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あ、なんか近いな。

21 - 第21話 一緒に帰んの、久しぶりやな。

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2025年09月30日

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「あ、なんか近いな。」


第21話:『一緒に帰んの、久しぶりやな。』


コンビニを出た帰り道。


夕暮れの光が街をオレンジ色に染めてた。


並んで歩くのは、どれぐらいぶりやろ。


数週間後?いや、たったそれだけのはずやのに、

なんか、ずっと前のことみたいやった。


樹が手に持ったアイスの袋をちらりと見て、

俺は小さく笑う。


「まだ、その味好きなんやな。」


「そらそうよ。俺、チョコミント派やもん。」


「変わらんなぁ。」


いつもみたいな会話。


けど、心の奥は少し震えてた。


(……こんな風に話せるの、久しぶりや。)


沈黙が流れても、

不思議と嫌じゃなかった。


足音と、蝉の声。


ふたりの間にある空気が、少しずつ柔らかくなる。


「なぁ、光輝。」


樹がふいに呼ぶ声に、胸が跳ねた。


「…ん?」


「最近どんな感じ?」


「んー、まあまあ。」


ほんとは、”寂しかった”って言いたかった。


でも、口に出したら、もう戻られへん気がして。


「そっちは?」


「俺か?……なんや、やっぱちょっと変やったで。光輝おらんと。」


その言葉が、心に刺さる。


笑いそうになったのに、笑えへんかった。


「……ごめんな。」


「え?」


「いや……なんか、急に距離取ってもうて。

別に、樹が悪いとかちゃうねん。」


自分でも、何を言いたいのか分からん。


けど、少しでも本音を混ぜたかった。


樹は何も言わずに、ただうなずいた。


その顔が、やけに優しかった。


(……あかんな。)


こんな顔されたら、また好きになってまう。


駅の前に着いたころには、空が群青に染まってた。


街灯が灯って、ふたりの影が並ぶ。


「ここまでやな。」


「うん。」


別れ際、俺はふっと笑う。


「……一緒に帰んの、久しぶりやな。 」

「せやな。」

樹の声が、少しだけ嬉しそうに響いた。

その声に、俺の心がまた少し、近づいた気がした。

「この距離、もう一回、戻せるんかな。」

胸の中で呟いた言葉は、

夜風に溶けていった。

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