音までする。まるで食べられているような…。
「ウソや~ん。主人公機は超特殊合金製やのに!」
ガルッ!
モンスターのルビーのような輝きを持つ瞳と合わさる。
「えっ!まさかこっちに来るん?」
勘弁してよ。主人公機に倒される夢が叶うどころか、謎モンスターに喰われる最後とか嫌だ!これなら名もなきロボットに殴られる方がまだええ。
ああ、人生って上手くいかへんな。
量産型ロボットR44560号機の意識はここで途絶えたのであった。